2015/11/10

最後に神が舞い降りた 〜愛と哀しみのボレロ〜


先週木曜(5日)、今年観たすべての映画の印象が消し飛んでしまうような、凄い映画(というか凄いラストシーン)を観てしまった。(小屋は「恵比寿ガーデンシネマ」)

「人生には2つか3つの物語しかない。
しかし、それは何度も繰り返されるのだ。
その度ごとに初めてのような残酷さで」   ウィラ・キャザー

そんな、字幕から始まる『愛と哀しみのボレロ』(監督/クロード・ルルーシュ、製作国/フランス、製作年/1981年)。

観る前は、「間に5分くらい休憩があればいいのに」と、185分という尺の長さに多少腰が引けていたが(年のせいか、最近はトイレが近い)、そんな不安も何のその。素晴らしい音楽とダンス、そして緩みなく流れるドラマチックかつリズミカルな展開は、衰えゆく肉体にさえ最後までその長さを感じさせることはなかった。

映画の舞台は、ベルリン、モスクワ、パリ、ニューヨーク――主人公は4人。指揮者「ヘルベルト・フォン・カラヤン」、バレエダンサー「ルドルフ・ヌレエフ」、シャンソン歌手「エディット・ピアフ」、ジャズミュージシャン「グレン・ミラー」らの波瀾の人生をモデルに、第二次大戦前後から現代まで(1936年~1980年)、4人を取り巻く人々とそれぞれの家族の歴史と人生模様を、ヨーロッパ現代史に沿って描いた壮大な群像劇……その「愛と悲劇の系譜」が、生き残った人々と(彼らの子供たちが)選び取った人生によって集約され、ラスト10分、それぞれの運命の結節点であるパリの一つの舞台に導かれる。

その時、まさに「神降臨」。

生まれて、生きて、出会って、愛して、別れて、死ぬ……今は亡き、不世出のバレエダンサー「ジョルジュ・ドン」の踊る「ボレロ」が、冒頭の字幕に象徴される映画と人生のすべてを物語る、このラストシーンの美しさ、素晴らしさ!(久しぶりに体が震えた)


そんな鳥肌モノの「ジョルジュ・ドン」に酔いながら、フラフラと映画館を出て数分、不意に目に飛び込んできたのは「バカラ」の巨大なシャンデリア……「至高の美」に魅せられたばかりの私には、その白い輝きが空しく、とても淋しい光のように感じられた。(人生は短い。そんなに急くなよ、クリスマス!)





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