2013/07/17

「吉祥寺」で、バタヤン&いせや。



♪私があなたに ほれたのは ちょうど 十九の春でした……

一昨日(15日)昼過ぎ、「吉祥寺バウスシアター」“シアター1”では、上映までの15分余り“その人”を偲ぶかのように懐かしい歌が流れていた。

“その人”とは今年4月に94歳でこの世を去った歌手・田端義夫。映画は彼の75年にも及ぶ歌手人生を、第二の故郷である大阪・鶴橋で行われたライブ映像(2006年)を中心に、関係者へのインタビューと昭和50年代の公演等を巧みにまじえ、戦中・戦後、そして奇跡的な復興を遂げながらもなお貧しかった時代を振り返りながら描く音楽ドキュメンタリー『オース!バタヤン』。

映画を観終った後、ふと7、8年前に観た『ヨコハマメリー』(伝説の娼婦の実像に迫ったドキュメンタリー)を思い出したが、戦争と貧困にあえぎ苦しみながら生き抜いた波乱の人生に対する映像讃歌という点では同じでも、この“映像のバタヤン史”からは少年時代の貧しさを微塵も感じさせない突き抜けた楽天性と、涙を内に秘めながらも逞しくしたたかに生きる力強い大衆性、そして見事なまでの歌手魂が感じられ、後味は頗る良かった。(というか、今年観た映画の中でもベスト5に入る快作!)

とにかく映像を通して私の目に映ったバタヤンは、こよなく女性を愛し、戦争を忌み嫌った“イキでロックなオジイちゃん”。(実の娘さんは「父を見て男性不信に陥った」と語っていましたが)
「女の子にもてるやろうなぁ」と、昭和12年に18歳で手製のエレキ・ギターを作り上げ“シンガー&ギタリスト”としてステージに登場(なんと、戦前にエレキ!)。その後、昭和29年に購入したヤマハのエレキを自ら改造を繰り返しつつ50年間愛用したそうだが、その少し歪んだサウンドで奏でる弾き語りは、映画に登場する寺内タケシ、小室等、中川敬など多くのミュージシャンが絶賛する日本のブルース。
私も、インタビュー映像で亡き立川談志が「童謡がイイんだよ」と褒めちぎった「赤とんぼ」「浜千鳥」の深い哀愁に心打たれ、南国歌謡の草分けとなった「十九の春」「島育ち」の得も言われぬ情緒に浸り、英語で歌うジャズ・ナンバー「モナリザ」で完全にシビレてしまった。

さらに流れる曲の感想を付け加えると、「なんで人間同士が殺しあわなくてはいけないんでしょう。戦争は二度とあってはいけません……あっ、夫婦戦争はいいですよ。どんどんやっても大丈夫。負けたら次の人をすぐ見つければいいんですから。でも、戦争はそうはいかない」と、自身の体験に即したユーモアを交えたトークとともに聴かされた“反戦歌”「骨のうたう」もまた良し。テーマ曲、ザ・バンドの「Ain’t Got No Home」も、実によく“ロックな人生&映画”に合っていた。

斯くして至極のドキュメンタリーで心を満たした後は、一人軽く酔おうじゃないか!ということで昼メシ代わりの昼ザケ……井の頭公園入口近くの有名な焼鳥屋「いせや」で、映画のパンフレットを眺めながら名物の焼売と焼鳥5、6本&ハイボール数杯。満員の店内に立ち昇る煙の匂いもイイ感じ。


で、今日の〆はロック&南国演歌!



ザ・バンド「Ain’t Got No Home




田端義夫「十九の春」


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