2012/12/31

よいお年を。


ここ数年、正月用の食材は私が大晦日に買い揃えるのが習わし。今日も単身、池袋・東武に出向き、定番の本マグロ以下、氷見の寒ぶり、明石の真だこ、新潟の銘酒「鶴齢」など、ごったがえす人の群れを掻き分け、頭の中で算盤を弾きながら、ウチにしては贅沢な品々を買い漁ってきた。(私的に、東武の地下にある『魚力』は、“品物は良いが高い”というデパ地下の生鮮品のイメージを打ち破る、味良し・活き良し・値段良し、おまけに店の人の感じも良い東京一の魚屋さん)

その間、約1時間。重い荷物を両手に提げ、やっこさん状態で帰りの電車に乗ったが、そこに蕎麦とかき揚げ、田作り、黒豆、みかんなど、地元のスーパーで買い込んだ食品が加わり“やっこさん”どころか、家に着く頃には落下する凧のようにフラフラ……これで、元気に正月を迎えられるのだろうか?と思うが、ともかく、新年を迎える準備は整った。後は今宵、美味い刺身を盛合わせ、美酒「鶴齢」の封を切り、「紅白」を見ながら安い蕎麦を食べるだけ。

というわけで、ブログ的にも今年の〆、今日の更新で108回目になった。

まったくの偶然とはいえ除夜の鐘と同じ数とは、まさに“煩悩の産物”ではないか。と、思わず苦笑してしまうが、そんな至らぬ意識の産物を読んでくださる日本と世界各国の方々に改めて感謝の念を抱きながら、あっと言う間に過ぎた2012年にサヨナラを告げようと思う。

 
明日から始まる2013年が、皆様にとって素晴しい年でありますように。

 

 

 

 

 

 

2012/12/24

メリー・クリスマス


今年も残り1週間、今夜はイヴ。ということで、二人の“ジョン”のクリスマスソングを……(エルトン・ジョンの方は、詞の内容的にも邦題通りクリスマスソングとは言い難いけれど、好きな曲なので)



Happy Xmas(War Is Over)/ジョン・レノン(&オノ・ヨーコ)





Cold As Christmas(心はさむいクリスマス/エルトン・ジョン)




2012/12/18

選挙余談「スマイル党」


衆院選の陰に隠れ、あまり盛り上がらず予想通りの結果で終わった「東京都知事選」。

かつては、本命・対抗以上に、赤尾敏(日本愛国党)、東郷健(雑民党)、内田裕也、桜金造など、“泡沫候補”とは言いながら、ユニークな発言とパフォーマンスで選挙戦を盛り上げてくれる個性的な立候補者がいたが、時代と共にそういう人が少なくなり、政見放送を見る楽しみも減ってしまった。

そんな中、ひとり異彩を放っていたのが、スーパーマンコスチュームで身を包み「目と目があったらスマイル」と呼びかける、スマイル党総裁「マック赤坂」氏。

財団法人スマイルセラピー協会会長(医学博士・社会心理学博士)らしいが、その「マニフェスト」が、選挙公報を読みながら一人で大笑いしちゃうほど、群を抜く面白さ。

例えば、東京を〈スマイル特区に〉という項目では「眉間にシワで東京都の街頭を歩いた時は東京都迷惑条例により3万円の罰金刑」、〈高齢者特区に〉では「65歳以上の高齢者に一律月2万円支給。同時に恋愛セラピー実施」、〈恋愛特区に〉では「東京都民は老若男女、恋愛を人生の喜びとする。東京都民は恋愛モテモテコースを都民割引で優先受講できる」など、想像しただけでハッピーになれそうな公約がてんこ盛り。(眉間にシワで3万円では、新都知事の猪瀬氏などいくら給料を貰っても追いつかないはず。東京の街は歩けないなあ……などと想像するのも楽しい)

で、ふざけているのかと思いきや「うつ病と自殺対策」に力を入れ、「都職員・都議会議員の人数と報酬を50%カットする。都知事の報酬はゼロ」「原発反対。五輪誘致反対。新東京銀行は民営化」と真っ当なこと(?)も書いてある。

う~ん、64歳にしてこの不思議なスマイル感覚&奇抜な発想力、只者ではない……と感心する他ないが、そこは泡沫候補ゆえの悲しさ、ユニークなマニフェストが大量の票に結び付くわけもなく、約3万8千票であえなく落選。(私も心の中で応援はしたが、一票は別の候補者へ……)

まあ、それでも本人は一向に挫けることなく、今日も「スマイル!」だろうし、その姿は、きっと来年も変わらずに拝めるはず。私も一層の「右傾化」を心配することなく、よりパワーアップした彼のパフォーマンスとマニフェストを楽しめる参院選になることを今から願っている。

選挙が終わって。


2日前の衆院選、結果は自民圧勝、民主壊滅的敗北(公明堅調、維新&みんな躍進、未来惨敗、共産埋没、社民沈没)、都知事は石原後継の猪瀬圧勝。

大方の予想通り、新旧「保守」勢力の大勝利に終わったわけだが、NHKの開票速報が始まる前は、フジテレビの「THE MANZAI 2012」を観ながら大笑いしていた私も、チャンネルを切り替えて1分後には、あまりの状況に笑いも凍り、口あんぐり……瞬時に、憲法と日教組をやり玉に挙げながら“日本の危機”を声高に煽るスローガン政治に翻弄されそうな数年間を覚悟した。

それにしても、民主が57議席とは……いくら3年半の失政に対するフラストレーションが国民の間に溜まっていたとはいえ、ちょっと“お灸”のすえ方がキツ過ぎないか? と、多少民主党に同情したくもなる(自業自得だけど)。また同時に、個性や多様性を求める私のような無党派層の選択肢が狭められることで、投票率も伸びず大政党有利となり、結果、政治全体の保守化・保身化を後押ししている小選挙区制への疑問も改めて湧いてくる。これでは「日本を取り戻す」どころか、選挙の度に時代の針を大きく戻すようなことにならないか?……2007年に在職1年で首相を辞任した安倍政権の復活を、「日本の有権者は忘れっぽいようだ」と、外国のメディアに揶揄されても仕方ない気がする。

というわけで、経済も原発も日中・日韓関係も不安と緊張が高まるだけで、まったくリベラルな風を感じない政権交代。あの顔から放たれる“危機突破内閣”という勇ましいフレーズも気色悪いし、何だかなあ……と、少し憂鬱な気分で、テレビのニュースを見る気も起きないが、これも政治への憤りと諦めの中で政権の安定を求めた国民の選択(結果的に思わぬデメリットを負うかもしれないが、それも当然、有権者それぞれの自覚と予測の範囲だと思いたい)。
自分の力が及ばない事を色々心配するより、自分が対応できることを考えるだけと気持ちを切り替え、来年の参院選へ見据えながら新政権の動向を注視するのみ。さて、どんな4年間になりますやら。

2012/12/13

後味良し!『人生の特等席』


お酒はぬるめの燗がいい。肴はあぶったイカでいい。映画はイーストウッドが演ればいい……

名作『グラン・トリノ』から3年半、クリント・イーストウッドが役者としてスクリーンに戻ってきた。もう、それだけで十分に嬉しいのだが、期待に違わぬ“渋い老いぼれ”ぶりを存分に見せつけてくれるのだからファンとしては堪らない。

その役柄は、メジャー・リーグ、アトランタ・ブレーブスの老スカウト「ガス」。長きに渡り新戦力を発掘し球団を支えてきた“伝説的スカウトマン”だが、視力は衰える一方、データ野球に不可欠のパソコンもダメ。その上、性格は頑固一徹、独自の嗅覚と経験に頼るやり方を変えない……必然、時流に合わず引退勧告も迫っているが、ガス自身は仕事への自負・意欲に揺るぎなし。そして、球団の命運と己のキャリアを賭けた勝負の場、ドラフト会議の目玉とされる高校生スラッガーの実力を見極めるため、ノースキャロライナに向かう。但し、その見立てが外れたら、間違いなく解雇。彼の身を案じた球団幹部の親友ピートは、長年、父ガスとの確執を抱え都会で暮らしていた敏腕弁護士の娘ミッキー(エイミー・アダムス)に“視察旅行”への同行を懇願する。初めは拒んでいた彼女だが、仕事上の岐路に立ちながらも疎遠だった父の後を追う……果たして、ガスは仕事を成功裏に収めることができるのか、父娘の関係修復は可能なのか。

という、アメリカの野球文化を背景にした、複雑な捻りのないヒューマン・ストーリー。何か深いテーマや格別な感動を求めて観に行く人には申し訳ないくらい、想定内の展開&お約束通りのハッピーエンドが待っているベタなハリウッド映画なのだが、イーストウッドがいるだけで「名作」に思えてくるから不思議。突っ込みどころも多々ある幾分ご都合主義的な作りでも、最後まで飽きずに楽しめ、絶品の後味で家路につくことができるのは、映画を知り尽くした名優のお陰と感謝するほかない。(特に、亡き妻の墓前で口ずさむ「ユー・アー・マイ・サンシャイン」には、ゾクッと痺れた)

普通はスターの老いた姿を見るのは辛いものだが、ことイーストウッドに限っては、どんなに皺が増え、頬が弛み、小便が出にくかろうが(映画のワンシーン)、その漂う気配が突き抜けて魅力的なので、辛いどころか「シブい!」と惚れ直すだけ。既に御年82歳だが、監督業もさることながら、命ある限り、その老いの渋味をスクリーン上で見せてほしいと思う。

映画の原題は"Trouble with the Curve"「カーブに難がある」。ストーリーと直接的に絡むタイトルだが、「人生の曲がり角における困難」という意味も含まれているらしい。なるほど、なるほど……で、父も娘も曲がったことが大嫌い、だからこそのストレート勝負ということか。

2012/12/07

冬のラジオCM制作


昨日(6日)は、制作を手掛けたラジオCMの収録立会いのため、有楽町「ニッポン放送」本社へ。

午後2時半に広告代理店の営業部長・仁さんと1階フロアで落ち合い、局の担当営業の方と顔合わせ&打合せの後、クライアント共々スタジオへ向かった。(クライアントの「マイコール」からは、社長以下3名の方が参加)

収録時間は1500153030分!)……その短さが気になっていたが、スタジオ入りの瞬間に不安解消。テスト中にも関わらず臨場感溢れる美声が響き渡る室内で、二人の声優の方(男女)がイメージ通りに読み合わせを行っていた。ゆえに本番中も私が注文をつけたのは微妙な節回しのみ。クライアントの満足度合いを確かめながら、20分程度でOKを出し、仁さんと目を合わせ安堵の一息。私にとって10年ぶりのCM録りは、局の方の案内による“新設スタジオ見学”という余裕のオマケまでついて無事終了した。

局を出てからは仁さんと二人、有楽町・交通会館内の喫茶店で(今どき全席喫煙というある意味、感動的な店)、別件の仕事&サッカーの話をしながら軽く30分。
その後、彼は会社、私は池袋……西武「リブロ」で、天童荒太の新作『歓喜の仔』を購入した後、友人が社長を務めている会社のホームページ制作の打合せを兼ねた飲み会の席、西口「高田屋」へ。その友人を含め親しい仲間4人の飲み会だったが、CM録りの満足感も手伝い、楽しさ倍増。心地よい夜になった。

で、今日早速、仁さんと私のもとにクライアントから「(CM素材を)事務所のみんなで聴いてクスクス……良いCMができて嬉しい」との、ホットな労いメール。もちろん、喜んで頂いて私も嬉しい。

というわけで、「できるだけ社名・商品名を多く入れて覚えてもらえるように」というクライアントの要望および時節を踏まえて作った20CM2本をご紹介。(商品は冬の定番「カイロ」、商品名は「オンパックス」)

 
①「石焼芋」編

男の声:(石焼芋屋さんのスピーカーから流れる声の感じで)

カイロ、カイロ、カイロ~♪

 
カイロひとすじ108年、

マイコールのオンパックスはいかがですか?

あったまるよ~

冬の寒さと健康に、マイコールのカイロは、いかがですか?

 
オンパックス、オンパックス、オンパックス~♪

 
N:冬のポカポカ、カイロは「オンパックス」

 

②「選挙カー」編

ウグイス嬢:

オンパックス、オンパックス

マイコールのカイロ「オンパックス」です。

 
今日も皆様のカラダを温めるため、

オンパックスは、全力で頑張っております。

 
「国民の寒さ対策が第一」

創業108年マイコールのオンパックスに、

ぜひ温かい一票を!

 
N:選んでポカポカ、カイロは「オンパックス」

 
CM放送局はニッポン放送、TBSラジオ、文化放送。オンエア期間は1217日~118日(12月は「選挙カー」編、1月は「石焼芋」編を中心に、午前中に集中して流す予定)。

 

2012/12/05

『世界から猫が消えたなら』


3週間ほど前、池袋西武の「リブロ」で購入。何気に新刊コーナーの書棚を見ていたら、そのタイトルが目に入り“ムムッ?!”と思わず反射的に手を伸ばした本だ。(恐らく2か月前なら、こういうタイトルの本に食指が動くことはなかったはずだが……)

その著者の名は「川村元気」。『電車男』『悪人』『告白』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』などを製作した33歳の映画プロデューサーで、本書が処女作らしい。(映画のヒットメーカーにして小説家……また、瑞々しい才能の誕生!)

主人公は重度の脳腫瘍に侵され、医者に死を宣告された30歳の郵便配達員(猫と暮らす映画好きの男……私に「さあ、読め!」と言わんばかりの、どストライクな設定)。その男の前に突然、派手なアロハを着た明るい悪魔がやってきて「実は……明日あなたは死にます」と、天からの指令を伝える。さらに悪魔は、絶望する男に“寿命を延ばす唯一の方法がある”と告げ、意想外の取引を持ちかける。それは、1日の命を得るために「この世界からひとつだけ何かを消す」こと。
こうして男の周りから、携帯、映画、時間など“失って気づく大切なもの”が次々に消えていく。そして最後(7日目)に残った取引の対象は、キャベツと言う名の愛する猫……

という奇想天外でファンタジックなストーリーだが、帯にも「「泣けて泣けて仕方ない……この小説はまるで聖書じゃないか!」という映画監督・大根仁のコメントが紹介されているように、巧みなユーモア&軽妙な筆致に釣られて油断していると、不意に心を揺さぶられ涙腺の決壊を余儀なくされるのでご用心。

本を開く前は「感動的、人生哲学エンタテインメント」というキャッチフレーズを見て、「ホントかな?」と少し疑ったが、そのフレーズどおり、ネット社会で生きる私たちにライトな感覚で“身近に存在する大切なもの”を改めて思い起こさせてくれる切なく深い一冊。私も同じ屋根の下で生きる猫のことなどを想いつつ読ませてもらった。(ちなみに帯には、女優・中谷美紀の「読み終わった後、大切な人に逢いに行きたくなりました」という、ありがちなコメントも……まあ、どうでもいいけど)

以下、特に心に残った後半の数節をご紹介。(これから読む人には余計なお世話でしょうが)

《「人間と猫はもう1万年も一緒に生きてきたのよ。それでね、猫とずっと一緒にいると、人間が猫を飼っているわけじゃなくて、猫が人間のそばにいてくれてるだけなんだっていうことが、だんだん分かってくるのよ」かつて母さんが言っていた言葉を思い出す》
《そもそも死の概念があるのは人間だけだという。猫には、死に対する恐怖というものが存在しない。だから人間は、死への恐怖や悲しみを一方的に抱きつつ、猫を飼う。やがて猫は自分より先に死に、その死が途方もない悲しみをもたらすことが分かっているのに。そしてその悲しみは不可避なこととして、いつの日か必ず訪れると知っているのに。それでも人間は猫を飼うのだ。
しかしながら人間も、自分で自分の死を悲しむことはできない。死は自分の周りにしか存在しない。本質的には猫の死も人の死も同じなのだ。そう考えると、人間がなぜ猫を飼うのか分かってきた気がする。人間は自分が知りえない、自分の姿、自分の未来、そして自分の死を知るために猫と一緒にいるのではないか。母さんの言うとおりだ。猫が人間を必要としているのではない。人間が猫を必要としているのだ》

《「明日死ぬかもしれないと思う人間は、限られている時間を目いっぱい生きるんだ」かつて、そう言った人がいた。でもそれは嘘だと僕は思う。人は自分の死を自覚したときから、生きる希望と死への折り合いをゆるやかにつけていくだけなんだ。無数の些細な後悔や、叶えられなかった夢を思い出しながら。でも世界から何かを消す権利を得た僕は、その後悔こそが美しいと思える。それこそが僕が生きてきた証だからだ》