2016/06/17

アズナブール(日本公演)!!!


しっかりした足取り、しなやかな身のこなし、そして衰えを知らぬリズム感……これが92歳にもなった老歌手のステージだろうか? これはシャンソンではなく、シャンソンの神様がかけた「アズナブール」という名の魔法ではないのか?

と、我が目を疑いながら鳥肌モノで聴き入った昨夜の「シャルル・アズナブール」(NHKホール)。

19時ピッタリの開演から、休憩なしの1時間40分(MC少々)。曲数にして1516曲だろうか(セットリストが会場になく正確には分からない)……1曲だけ女性コーラスの一人でもある娘さんとのデュエットがあったが、あとはすべて一人。さすがに高音域は厳しそうだが、それを感じさせないほどの声量と表現力で力強く歌い上げるのだから、「すごい!」というほかなし。

「歌う以前に、ちゃんと立っていられるのだろうか?」「途中休憩を入れて、10曲くらい歌ってくれれば、もう御の字」などと、あらぬ心配をしていた自分が気恥しくなるほどの圧倒的なエンタテナーぶりに、思わず「ありえんワ…」と呟きつつ、大満足の一夜となった。(「タラソテラピー」にハマっていて、それが若さの秘訣と何かの記事で読んだが、まさかそれだけじゃないでしょ?!)

で、この夜一番の“鳥肌”は、自分の胸を握りしめた拳で三度(だったと思う)、その魂の場所を確かめるように強く叩きながら歌ってくれた『帰り来ぬ青春(Hier encore)』……




次に、リラの花に見立てた白いハンカチを小道具に、「ある時代のことをあなた方に話そう/二十歳前の人たちには経験しようのない時代のことを/モンマルトルではその頃/僕たちの部屋の窓のすぐ下までリラが枝を伸ばして咲いていた/そして僕たちの愛の巣となった…」(朝倉ノ二―訳)と、貧しくも幸せだった画学生の青春を情感たっぷりに歌い上げた『ラ・ボエーム』。
そして、1999年にエルヴィス・コステロがカバーし、映画『ノッティンガムの恋人』の主題歌として再ヒットしたバラードの名曲『She(忘れじの面影)』、今は亡き友の家でアズナブールを聴きながら過ごした遠い日の記憶が蘇る『哀しみのヴェニス』『ラ・マンマ』などなど、懐かしいヒット曲を今風なアレンジで歌うアズナブールのカッコ良さ。(赤いサスペンダーと赤いソックスも、実によく似合っていた)




……最後の曲が終わるや否や、ホール内に「ブラボー!」の声が鳴り響き、満員の観客は総立ち。
92歳の“シャンソンの王様”は、たくさんの女性ファンから送られた抱えきれないほどの花束と贈り物を手に、拍手の嵐を受けながら、手を振り笑顔で「最後の日本公演(?)」のステージを去って行った。

さて、そんな心震えるライヴに酔わされ、傘も揺れる帰り道……改めて、思ったことはただ一つ。

「人間、年を取るのは同じでも、老いのスピードは違う」(だって、92歳があんなに若い!)


敢えて老いに抗う気はないが、明日からは“もう年だ”なんて、言わないようにしようっと。

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