2017/04/11

在日高校生の青春(&真央ちゃん)




花冷えの一日。散り際の桜が冷たい雨に濡れていた。

真央ちゃん引退……

ファンの一人として、少し淋しくはあるが、驚きはない。結局、あの芸術的かつ感動的な「フリー」(ソチ五輪)が彼女のスケート人生の集大成だったということ。ケガに苦しみながらも戦い続ける氷上のヒロインに、平昌での「復活」を期待した人も多かっただろうが、奇跡がそうそう起こるはずもない。今はただ、鮮烈な4分間の記憶を残してくれたことに感謝したいと思う。

続いて、先週(4日)、渋谷ユーロスペースで観たドキュメンタリー映画『ウルボ 泣き虫ボクシング部』の紹介をサクッと。

タイトルの「ウルボ」とは、朝鮮・韓国語で「泣き虫」のこと……韓国出身のドキュメンタリー監督イ・イルハが、東京朝鮮中高級学校の高校ボクシング部に取材を敢行し、厳しい練習に励む在日コリアン部員たちの青春と葛藤の日々を捉えたドキュメンタリーだ。

映画の冒頭、東京の真ん中で、朝鮮学校の真ん前で、在日の人たちに浴びせられる「ヘイトスピーチ」の罵声が響く。

朝鮮人でありながら日本で生まれ、どこにも属せないことに矛盾や差別を感じている人々の姿を描くのだから、当然、映画に込められたテーマは重い。また、心ないヘイトスピーチに晒されるだけでなく、朝鮮学校の無償化除外問題、各種学校扱いの朝鮮高校生は大学進学の際に「高等学校卒業程度認定試験」を受けなければならないなど、彼らが置かれている環境の厳しさにも心が痛む。

だが、試合に負けては泣き、勝っては泣き、出場できずに泣く、ウルボで純粋な高校生たちの日常を追うカメラが描き出す光景は、それら深刻な背景を忘れさせるほど、熱い友情に満ちた、直向きで、清々しい青春映画そのもの。在日としての誇りと葛藤も、民族の悲願である「祖国統一」も、自身のアイデンティティとして、ごく自然に気負いなく受け止めている彼らに、良き人生を!と、心底エールを送りたくなる86分。
在日高校生たちのハンパない熱量と絆の強さに、心地よい刺激を受けながら、「やっぱ、青春っていいなあ~」……と思える快作だった。(ただ、あまりナショナリズムに偏らず、祖国の現状を冷静に見つめる視線や言葉があっても良いのでは……という気はした。まあ、そこに触れられない事情もあるのだろうけれど)

ちなみに映画の案内チラシにはこう書かれている。

「僕らには夢があります」
「家族や友だちがいます」
「一生懸命に生きています」
「あなたと同じように」

 

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