2023/04/20

最近の色々②


◎東京新聞「本音のコラム」

軽いうつ状態とでも言おうか、春先は頭の調子がイマイチ上がらず、新聞に目を通すことすら億劫な日々が続いていたが(「どうせ読んでも腹の立つことばかりだし…」と言い訳しつつ)、そんな中でも「本音のコラム」だけは欠かさず読んでいた。

替わりの執筆陣は、三木義一(青山学院大名誉教授)、師岡カリーマ(アナウンサー、文筆家)、前川喜平(元文部・文科官僚、現代教育行政研究会代表)、宮子あずさ(看護師、随筆家)、鎌田慧(ルポライター)、斎藤美奈子(文芸評論家)、北丸雄二(ジャーナリスト)の7名。いずれも見識深い錚々たる執筆陣だが、個人的な“必読モノ”は斎藤美奈子さん。

329日のコラムでは、「火に油」式外交と題して、こんなことを書いていた。

《ウクライナ訪問の土産に広島のしゃもじ!? 聞いたときにはエープリルフールの悪い冗談かと思った。まだ3月なのに。

岸田首相がウクライナを訪問すること自体、微妙といえば微妙である。日本はNATOの一員ではない。であればこそ、中立的な立場で和平のために果たすべき役割があったのではないか。

しかし首相は「私も心はNATOの仲間」といわんばかりにウクライナを電撃訪問した。しかも必勝しゃもじ持参でだ。

このしゃもじは日露戦争時の必勝祈願がルーツという。案の定、ロシアの国営タス通信は不快感を示した。火に油を注いだようなものである。

岸田首相は火に油を注ぐのが得意である。

二月末に帰国した中国の孔鉉佑前駐日大使から首相への離任あいさつの申請を日本政府は断ったという。熱が出たそうだ。

あいさつを拒否するということは「オメエなんかに用はないよ」といっているのと同じである。日中関係がいかに複雑だったとしても、大使は大使で日中友好のために心を尽くしたはずである。非礼にもほどがある。

5月にはG7広島サミットが控えている。首相はやる気満々だが、すでに嫌な予感しかない。油のボトルを手にした首相の姿が目に浮かぶ。またもや火に油を注ぐのではないか。いま必要なのは油ではなく水。紛争を鎮める消火活動のはずなのに。》

この人のコラムを読むたびに新たな「同志」を得た気分に……というわけで、産経・読売は言わずもがな、全国紙が軒並みジャーナリズム精神を失っている今、関東の最後の砦「東京新聞」、とりわけ「本音のコラム」の購読をオススメします。

◎愚息の仕事

スタイリストとして独立して早6年(?)、着実に腕を上げているようで、先日、彼の連れ合いのAYUKOさんが送ってくれた雑誌「POPEYE(ポパイ)」4月号の特集ページ(全14頁)及び「ルイ・ヴィトン×草間彌生」(全18頁)のスタイリングを担当。「凄いじゃん!」「カッコいいね!」と、親の目(欲目?)の保養となる“イイ仕事”を見せてくれた。




2023/04/19

最近の色々①


◎映画

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』34日、Tジョイ大泉)

《カンフーとマルチバースの要素を掛け合わせ、生活に追われるごく普通の中年女性が、マルチバースを行き来し、カンフーマスターとなって世界を救うことになる姿を描いた異色のアクションアドベンチャー……》なのだが、映画を観る前にまず、「マルチバースって、何?」という疑問が……で、調べてみたところ「マルチバース」は、「マルチ(複数)」と「ユニハース(宇宙、世界)」を合成した造語(日本語では「並行宇宙」or「多元宇宙」と訳されている)で、「現実と枝分かれした世界が、どこかにあるはず」という物理的・数学的な仮説に基づいた概念のようだ。(言い換えると「どこかに違う世界があり、そこで生きる別の自分がいる」「現在の自分とは異なる他の人生を選択した自分がいる」という感じ…)。

まあ、そういう概念とカンフーアクションが合体して生まれた、かなりややこしいコメディ映画なので、多少の予備知識と想像力が必要なわけで、それなくして楽しもうとしても、何の事やらさっぱり分からず、笑えず、一人スクリーンから取り残され「何なのこの映画!?お金と時間を返してほしい!」と後悔するのがオチ(私のツレも含め、けっこうそういう人が多かったようだ)。しかし、「マルチバース」の何たるかを朧げにでも頭に入れ、多少の想像力を働かせてスクリーンと向き合えば、このビッグバン級に奇想天外で、笑いあり涙あり、ふか~い人間愛・家族愛に満ちた映像世界を存分に楽しむことができるはず。

私的には、目の前の絶望的な現実に押しつぶされそうな人々、フィジカルな暴力も言葉の暴力もない平和な世界と偏見や差別のない社会を夢想する人々、そして映画を愛する全ての人に捧げられた、オスカーにふさわしい見事な一本!に思えた。(主人公「エブリン」を演じたのは、この作品でアカデミー主演女優賞(アジア系初)を獲得した世界的カンフースター「ミシェル・ヨー」……今年、還暦を迎えた彼女の見事なアクションにも感服)


『ロストケア』45日、TOHOシネマズ池袋)

医療、介護、貧困問題、自己責任(という名の暴力)等……ここ10年で大きく変化した日本の“光の当たらない場所”(及び政治不信、人心の荒廃等)を鋭く予見し、露呈させた必見の社会派サスペンス。(個人的に、今年観た映画の中でのベストワン。来年の日本アカデミー賞決定!では?)

65歳以上の高齢者が人口の3割を占めるこの国で老いを迎えることの恐怖(迫真の演技で認知症の“父”を演じる柄本明の姿は、老い先の自分を見るようでとても他人事とは思えず)……観終わってからも、心の振動が止まらないほど凄まじい映画だった。(松山ケンイチ、長澤まさみ、柄本明、坂井真紀など、渾身の演技を見せてくれた素晴らしい俳優陣に大感謝&大拍手。エンディングで流れる森山直太朗の楽曲「さもありなん」も心に沁みた)