2019/08/18

夏の日々のメモ③



811日(日)
録画しておいた「フランケンシュタインの誘惑E “水爆 欲望と裏切りの核融合”」を観る。(Eテレ8/8放映。「原爆の父」ロバート・オッペンハイマーと「水爆の父」エドワード・テラーの物語)

「水爆はジェノサイド、大量殺戮兵器」と言って研究に消極的なオッペンハイマーに、「水爆を使用するか否かを決定するのは科学者の仕事ではない。発見することが科学者の仕事だ。いかなる科学においても重要なのはできることをすることなのだ」と、かつての師に反旗を翻し開発に執念を燃やすテラー……

普段、科学者の欲望などに無縁かつ興味のない私には、発見や発明の名誉にひたすら執着し「無限の破壊力の実現」に執念を燃やす彼の姿は“イカれてる”としか思えなかったが、この世界に大量破壊兵器が数多く存在している現実は、その狂気が普通の意識として正当化され、延々受け継がれていることの証左。
原爆犠牲者の鎮魂を祈るこの時期、広島・長崎の人々はもとより多くの日本人にとって赦しがたい「原爆の父」の存在も、「水爆の父」のイカれ具合に比べれば……と、空恐ろしくも虚しい気分にさせられる45分間だった。

夜は、「いだてん」からのNHKスペシャル「激闘ガダルカナル 悲劇の指揮官」…
日本陸軍の精鋭部隊(一木支隊)916名が、1万人を超えるアメリカ海兵隊に戦いを挑み、全滅した「ガダルカナルの戦い」を、アメリカが保有する膨大な戦闘記録を基に検証したもの。

個人的に、以前から「大和魂を最重視する無謀で好戦的な陸軍、理性的かつ合理的な思考を有しながら陸軍中心の開戦勢力に追従してしまった海軍」というイメージを持っていたが、この番組を見た後は「慢心の陸軍・邪心の海軍」という印象に(とりわけ海軍の独善性に唖然)……つまり、どちらも“ろくなもんじゃなかった”ということ。

正しいデータを把握せず、自分たちの都合の良い結果を捏造し、全滅という悲劇を招いた陸海上層部。にも関わらず、その失敗の全ての責任を現場に押し付けるという度し難さ……今の政権及び官僚たちの姿に通じる恥ずべき日本人の姿に、怒りを通り越して悲しくなってしまった。(で、何が悲しいって、これら膨大な資料のほとんどがアメリカ側から提供されたものであること。公文書やデータに関する認識があまりに違いすぎる)

812日(月)
連日の録画鑑賞。(暑い日は“家で映画”が一番)
ドキュメンタリー『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名はカメジロー』(製作:TBS2017年)を観る。(8/11、日本映画専門チャンネルにて放映)

第二次大戦後、米軍統治下の沖縄で唯一人、度重なる弾圧にも屈することなく「民主主義」を求め米軍に立ち向かった男・瀬長亀次郎。民衆に支えられ、那覇市長、国会議員と立場を変えながら闘い続けた彼の知られざる実像と抵抗の人生を、関係者の証言を通して浮き彫りにしていくドキュメンタリー。(監督は元TBSキャスターの佐古忠彦。テーマ音楽は坂本龍一。ナレーターの一人に今は亡き名優・大杉蓮)

現在の「オール沖縄」という連帯も、さかのぼれば亀次郎さんが原点。何度アメリカに潰されそうになっても、余裕の笑みを浮かべて起き上がる「カメジロー」の姿に見惚れ、今なお沖縄県民の抵抗と希望の象徴として慕われ続ける、その不屈の魂のしなやかな強さに感じ入る一本。改めて「民主主義は勝ち取るべきもの」と思う。

夜は、「やすらぎの刻~道」(テレ朝)と並んで、いま最も気に入っているドラマ「監察医 朝顔」(フジ)を観た後、NHKスペシャル「かくて“自由”は死せり~ある新聞と戦争への道~」……

《戦前最大の右派メディアが見つかった。時の司法大臣・小川平吉が、1925年に創刊した「日本新聞」である。新聞が発行されていた11年間は、日本が「大正デモクラシー」から急速に「軍国主義」に傾斜していった時代だった。なぜ日本人は、一度は手にしていたはずの「自由」を手放し、「戦争への道」を進んだのか。「日本新聞」を手がかりに、見つめていく》(NHK)という濃厚なドキュメンタリー。

で、私も最近知ったのだが、例えば「自分の感情」を「国民感情」に、「私の心」を「日本人の心」に拡大しちゃうこと(主語を大きくして語ること)や、自分(だけ)が思っているのに「みんながそうだと思い込む」ことを、流行りのCMにかけて「ハズキルーペ症候群」と言うらしいが、自分の意に沿わない主張や人物に「売国奴」「非国民」等のレッテルを貼り攻撃を繰り返していた「日本新聞」の11年間も、その「ハズキルーペ症候群」が徐々に蔓延し、過激化・拡大化していったような印象。現在の日本の状況とよく似ていることに慄然とする。
番組では大正デモクラシーで自由を謳歌した人が、「仕事がなくなった」等の理由で、いとも簡単に国家主義に傾倒していった事例が紹介されていたが、それも「民主主義教育」や欧米のカルチャーに囲まれて成長した6070代の高齢者たちが今、少なからず「ネトウヨ」にハマってしまう構図によく似通っているように思えた)

結局、日本は民主主義を追い続けながらも成熟できないまま、戦争、敗戦を経て再び“危うい今”に至っているということだろうか…う~ん、マジ虚無。(と、諦めてもいられませんが)

 

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