2011/12/19

黄金の夢の頂へ。




仕事上の作品をここに載せるのは気が引けるが、これは最近JRAのポスター制作コンペに参加提出したもの。結果的に、13社コンペという馬券並みのギャンブル仕事?は、ソコソコ高い評価を受けながらも“ぜひ次回も参加してください”という労いの言葉を唯一の成果に、善戦むなしく敗れてしまった。(いつもながら、写真選びが難しい……)

ところで、このポスターの題材である「オルフェーヴル」という馬。三冠を達成した「菊花賞」でも、ゴール後に騎手を振り落とすという“やんちゃ”ぶりを見せつけた気性の激しさが有名だが、ソフトな語感の美しい名前と金色(栗毛)に輝く馬体に気品を漂わせる次世代のスターホースである。もちろん、レースにおける桁違いの強さにも魅了されるが、私にとって特に興味深かったのはその馬名の由来。必要に迫られて調べていた際に「なるほどね~」と思わず唸ってしまった。

「オルフェーヴル」とは仏語で“金細工師”。父はステイゴールド、母はオリエンタルアート……父の名前はスティービー・ワンダーの曲名から付けられたものだが、“いつまでも輝き続ける/永遠の黄金”という意味がある(香港で行われた国際レースに「ステイゴールド」が参加したときは「黄金旅程」と漢字表記された)。父の母は「ゴールデンサッシュ(金色の肩帯)」、父の全妹は「レクレドール(仏語で黄金の鍵)」、つまりこの血統において“黄金・金色”は重要な馬名モチーフであり、母の「アート」とゴールドを繋いだ連想で「オルフェーヴル」になったというわけだ。(素晴らしいネーミングセンス!)

母オリエンタルアート(東洋の芸術)の名前も奥深い。母の母は「エレクトロアート」。4代前の母Coastal Trade(沿岸交易)はその父Coastal Traffic(沿岸交通)からの連想馬名。3代母のDhow(ダウ)は、元来インド洋・アラビア海を航行していた沿岸貿易用帆船の一種で、アラビア船の総称となっている言葉。「オリエンタルアート」は母系に連なる馬名から東へ航海する船の姿をイメージしつつ、エレクトロ「アート」を結びつけたものらしい。それを踏まえれば、オリエンタルアートの初仔(オルフェーヴルの全兄)が「ドリームジャーニー(夢のような旅路)」というのも味わい深いし、そこから「オルフェーヴル」という馬名に連なる流れは、血統のロマンに満ちて美しい。

さて、今週はクリスマスウイーク。日曜日には、中山競馬場にジングルベル代わりの発走ファンファーレが鳴り渡り、一年を締めくくる競馬の祭典「有馬記念」競争が行われる。私は馬券を買う気はないが、落ちっぱなしの運気を引き上げるべく、仕事を通じて愛着を深めた「黄金の三冠馬」に大金を賭けたつもりで声援を送ろうと思っている。

※競走馬においては母系が非常に重要視されており、父も母も同じ場合は、“全兄・全姉、全弟・全妹”と言う。母だけが同じ場合は“半兄・半姉・半弟・半妹”となるが、“同父”だけでは兄弟関係にはならない。



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