2012/11/19

タイトル以上に、深い余韻。


急に寒くなったせいか、鍋が恋しくなってきた……共に久しく鍋を囲んでいない“思秋期”の友たちは皆、元気だろうか。

さて、先週の月曜(12日)に新宿武蔵野館で観たイギリス映画『思秋期』。

原題は『TYRANNOSAUR』、日本語に訳すと『ティラノサウルス』……映画を観れば、ガジェットとして合点が行くのだが、流石にそのタイトルでは、パニック映画?と誤解されそうで客足に響く(特に中高年の)。で、中年期の諦念的な感情をイメージさせる≪思秋期≫となったと思うが、これもどうだろう。確かに人生の折り返し地点に立つ男女の揺れる心を描いている作品だが、包括的過ぎてかなりダーク&ヘビーな内容とのイメージ落差に驚かされるのでは?

 と、昔流行った岩崎宏美の同名曲の「はらはら涙あふれる、わたし18……」という歌詞の一節を思い出しながら(思秋期って、幾つよ?)、矢鱈にタイトルが気になった映画ではあったが、作品自体はなかなかのもの。

 仕事も家族も失くし、行き場のない焦燥感に駆られ酒を呷り、その度に理由もなく湧き出る怒りを抑えきれず暴力を振い、周囲との孤立を深めていく中年男ジョセフ。そして、ふとしたきっかけで彼と出会い、その荒んだ魂を鎮めようと自分が抱える心の闇を隠して優しく慰める中流階級の女性ハンナ……異なる世界で生きる二人が、互いに癒し支えあいながらも、抗いきれず辿る運命の痛々しさ。その悲劇的な展開を二人の秀逸な演技と見事な心情表出で描き切った作品。静かに癒され、じんわりと解放感に包まれるラスト、そして音楽センスもグッド。心に沁みるブルースを聴いた後のような熱くほろ苦い余韻が残った。

 ところで最近、映画の中の男ほどではないが、些細な事でキレる中高年(男女)の姿を街や電車の中で見かけることが度々ある。その時は、何故そんなに苛立っているのか自分でも説明つかないのだろうなあ……と、少し痛く哀れな気持ちになるが、他人事ではない。私とて寄る年波の寂しさはあるし、仕事も金もなく、友も家族も猫も(ん?)いなければ、心の空洞を埋める術なく日常的にキレまくっている気がする(もともと血の気は多いし)。やはり、幾つになっても打ち込めるモノが欲しいし、誰でも一人は辛いのだ。

 とは言え、男女を問わずキレそうな人には近づきたくないし、「ハンナ」のようにキレてる人を優しく慰めることもできない。ただ、自分の態度や言動に気をつけて“キレる”を防ぐことはできる。特に映画館や電車内でのマナーに関して注意する時などは、つとめて穏やかに丁寧に声をかけたいと思う……少し話が脱線してしまったが、忘年会シーズンを間近に控え、酒の入る日も多くなる時期、ご同輩の皆様も、ご注意あれ。

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