2013/03/18

「あの日」からの2冊



春先は妙に心が落ち着かない。お陰で2週間ほどブログの更新が滞ってしまった。(苦手なんだよなあ、木の芽時は)

その分、仕事の打合せや高校時代の友人たちとの飲み会など何気に忙しくもあり、気がまぎれたせいか不思議に本は読めた。(映画は『王になった男』を観ただけ……お見事、イ・ビョンホン!)

特に新宿で飲み会があった16日(土)は“飲む前に読書!”と決め、かなり早めに家を出て池袋西武のリブロへ寄り『女川一中生の句 あの日から』(編・小野智美)を購入。それと、金曜の制作打合せの際「コレ、すごくいいよ」と親しい仲間に薦められつつ頂戴した『あの日からのマンガ』(しりあがり寿)を携え、4時から飲み会開始の6時近くまで新宿東口「PRONTO」の喫煙席に居座った。(その前に、チラッと伊勢丹散歩)

最初に、3.11直後の新聞連載作品「地球防衛家のヒトビト」&同時期に書かれた短編を収めた『あの日からのマンガ』を一気読み。


『たとえ間違えているとしても、今、描こう』と未曾有の震災に向き合い、尊い犠牲に報いる道を一人の日本人として探りながら、凄まじいスピードで描き続けた漫画家の素直で真摯な魂に触れる一冊。「あの日」の自分と日本の姿が脳裏にズシンと重く蘇り、胸がザワついた。
それにしても、大笑いで愛読していたギャグ漫画の傑作『流星課長』から10年以上を経て、こういう作品に出合うとは……描かれて既に2年近く経つが、私を含め、束の間の非日常から、退屈な日常に戻ってしまったように感じる今こそ、多くの人に読まれるべき力作ではないだろうか。また、来年も「あの日」が来たら読もうと思う。

続いて『女川一中生の句 あの日から』……前書きにはこう記されている《東日本大震災の後、女川町の女川第一中学校の全校生徒200人が俳句を作った。2011年5月と11月に行われた2回の授業。津波で家族を、家を、故郷の景色を失った生徒たちが、季語にこだわらず、五七五に心の内を織り込んだ。時と共に深まる思いをたどる》

深い悲しみと喪失感の中で圧倒的な現実を受けとめ、自分の心と向き合い、その小さな胸の奥深く分け入り探し出した言葉の数々。そんな中学生たちの心の葛藤がヒシヒシと伝わる一句一句……言い知れぬ悔しさや涙を噛みしめ「上を向いて生きよう」と明るく歩き出す姿に胸を打たれながら、彼らの心からは決して生まれることのない「復興」の二文字は誰のための言葉なのか?と改めて思った。


(5月)

そばにいる 仲間がずっと そばにいる

春風が 背中を押して ふいていく

ガンバレと ささやく町の 風の声

見たことない 女川町を 受けとめる

故郷を 奪わないでと 手を伸ばす

ただいまと 聞きたい声が 聞こえない

逢いたくて でも会えなくて 逢いたくて

見上げれば ガレキの上に こいのぼり


(11月)

一人ずつ 自分の笑顔 とりもどす

聞いちゃった 育った家を こわす日を

教室の 窓から見えた ショベルカー

こみあげる 無力感が 止まらない

 避難所で 夜中に鳴った 誰かの屁

 戻ってこい 秋刀魚の背中に のってこい

 コンビニの 窓にきたない 水のあと

流された 私のおうち ガレキ置き場

空の上 見てくれたかな 中総体

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