2014/09/08

夏の終わりの映画メモ①



818日(月)~22日(金)
レンタルDVDで(TSUTAYA「発掘良品」)アン・リー(李安)作品『推手』(1991年)、『ウェディング・バンケット』(1993年)、『恋人たちの食卓』(1994年/原題「飲食男女」)を自宅鑑賞。

 3作とも老父とその息子・娘たちの関係がテーマになっている「父親三部作」。父親役はすべて台湾の国民的俳優ラン・シャン(郎雄)が演じている。
アン・リーの名を初めて知ったのは『ブロークバック・マウンテン』(2005年/アメリカ)を観た時。一気に燃え、儚く消える二人(男)の愛を象徴するかのように打ちあがる花火のシーンがとても印象的で美しく、強い情念と高い美意識を持った監督だなあ……と思っていたが、改めてその感を強くした。
で、「父親三部作」だが……それぞれ趣は異なるものの全体的な印象としては、小津安二郎の世界を現代風にアレンジし、小気味よいテンポとアーティスティックな感性を加えたような感じ。
(もちろん、淡々と平坦な物語を描いて深く感銘を残す小津は凄いのですが)
何れも洗練された品格と知性、そして独特の情感を漂わせる味わい深い作品だが、特に好きなのは三作目の父親(中華の元シェフ)と3人の娘の情愛を描いた『恋人たちの食卓』(終わった瞬間、思わずテレビ画面に向かって拍手をしてしまった)。
練り上げられた脚本が素晴らしく、じんわりと長く胸に響く秀作。最後のちょっとしたドンデン返しも心地よく、料理のシーンが映画を鮮やかに引き立てている。

824日(日)
レンタルDVDで『小さいおうち』(2013年/監督:山田洋次)。

とにかく「松たか子」と「黒木華」の存在感に尽きる映画。特別、印象に残る作品と言うわけではないが、中弛みもせず最後まで楽しめるのは脚本・演出の質が高いから。
ベルリン映画祭では幾つかの海外メディアから「情熱に欠ける」「昭和初期へのノスタルジーを掻き立てるだけの高齢者向けメロドラマ」と酷評されたそうだが、個人の意思・責任を重んじる国の人たちには、戦時中の日常生活を描きながら政治的・歴史的背景をあまり語らず、「庶民に罪なし、希望あり」的な緊張感のない映画に仕立てる“甘さ・温さ”が納得できないのかもしれない。
でも、この作品の批判としてはちょっと筋違い。小津作品『東京物語』へのオマージュとして撮った『東京家族』の次の作品という点を踏まえて語られるべきだと思う……山田洋次がいくら小津安二郎を真似ようとしても、なかなか小津映画のような深みが出ないのは何故?とか。(思うに、山田洋次は庶民に優しすぎるのかも……裏返して言うと「庶民幻想」?「庶民コンプレックス」?)
それにしても、このところテレビを観ても映画を観ても何故か「妻夫木聡」がついてくる。別に嫌いな役者じゃないが、いい加減学生役も無理がある。他に誰かいないのだろうか?
(暑い夏も終わり、そろそろ『若者たち2014も食傷ぎみ)

0 件のコメント:

コメントを投稿