2012/11/24

書きそびれた映画たち②


昨夜(9時~)、J:COMで映画『ショーシャンクの空に』(監督フランク・ダラボン/1994年製作)をやっていた。『ゴッド・ファーザー』や『仁義なき戦い』同様、何度もテレビやDVDで観直している大好きな作品だが、またもや飽きずに2時間半。ティム・ロビンスとモーガン・フリーマンの演技に目を凝らしながら、どっぷり浸り珠玉のラストで胸がジーン……「最後の晩餐」ならぬ「最後のシネマ」があるのなら、この映画かなあ、と改めて思った。

さて、本題。

●『かぞくのくに』(監督ヤン・ヨンヒ)

ロンドンオリンピックで日本中が盛り上がっている最中、日夜テレビから流れる「感動をありがとう」「勇気を貰いました」等の言葉の過剰な放列に食傷気味になり、異質の感動を求めて観に行った映画。
在日コリアン2世の監督による“家族の実話”に基づいたフィクションということでテーマも現在的だし、主演の二人も魅力的(安藤サクラと井浦新)……ということで期待が膨らみ、勝手に感動のハードルを上げたせいで、正直、観終った後は「それほどでも」と思ったが、南北分断の悲劇と国家の非情さがひしひしと伝わる佳作であることは間違いない。特に1959年から始まった“帰国事業”により、16歳で家族と別れて北朝鮮に渡った長男ソンホ役の井浦新の演技が秀逸。病気療養のため25年ぶりに帰った日本での仲間との再会の席、そして再び北朝鮮に戻る途上の車中で口ずさむ「白いブランコ」の旋律が、彼の言い知れぬ悲しみとともに深く胸に残った。


●『ライク・サムワン・イン・ラブ』(監督アッバス・キアロスタミ)

イランの巨匠キアロスタミが、日本の俳優を使い全編日本で撮影・製作した映画。だが、キアロスタミ自身が「私の映画は始まりがなく、終わりもない」と語ったように、途切れなく続く人生というドラマの一部分を描いたこの作品は、唐突に始まり突然終わる微妙に厄介なもの……観客主体で分かりやすい日本映画とは、演出手法も映像感覚もまったく違うので、邦画を観るつもりで気楽に接すると狐につままれたような気分になるはず。
私も、不透明なテーマ(“老いの孤独とロマンティシズム”?)、不鮮明なストーリーに首を傾げつつ、ただ素晴らしいカメラワークに誘われ、日本仕様でありながら異国の街のドキュメンタリーを淡々と観ているような不思議な気分にさせられた。で、ラストは呆然としてスクリーンの前に置き去り状態……思いがけぬ貴重な映像体験になったが、もう一度味わいたいかと聞かれたら、NON。やはりこういうパリの路地裏辺りのミニ・シアターが似合いそうな哲学的な映画は、日本人キャストで撮らない方が良かったのでは?と思ってしまった。

 
●『僕達急行 A列車で行こう』(監督・森田芳光)

去年の12月にこの世を去った映画監督・森田芳光の遺作。喜劇、時代劇、恋愛映画、アイドル映画、ホラー、ミステリー、文芸作品……と、幅広いテーマを見事に撮り捌くセンスと才能溢れる監督だったが(個人的に好きなのは『の・ようなもの』と松田優作主演の2本『家族ゲーム』と『それから』)、この『僕達急行』も彼の豊かな遊び心とユーモアが散りばめられた楽しい作品。
内容は、鉄道好きの二人(松山ケンイチと瑛太)の恋と友情と仕事を軸に展開される“オタク的青春コメディ”と言った感じだが、頭の中で松ケンの役を今は亡き名優「小林桂樹」に代えてみると、昔懐かしい東宝の“社長シリーズ”になりそうな昭和っぽいテイストもある。二人の何とも“ゆるい”雰囲気が心地良く、自然に笑みがこぼれる2時間だった。(DVD鑑賞)

 
以上、「書きそびれた映画たち」終了。

 

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