2012/03/06

シンボルスカの詩に想う春

今年2月1日、肺がんのため88歳でこの世を去ったポーランドの女性詩人・ヴィスワヴァ・シンボルスカ……1996年にノーベル文学賞を受賞した世界的に有名な詩人だが、私がその人の名を知ったのは去年の暮れ。池澤夏樹のエッセイの中で紹介されていた一編の詩に惹かれてのこと。

その詩は、愛する人の死後の春を迎えた詩人の心境を綴ったものだが、池澤氏のエッセイによって広く知られ、震災後の日本人の心にも強く訴えかけるものになった。

またやってきたからといって

春を恨んだりはしない

例年のように自分の義務を

果たしているからといって

春を責めたりはしない


わかっている

わたしがいくら悲しくても

そのせいで緑の萌えるのが止まったりはしないと  

(詩集『終わりと始まり』より。訳・沼野充義)

町を破壊しようが、家屋を押し流そうが、人を海に攫っていこうが、
自然に悪意などない。ただ人間の営為に無関心なだけだ。

もうすぐ、3.11……

また、私たちの存在の小ささと虚しさと愛しさを思い知る春が来る。

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