2014/11/26

『TATSUMI』&『劇画漂流』



先週の火曜(18日)、ラジオCMの収録が早目に終わったので(昼メシを含め13時前に終了)、当然の寄り道を決め込み、その足で見附から新宿へ。明治通り沿いにある「角川シネマ新宿」で『TATSUMI マンガに革命を起こした男』を観てきた。(上映開始1440分。映画の前に、伊勢丹会館内の「珈琲舎バン」で、『永続敗戦論』を読みながら1時間ほど時間潰し……目からウロコの優れ本)

映画『TSUMI…』は、高度経済成長期の“光と影”を描き続けた辰巳ヨシヒロの自伝的漫画『劇画漂流』を基に、彼の代表的な5つの短編作品(「地獄/HELL」、「いとしのモンキー/BELOVED MONKEY」、「男一発/JUST A MAN」、「はいってます/OCCUPIED」、「グッドバイ/GOOD-BYE」)を挿入しつつ、“劇画の父”と呼ばれた彼の半生を描き出すアニメーション作品。シンガポール映画界の旗手エリック・クーが監督を務め、別所哲也が一人六役の声、辰巳ヨシヒロ本人がナレーションを務める。(別所哲也。暫くテレビで顏を見ないが、こんな所でイイ仕事をしていた!)

で、感想だが……70年代に月間漫画雑誌『ガロ』を愛読していた私のような人間にとっては、何とも言えない懐かしさと哀しさと荒々しさが入り混じったような、不思議な感情に襲われる、堪らなく魅力的な作品だ。
朴訥とした語りに誘われ、その原画の中から抜け出てきたような登場人物たちが、スクリーン一杯に〈動き・這いずり・もがく〉光景は、まさに辰巳ワールド。時代に取り残されていく平凡な人々を描きつつ、時代に反旗を翻し、劇画ブームを起こした男の魂の躍動をまざまざと見るようだ。きっと、人間の欲望と哀しみが生々しく交錯するこの“動く劇画世界”に、世代を超えて多くの人が強烈なインパクトを受けるに違いない。(その生々しさ故、短編の一つ「グッドバイ/GOOD-BYE」が映倫の審査に抵触し、R18+指定の判断を下されるところだったらしい)

事実、パンフレットには、こんな若い世代の声が載っていた。
「なんだろう、この迫り来る哀しさと可笑しさ。圧倒的な力を持った辰巳先生の作品に今出会えて、私は幸せです!」(女優・南沢奈央24歳)
「あっという間に呑み込まれた、辰巳ヨシヒロを知らなかった事を私は恥とは思わない。今こそ我々が知るべきタイミングなんだと思う、スクリーン体験しなくては勿体無い」(俳優・斎藤工33歳)

映画を観てから6日後の24日、西武リブロで『TATSUMI』の基となった辰巳ヨシヒロの『劇画漂流(上・下)』(講談社漫画文庫)を購入。昨日は、日がな一日それを読んで、戦後日本のカルチャー&サブカルチャーを時系列で追いかけながら、マンガで映画『TATSUMI』を追体験するという珍しくも楽しい時を過ごした。(久しぶりの一気読み)

私の生まれた年……漫画雑誌『少年』に「鉄腕アトム」が登場。映画館では「第三の男」が上映され、ラジオからは江利チエミの「テネシーワルツ」が流れていた。




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