2014/09/05

帰るべき場所へ。(香川の移籍について)



BVB(ボルシア・ドルトムント)は家族のような存在であり、彼らが僕を忘れず、また迎え入れてくれたことを誇りに思う」……そんなメッセージを携え、週明けの91日、サッカー日本代表・香川真司のドルトムント復帰が決まった。

香川自身は「もう十分」というくらいビッグクラブでやり尽くした後に、待っている「家族」のもとへ帰りたかったのだろうが、自分の個性が生かされない場所でどう足掻いても、イメージ通りにキャリアアップを果たすことなど無理な話。まして、指揮官に信頼されているならまだしも、「戦力外」と告げられてまでマンチェスター・Uに留まる意味はない。例え、内外の心ないメディア(クソ大衆紙)やファンに「都落ち」「落伍者」などと揶揄されようと、貴重な選手生命を無駄にしないためには、「移籍」は正しい決断だったと思う。(落伍者?…なんて酷い言い草だ!)

もちろん、マンチェスター・Uでの活躍を楽しみにしていたファンの一人としては、十分な信頼も評価も得ることができないままチームを去ることになったのは残念だ。また、その結果を捉えて「プレミア挑戦は失敗だった」「能力が足りなかった」と結論付ける人もいるだろう。しかし「多彩なアイデアとスピードを持つ攻撃的MF」「ゴールに近いゾーンで違いを生みだす存在」として元監督アレックス・ファーガソンが獲得したはずの香川に、強いフィジカルと守備面でのハードワークを求め、単調な攻撃パターン(サイド突破からのクロス多用)の中でその個性を埋没させてしまったのは、香川の失敗というよりは明らかにマンUの失敗。そんな理不尽な方針転換に文句一つ言わず、直向きに戦い続けた香川の「ビッグクラブからの脱出」を誰も咎めることはできないし、その挑戦が「成功」だったか「失敗」だったかを示せるのは他の誰でもなく、これからの香川真司だけ。

が、ともあれ、彼とマンチェスター・Uの間には強い縁も運もなかったのは事実(入団早々軌道に乗りかけた所で負傷し2か月の戦線離脱。縁を結んだ名将ファーガソンが香川入団後1年でマンUを去ったのも不運)。そうしてみると、今のところ、香川の挑戦がもたらしたものは、素人目で思うに「強化されたフィジカル」と「ビッグクラブで得た貴重な経験の数々」と言うくらいかもしれない。
でも、それが、香川の臨んだ成長であり、新たなステージへ向かう大きな力になるだろうことは容易に想像がつく。

さて、帰るべき場所に戻る決心をした香川を待っているのは、彼がもたらす多くの歓喜と成果を信じて疑わない熱狂的なサポーターと、家族のような雰囲気で選手を支えてくれるボルシア・ドルトムントいうクラブだ。そこには、香川の個性と才能を磨き上げ、一層の輝きを与えてくれた人間味溢れる名将ユルゲン・クロップをはじめ、ギュンドアン、グロスクロイツ、フンメルス、シャヒンなどワールドクラスの力を持つ親しい仲間がいる(もちろんチームとしても一流)。
その固い信頼の絆があるゆえに、期待外れに終わることのできない厳しい挑戦にもなるだろうが、個性が活きる場所に立てれば、香川なら必ず良い結果を残せるはず。失いかけたプレーの喜びと嘗ての輝きを取り戻すべく、軽やかに全力で進んで行ってほしいと思う。そして再び、あの黄色と黒が怒涛のように揺れるスタジアムで、大歓声を浴びる香川の勇姿を見せてほしいと心から願っている。

以下、ネットで拾った、的確かつ心に響く印象的な独白を紹介……

「ある一人のユナイテッドファンから香川真司選手へ向けた公開レター」
(インド人のマンチェスター・Uサポーターより)

 “運命とは、思い通りにいっている時には良いモノとして受け入れられる。そうでない時にはそれを運命とは呼ばず、不当な仕打ち、裏切り、単なる不運な事と呼びなさい”

こんにちは、真司

あなたがマンチェスター・ユナイテッドに来た時、私はそれを運命と呼びました。そしてそれから2年後、あなたがここを去った時、私はそれを不当な仕打ちと呼びます 

あなたが来た時、全てのユナイテッドファンは本当に心が躍りました。あなたがドルトムントで相手をズタズタに引き裂いているのを見て、私達はクラブを変える力を持った世界レベルの選手を雇い入れるのだと確信しました。

あなたは私達のナンバー10(トップ下)の選手になる予定でした。ユナイテッドはそれまで主に4-4-2のシステムでウイングを配置し、サイドからのクロスを使うことで有名でした。私達はあなたがクラブの現代化(モダンフットボールへの移行)に関して、私達のフットボールのやり方に変化をもたらしてくれると信じていました。そして私達はあなたとルーニーの連携を想像し、心を躍らせていました。

私は今でもエバートンと対戦した2013/14シーズンの最初の試合を見たのを鮮明に覚えています。また、ある夜には他の誰もがもがき苦しんでいた時、あなたは落ち着き払ってエルナンデスのゴールを二度完成させ、我々の目を引きました。しかし、ロビン・ファン・ペルシーの貢献によってあなたの印象は弱いものにされてしまいました。その傾向は期日まで続き、最終的にはあなたの旅立ちを招いてしまいました。

2年間を通して、あなたがあなたにとってふさわしいポジションで先発した試合はほんの一握りです。まったく不当なことです。左ウイングはあなたを行き詰まらせ、あなたの創造性が出せないように鎖をかけてしまうポジションです。
後知恵ですが、2年目のシーズンはもっと良くなっていたかもしれません。ウェイン・ルーニーが去り、あなたが10番の位置を自分のものに出来たかもしれません。しかしデイビッド・モイーズが来て、全てはダメになってしまいました。ティム・ケーヒルやフェライニのようなタイプの選手を10番の位置で使う監督にあなたを起用する事やあなたを理解することを期待するなど愚かな事でした。彼はあなたを1試合と半分(レバークーゼン戦とスウォンジー戦)だけ10番の位置で起用しました。それは彼の指揮下において最も素晴らしいフットボールに値するものでした。

1月の移籍ウインドーが開き、クラブは’statement signing’(選手を獲得する事によってファンや利害関係者に対し、首脳陣がクラブを改善しようと努力していることをアピールするようなこと?)が必要でした。そしてフアン・マタがやってきて、あなたは序列をさらに落としてしまいました。何試合かはあなた達二人が共にプレーし、うまく連携している時もありました。しかしそれは線香花火のような短い間でした。

あなたはユナイテッドのようなビッグクラブにおいてどれほど物事が簡単にいかないかという古典的な例です。能力を持っているだけでは充分ではありません。宿命、運命、運。多くの要因が関係し、あなたやそのファンを苦しませ、あなたはそれらの要因を自分の方に呼び寄せることはありませんでした。

もしくはそれは単に戦術上の事だったのかもしれません。おそらく監督達はあなたの素早いワンタッチパス&ムーブというスタイルが、ユナイテッドのゆっくりとしたプレースタイルにフィットするとは見なかったのです。あなたをベンチに追いやる一方で、平凡な選手たちにチャンスを与えるのを見ることはがっかりさせるものでした。しかし2年間、あなたは例えどれだけ残酷な扱いを受けようとも、いかなる不満や愚痴をこぼすことはありませんでした。あなたは常にベストを尽くしていました。ファン達はいつでもそのことを感謝と共に覚えていることでしょう。

果たされない夢もあります。達成されないゴールもあります。目的地にたどり着かない旅もあります。私達に残される事はどうすればうまくたどり着けたかという考えや、どうしてうまくいかなかったのかという後悔だけです。

あなたは全ての人があなたの事を敬慕する場所に帰りました。監督によってあなたのベストが引き出される場所です。私達は幸せです。なぜなら、あなたの能力が再び人目に触れることを予想できるからです。

マンチェスター・ユナイテッドとそのファンの代理として、あなたがボルシア・ドルトムントで2度目の、そしてこの上ないくらいの活躍の時を迎えることを願っています。私は継続してあなたのキャリアをしっかりと追うつもりです。わたしは我々があなたを売ったことを後悔させてくれることを望みます。

                                                        敬具
ひとりのマンチェスター・ユナイテッドファンであり香川真司を尊敬する者より

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