2014/06/21

希望と絶望の狭間で味わうW杯



唐突な話で申し訳ないが……東大社会科学研究所が立ち上げた「希望学」のプロジェクトリーダー・玄田有史氏の言を借りると「希望と絶望は表裏一体」。
希望が失望に変わった時、自分と社会との関係をどう軌道修正し、新しい希望につなげるかどうかが、その後の生きがいづくりを左右するポイントだそうだ。そして、彼はこう続ける「ご存じのように希望には、簡単に実現できる希望と、なかなか実現するのが難しい希望があります。私が関心を持っているのは、叶いそうもないのに、それに向かって夢中で行動していく希望の力です。仮に実現しなかったとしても、行動することによって、社会と自分の距離を見つめ直して、自分の進むべき道が見えてくるのです」「希望を持つことにどんな意味があるかを、他人に伝えられるような人間になることはとても重要なことだと思います……私たちを取り巻く社会には『やりたいことがない人生はつまらない』といったプレッシャーがあり、自分らしさ、個性が生かせない生き方は意味がないといった風潮もあります。では、自分がやりたいこと、やるべきことに出会うにはどうすればいいでしょう? その回答の一つは、『失望を恐れずに希望を持ってチャレンジし続けること』ではないでしょうか」

……さて、サッカーも「希望と絶望が表裏一体」、その狭間にいる緊張感と精神の高揚を味わうもの。一瞬のうちに人々を失望に誘う残酷さも含めて、本当に人生のように奥が深く、様々な可能性と大きな歓び(&驚き)を秘めた魅力的なスポーツだ。前回(南アW杯)の覇者スペインや強豪イングランドの敗退、大会直前の親善試合で日本に1:3で敗れたコスタリカの大躍進を見ると、改めてそう思う。

スペインを敗退に追い込んだチリの積極果敢な攻撃スタイルも素晴らしい、世界最高のセントラルMFモドリッチ&絶対的エース・ストライカーFWマンジュキッチを擁するクロアチアも強い、豊富な運動量と守護神オチョアの活躍でブラジルと引き分けたメキシコも魅力的……世界には日本が参考にすべき「希望」のお手本がたくさんあるし、何より、危機的な状況にあっても残された可能性を信じて前を向く日本代表、とりわけ「希望学」の実践的象徴のような本田圭佑の姿がある。

これから714日の決勝まで、例え私(たち)が、胸に突き刺さるような失望を味わうことになっても、世界レベルのプレーに酔い、今後のサッカートレンドを考えながら、4年後に思いを馳せるのもW杯の楽しさ。
次こそ日本代表が伸び伸びと「日本らしいサッカー」を見せてくれることを期待しつつ、明日への意欲と新たな希望を掻き立てる3週間にしたいものだ。

 

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