昨夜、日テレのドラマ『家政婦のミタ』を見た。あらゆる感情の表出を拒否するような松嶋菜々子の無表情な演技が妙に面白く新しい。良からぬ事が起きそうな不穏なドラマの雰囲気と同時に、その“良からぬ事”を良き方向に導くような頼もしさを醸し出している……どうやら自分の子供を何かの理由で亡くしたらしいが、それを含めた家族再生の物語なのだろうか。第5話にして初めて観たが、これはハマりそうだ!
さて、そんな『家政婦のミタ』から急激に話を変えて、日夜ニュースで流れているTPP問題……TPPとは、Trans-Pacific Partnership(環太平洋戦略的経済連携協定)の略だが、いま賛成派、反対派の対立が激化しているのは周知のこと。
賛成派は製造業などの輸出企業、反対派は農業関係者、医療関係者など。でも、本当はその背後にいる各々の既得権益者たち(賛成派=経済産業省、経団連・経済同友会などの経済団体、企業から票・献金を受けている政治家、企業と近い関係にある経済学者、反対派=農林水産省、農協などの農業関連団体、医療団体および各団体から票・献金を受けている政治家、農業に関係のある学者・農政研究者)が利害関係者であり、政・官・業・学が、各々の既得権益でつながっていて、それを守ろうとしているのが対立の構図のようだ。
新聞などのマスメディアは、大体TPP参加賛成の方向性。ただそれも、大手輸出企業から莫大な広告費を得ている既得権益者と見なせば、当然の“賛成派宣言”と言えなくもないので、その論調を鵜呑みにすることはできない。(う~ん、厄介だ)
で、国民、消費者だが、私も含めて賛成とも反対とも言えないのが現状ではないだろうか。その理由は、貿易の利害関係者ではなく、自分にとってどんなメリットがあるのか、あるいはデメリットが何かが、まったく見えてこないからだと思う。
まあ、少ない知識と情報で単純に考えると、関税がなくなれば商品が安くなるので我々消費者にはメリットだろう。また、関税という消費者の負担分が政府へ収益として入って既得権益化しているわけだから、それがなくなることは国民の利益にもなるはず。さらに、農業を独占的に支配し巨大コングロマリット化した「農協(JA)」の既得権益を奪い、農業の再生を図りつつ国民の負担を減らすことにもつながるのではないか……とTPP参加のメリットは少なくないような気もするが、反面、食の安全性、医療の平等性、日本企業の海外移転等に伴う産業の空洞化による雇用の縮小、賃金の下落などが懸念されており、それらに政府がどう対処するかも分からないので、容易には判断できない。
とにかく、国民・消費者に対する政府からの情報があまりに少ないのが一番のTPP問題(交渉する分野は24分野にも及ぶそうだ)。参加した場合、私たち国民にどんな利益がもたらされ、逆にどんな負担が生じるかを政府は早急に示すべきだと思う。その上で、もし状況が変化したときにはどんなリスクが起きるのかを語るべきだし、国民の利益に反するようなルール導入には賛成しないという“譲れない一線”を明確に説明する必要があるだろう。
ただでさえTPPに参加すれば、国益に反してもアメリカの主張に追随せざるを得ないのではないかという日本の外交的稚拙さを不安視されている中で、国民にその内容すら説明できないのであれば、アメリカ相手のタフな交渉力など期待しようがないのだから……
と書いている最中にニュースが流れ、明日、野田首相がTPP交渉参加を正式表明するらしい。
国民の立場から見れば、説明不足という点でかなり拙速に思うが、外交的には“遅すぎる決断”なのかもしれない。いずれにしろ参加を決めた以上、今後の積極的な情報開示と“国民の利益”に適ったルール作りという国民、消費者に対する最低限の責務はきちんと果たしてもらいたいと思う。
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