この映画を去年のうちに観ていれば、個人的に間違いなく「2014年度 邦画ベスト1」だったのになあ……と、劇場で観られなかったことを後悔した『小川町セレナーデ』(監督:原桂之介/2014年10月劇場公開)。
舞台は、「吉祥寺」「新宿」と並ぶ我が青春の街「川崎」。(「川崎発の映画をつくろう」という市民有志の思いから企画された映画。その有志の結集体である「かわさき街おこしシネマプロジェクト」の第1弾とのこと)
主人公は、とある町の場末のスナック「小夜子」を経営するシングルマザーの真奈美(須藤理沙)。男前な性格の彼女の生き方を縦軸に、娘・小夜子(藤本泉)、そして昔の仕事仲間であり、小夜子の父でもあるオカマのカリスマダンサー・エンジェル(安田顕)が織りなすちょっと変わった家族のドラマ……経営危機に陥った「スナック小夜子」の再起を懸け、疎遠だった父エンジェルの指導のもと母娘が力を合わせ「偽おかまバー」をオープンするあたりから、町の人々も巻き込んで笑いあり涙ありの人情コメディはさらに熱を帯びてくる。(その顛末や如何に?「小夜子」と3人の明日は何処?……という展開の先に、待っていたのは、情けの熱もほどよい至極のラスト!)
“セレナーデ”は、夕べに恋人の窓下で奏でられる音楽。「小川町」で生きる人々の日々を慈しむように2時間弱、優しく温かく心強く奏でられた人生という名のセレナーデ……またひとつ、大好きな映画ができてしまった。
その他、DVDで観た“新作”は、好みの順に『滝を見に行く』『シェフ』『柘榴坂の仇討』『サンバ』『天才スピヴェット』『それでも夜は明ける』など。
旧作(発掘良品)は、独特の映像美で、時折、白昼夢を見ているような気分にさせられるタルコフスキーの『僕の村は戦場だった』、シャロン・テート事件の影響が感じられるポランスキー監督のスリラー『テナント』など。
『滝を見に行く』(監督:沖田修一)は、温泉バスツアーに参加していた中年女性7人が、新米ガイドのせいで滝を見るために立ち寄った山中で迷子になる話。一夜のサバイバル生活を通じてお互いの人生の一端を知り、心の距離を縮めていく彼女たちの不思議な連帯感を、おばちゃんっぽい自虐的な言葉と年齢を重ねることに抗わない素直さ込みで味わえて、妙に楽しく心地よい。夜の山中、7人並んで寝ながらの大合唱になった奥村チヨのヒット曲「恋の奴隷」も効果的で、実に良かった。(個人的にはココが一番のツボ)
以上、「2か月間の映画メモ」終了。
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