2012/11/30

「右翼」の卓見


29年ぶりの師走選挙……どこを向いてもいずれ変わらぬ「保守」ばかりで、投票意欲すら失いかけていたが、嘉田知事による「日本未来の党」結成で多少色合い的に変化がついたかも?と、それなりに興味は湧いてきた。でも個人的には「この党に!」という決定打は未だなし。まあ、間違っても「国防軍」などと、お坊ちゃま面で強弁するような人(党)に入れることはないけど。

さて、そんな寂しい?選挙戦が始まる前、先週木曜日(22日)の朝刊に、右翼団体「一水会」の顧問でありながら「右翼というのは社会の少数派として存在するから意味があるのであって、全体がそうなってしまうのはまずい。国家が思想を持つとロクなことにならないんですよ。必ず押し付けが始まりますから」と、安倍晋三の自民党、石原慎太郎、橋下徹の新党が勢いづいている日本の現状を憂える「鈴木邦男」のインタビュー記事が載っていた。

鈴木邦男と言えば、左翼運動が華やかりし頃(6070年代)、「行動右翼」と呼ばれる過激な活動で名を馳せたばかりでなく、元赤軍派議長・塩見孝也やアナキストのルポライター・竹中労(故人)とも思想的立場を超えて交流していた個性的な論客。私もその名前だけはメディアを通じてよく知っている。

その鈴木氏の口から「いま右翼的な主張をしている人は、天敵がいなくなった動物みたいなものです。威張るし増殖するし。このままでは生態系が破壊されてしまうのではないかと心配です」「僕は日の丸も君が代も大事だと思っています。だからこそ、やたらに振ったりヘタに歌ったりしたくない。難しい歌だから、合唱すると絶対に合わないんです。それは君が代に失礼だと思うから、口だけ開けて歌わないこともよくあります。大阪府の教員だったら処分されているかもしれません」「自民と民主もほとんど違いがない。だったら政党なんていらないんじゃないでしょうか。小学校のクラスのようなものにとどめておいて、党議拘束をやめ、政策判断は個々の議員に委ねてしまった方がいい。もっと個人単位で政治をやるべきだし、国民も政党ではなく人を選ぶべきだと思います」

という言葉が発せられるのだから、現在の政治状況の危うさが分かるというもの。彼が言うところの“いい敵”、かつてあれだけ日本に溢れていた「左翼の論客&活動家」は、一体何処へ消えてしまったのか?と、鈴木氏ならずとも不毛な党首討論を聞きながら首を傾げたくなる。

 で、こんな質問に対する答えが「なるほど」と唸るもの。

 ――左翼はどうしてこんなにしぼんでしまったのでしょうか。

「ソ連の崩壊とかいろいろあるでしょうが、突き詰めると、人間への期待値が高すぎるんじゃないでしょうか。連合赤軍が好例です。思想的に100%にならないと認めない。殺しちゃおうなんて、右翼だったらありえませんよ。もったいないじゃないですか。どうせ人間なんて大したことないんだから100%にしようなんて思わずに、10%でも5%でも使えるところで使えばいいんです。期待値が低いから右翼はあたたかい。それで人が集まってくる。まあ10%の人間ばかり集まっても……という問題は別にありますが」

私自身は過去も現在も「左翼」だとは思っていないが、「左寄り」の時代に青春を送った一人として、至極簡単な言葉で難問が解かれた気分。確かに、連合赤軍だけでなく、昔の新左翼の党派や活動家には鈴木氏が指摘するような面があったと思う。
理論・討論で勝るものが“革命的”、より過激な行動を提唱するものが“先駆的”、そして自分の存在を“左翼的無双”にするための「自己否定」「総括」など……「労働者・人民」の生活実態を知らず、「革命」のイメージも掴めず、思想的“高偏差値”を求めて人も己も否定しあう世界、そんな所に大らかさも温かさも生まれるわけがない。自然に衰退していくのも道理。

 さらに鈴木氏は、安倍自民党や維新が主張する「憲法改正」についてこう語る。
 
「憲法という大きなものに責任を転嫁して、山積している現実の課題をなかなか片づけられないことに国民の目がいかないようにしている感じがします。これでは、尖閣や竹島の問題を、国内政治に対する不満のはけ口として利用した中国や韓国を笑えませんよね」
「今の雰囲気に乗じて(憲法を)変えてしまうと、アメリカの戦争に全部協力して自衛隊がどこにでも出て行っちゃうような憲法になりかねません。憲法は本来、政治家を縛るためのものなのに、政治家が国民を縛る憲法になってしまう危険もある。自由のない自主憲法よりは、自由のある占領憲法の方がまだいいし、アメリカから押し付けられた憲法を変えようと頑張った結果、よりアメリカに従属するなんて笑えない冗談です」

う~ん、右・左に関わらず、ナットクの卓見。この人は本当に「右翼」なのだろうか?と、新たな疑問が湧いてくるが、まあ、そんな詮索はさておき、鈴木氏の発言に敬意を表して、“政党より人”を選ぶ選挙にしたいと思う。(基本、それも難しいことですが)

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