先日、東スポ紙上で「東京スポーツ映画大賞」が発表された。(審査委員長はビートたけし)
作品賞・監督賞は『冷たい熱帯魚』(園子温監督)がW受賞。主演男優賞・主演女優賞は該当者なし、助演男優賞に「でんでん」(冷たい熱帯魚)が選ばれた。
で、“一人勝ち”の『冷たい熱帯魚』……実際にあった猟奇殺人事件(埼玉愛犬家連続殺人事件)を題材にして作られただけあって、内容はかなりエログロ&バイオレンス(その辺が“東スポ大賞”らしい!?)。人間の欲と本性が淫らに渦巻く妖しい映画だが、何故か滑稽でエネルギッシュというコリアン・バイオレンス・ムービーに似た不思議な魅力&パワーが溢れている。
と言っても、基調は“エログロ”。血は飛ぶ、肉塊は転がる、そして役者はキレまくるで、「いや~、良かったよ~」と笑って人にオススメできるようなものではない。また、「家族の絆」をあざ笑うかのような救いも希望もないストーリーなので、身も心も弱っている時などは特に敬遠したい映画でもある。ただ“絆ブーム”に乗じて、陳腐な愛と感動を垂れ流している日本映画が多い中、この「不道徳エンターテインメント」が放つ強烈な毒とパワーは十分に刺激的で得がたいもの。その一点だけでも、私はW受賞に値する作品だと思う。まずは“東スポ”に拍手。そして、主演の二人「吹越満」と「でんでん」の素晴らしい演技に大拍手!(特に「でんでん」は、日本映画史上に残る“ワル”と言っても過言ではないほど、背筋が凍るような凄い悪役ぶりだった。芸人「でんでん」も面白かったが、役者「でんでん」は特上級かも)
※園子温監督作品なら『愛のむきだし』の方が、私は好み(R15指定だが“エログロ度”は低いし、かなり笑える)。女優・満島ひかり&怪女優・安藤サクラを発見した映画でもあり、印象深い。故にオススメはこちら!
2012/02/29
2012/02/24
旅キブン、夢ヘブン。
どこかから飛んでくる花粉も気になるけれど、
どこかへ飛んでいきたくなるような、ポカポカ陽気。
こんな日は修司さんに言われなくても、
「書を捨てよ、“旅”へ出よう」って気分になるよなあ。
(私の場合は「町」ではなく「旅」……)
我が「MAP」は何処に在りや。
で、陽水の『MAP』なんて聴いちゃうと、余計にね。
我が「MAP」は何処に在りや。
2012/02/21
最初の5分で、心、鷲づかみ。
先週末に観た映画『ドラゴン・タトゥーの女』(デヴィッド・フィンチャー監督)。
本編のデキもさることながら、そのオープニング映像が凄かった。
タイトルバックに流れた曲は、レッド・ツェッペリンの『移民の歌』(カレン・Oという歌手がカバー)……女性ボーカルの甲高い声の響きとともに流れ出す真っ黒い液体が、自在に変容しながらスクリーンを覆いつくしていく様は、正にフィンチャー流“ダーク&スタイリッシュ”。一気に緊張が走り、本編への高まる期待感で座り直したほどだった。(158分という長尺……ダレないかなあ、と若干危惧していたが、即、不安解消。エンディングまで心がザワつきっぱなしの“興奮度満点”作品でした)
で、この映画、ミステリー的な謎解きの面白味もさることながら(ただテンポが速すぎて、謎解きに付いていくのが少し大変……)、何が良かったかと言うと、とにかく主演の二人が素晴らしい! 特に、天才ハッカー「リスベット」を演じた女優ルーニー・マーラが、ゾクゾクするくらいカッコいい。
ミカエル役のダニエル・クレイグは『007/カジノロワイヤル』以来の“お気に入り”なのでその渋いキャラクターと高い演技力は予想できたが、この女優はまったく未知の存在(『ソーシャル・ネットワーク』に出ていたようだが、記憶に残っていない)。それだけに、驚きも大きかった。
私的には、このアウトロー・ヒロインを目撃するだけでも、劇場に行く価値がある。と言い切れるほど「ルーニー・マーラ」&タイトルバックが魅力的な一作……ぜひ、劇場で。(ラストシーンも、グッとくる!)
※但し、この映画はR15指定。当然ながら、凝視し難いシーンも多々あり、道徳観念の強い方や“初デート”のカップルなどには不向きかも……ご注意の程。
※この映画を観た後、スウェーデン版『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』をレンタルDVDで観たが、そちらはストーリー展開重視、リメイク版は主演の二人の関係性重視……といった感じ(謎解き部分はスウェーデン版の方が分かりやすい)。もちろん私は、役者込みでリメイク版の方が好きだが、スウェーデン版も十分に楽しめる。
2012/02/17
最近の私的TVドラマ事情
2月に入って仕事が少し忙しくなった。しかも、久しぶりに直クライアントの案件。当然、ギャンブル性の高い企画・価格コンペのように労力が無に帰すこともなく、企画提案→即受注&進行というスムーズな流れ。月末にはメインビジュアルの撮影も決まった。このご時勢に有難い話である。
さて、久しぶりにTVドラマの件。
NHKの朝ドラ『カーネーション』に関しては、今さら言うまでもないが、ますます快調、文句なし。怒鳴る・どつく・突っ走る……朝ドラ史上最強のヒロイン「小原糸子(尾野真千子)」の惚れ惚れするような“男前”ぶりにエールを送りながら、変わりなく楽しませてもらっている。
最近は、ストーリーの主軸が糸子から3姉妹に移ってきた感じだが、中だるみも違和もなく心地よいスピード感で視聴者を牽引する「渡辺あや」の脚本は、素晴らしい!の一言(山田太一や岡田恵和のドラマに心が動かなくなった今、彼女に期待するところ大。「火の魚」も良かった)。さらに個性的な脇役陣を適所に配したキャスティングも見事で、糸子と北村“ほっしゃん。”の腐れ縁&アドリブ込みの掛け合いは今や不可欠の隠し味。直子役の女優もコシノジュンコさんばりの迫力&存在感でアートスピリット全開(でも今朝はちょっと切なかった。売れるまでの道のりは厳しいね~)……ただ一つの不安は、もうすぐ「糸子」が尾野真千子から夏木マリに変わること。う~ん、大丈夫だろうか? 尾野真千子が強烈すぎて全然イメージが湧かない。
民放の一押しはフジテレビ系、火曜夜9時『ストロベリーナイト』。
とにかく画面に緊張感があるし、ストーリー展開も無駄なくシャープ。犯罪者の心理を執拗に探る捜査の成り行きもさることながら、警察組織内の人間臭い対立&女性上司を慕う刑事たちの個性と結束を楽しめるのがいい。まさに時代に適った上質なヒューマン・サスペンスといったところ(私的には『相棒』と双璧の刑事モノ)……もちろん、登場人物のキャラクターも魅力的。特に、ノンキャリアで成り上がった捜査一課の女性刑事・姫川玲子を熱演している主演の竹内結子は、こんなにイイ女優だったっけ?!と思うほどのハマリ役。過去のトラウマ&女性を見下す組織体質と闘いながら、「このヤマ、絶対にとるわよ!」の決め台詞で“姫川班”を率いる姿は、とても颯爽としていてカッコいい。(西島秀俊、武田鉄也ほか、脇役陣もグー!)
しかし、「姫川玲子」といい、「小原糸子」といい、少し前の「三田灯(家政婦のミタ)」といい、ヒットするドラマの主役はすべて“仕事のできる男前の女性”。背負うものの重さを周りに感じさせることなくバリバリ働き、人に頼らず甘えず、家族や部下を助けながら堂々と自分の道を歩いていく……こんな女性像・上司像が現実味を帯びる時代、こと日本のTVドラマに限って言えば、当面主役の立場で“強い男”の出る幕はないのかもしれない。
2012/02/12
ちょっとウンザリな言葉
それは「維新」。
「大阪維新の会」を発端に、保守系の政治家たちがバカの一つ覚えのように、維新、維新と叫んでいる。まるで、自分を幕末の志士になぞらえているかのように……一体どういうセンスをしているのだろう。民主党のお陰で「変革」や「改革」という言葉を信じなくなった国民が、「維新」と言えば目を向けるとでも思っているのだろうか。それとも単に橋下人気に擦り寄ろうとしているだけなのか。白々しさを通り越して情けなく思う。
大体、今どき「維新、維新」って、右翼の街宣車じゃあるまいし……私などは「維新」と聞くと、政治変革の“新しい風”を感じるどころか、時代が逆行していくような気がしてただ胸糞が悪くなるだけ。
で、少し話は変わるが、20数年前(若貴時代の頃)に「維新力」という力士がいた。幕内に上がることなく引退したためその取り口は記憶に無いが、四股名だけは字面的に滋養強壮ドリンクのようだなあ……と感じて妙に印象に残っている(なのに愛称は爽やかで“平成の牛若丸”)。
その「維新力」が引退して吉祥寺に店(バー)を出していた。私も偶然10数年前に飲み会の流れで立ち寄ったことがあったが、その店名も驚くほどベタで「維新力の店」。かつての愛称どおり店主・維新力は甘いマスクのイケメンで、店の雰囲気にもメニューにも“ギラギラ感”や“こってり感”はなかったが、それでも四股名絡みの妄想は消えずに残ったまま。
その「維新力」が引退して吉祥寺に店(バー)を出していた。私も偶然10数年前に飲み会の流れで立ち寄ったことがあったが、その店名も驚くほどベタで「維新力の店」。かつての愛称どおり店主・維新力は甘いマスクのイケメンで、店の雰囲気にもメニューにも“ギラギラ感”や“こってり感”はなかったが、それでも四股名絡みの妄想は消えずに残ったまま。
というわけで「維新力」には申し訳ないが、「維新」という言葉を聞くと、維新→維新力→強壮ドリンクという勝手な連想が働き、只でさえ胡散臭い政治家の我欲に満ちた血が騒ぎ出すような、いかがわしい空気を感じて余計にウンザリしてしまうのである。
さらに「維新」つながりで、橋下氏が開く政治塾が「維新政治塾」、維新の会が作り上げようとしている選挙公約が「船中八策」……彼の行動力・発信力には一目置いている私だが、坂本龍馬が起草した新国家体制の基本方針の名称を勝手にパクって政治的に利用するというのは余りにも無思慮、というか日本人の精神的な宝とも言える歴史的人物に対して甚だ失礼かつ傲慢な行為ではないだろうか。と不信感ばかりが募る。(世の龍馬ファンは何故抗議の声を上げないのでしょう?)
いくら龍馬が好きで、その行動力と精神を己の範にしたいという気持ちの表れにしろ、「日本を変える」という高い志を持つ人間ならば、人の言葉に頼らず、人の権威に縋らず、自分自身の言葉で堂々と時代に向き合い、人々の胸に発信するべきではないだろうか。
代表作『竜馬がゆく』を通じて、溌剌として颯爽とした美しい日本人の姿を私たちに知らしめてくれた司馬遼太郎さんも、ご存命ならばきっと厳しい苦言を呈したに違いない。
2012/02/06
イーストウッドの愛国心
80歳を超えてなお映画界をリードする巨匠クリント・イーストウッドの新作は、FBI初代長官ジョン・エドガー・フーバーの半生をレオナルド・ディカプリオとの初タッグで描く『J・エドガー』。アメリカの正義を偏執的に信じた権力者の功罪の物語だ。
その“功”は、指紋採取、筆跡鑑定、捜査情報のデータ化など科学的捜査手法の導入によって、現在の犯罪捜査の基礎を築いたこと。そして“罪”は、圧倒的な権力と情報収集力(盗聴など)で政治家・活動家の言動を監視、“秘密ファイル”の存在をちらつかせながら、ジョン・F・ケネディを始め時の大統領を従えるまでのアンタッチャブルな存在にのし上がったこと(賭博好きでマフィアとの関係も取りざたされた)。
だが、この映画はそれらの“功罪”を仔細に取り上げ、その評価を観客に委ねるような実録劇ではない。これまでの作品同様、イーストウッドが描くのは人間そのもの。常に自分を優位に置き、他者を抑圧する強引な正義を断行する権力者の心の闇に迫りながら、リンドバーグ愛児誘拐事件、レッド・パージなど20世紀の象徴的な出来事を通じて、アメリカ近代史の光と影を巧みに浮かび上がらせてゆく……
というわけで、観ているコチラの視点は、一人の複雑怪奇な人物の興味深い人間ドラマから、いつの間にかアメリカという国の“正義”とは何か? という現在的な疑問に向けられていくようだった。恐らく、イーストウッドの鋭い眼差しの先では、現代アメリカの強迫観念にも似た危うい政治状況が、強烈なコンプレックスと孤独を抱える“正義と愛国の権力者”の姿と重なり合って見えているのだろう。
そういう意味で『J・エドガー』は、イーストウッドの深い人間洞察力と同時に、正義を標榜する国家に対し警鐘を鳴らし続ける“愛国者”としての視線を強く感じさせる映画でもある。もちろんその愛国心は、イラク戦争へ突き進んだアメリカの“似非正義”を一貫して許さない姿勢に象徴されるように、頭の壊れた政治家が強いる愛国心や過剰な国家礼讃とは全く異質なもの。個人の自由と平等を何よりも重んじ、自らの恥部をも暴き堂々と批判しうる精神を尊ぶ風土への熱い思いに他ならない。
私はいかなる国の正義も信じない人間だが、ささやかな愛国心を持つ一人の映画ファンとして、敬愛するイーストウッドの精神の行き先と、彼が描く「愛と正義」の人間ドラマをこれからも見つめ続けたいと思う。
2012/02/01
あ~、がっかり……本田圭祐 移籍ならず
「本田圭祐 セリエAの強豪・ラツィオへ!」……待ちわびた嬉しいニュースが眠い目を覚ましてくれるはずだった今朝、私は思わず溜息を漏らして目を閉じてしまった。
ロシアリーグ・CSKAモスクワから「ラツィオ」への移籍が、日本・イタリア双方のメディアで確実視されていた本田圭祐だが、どうやら移籍金をめぐるクラブ間の交渉が決裂、CSKA残留が決定したらしい。
CSKAと本田の契約は来年の夏まで。その期間内の移籍となれば違約金=移籍金の支払いが譲渡を望む側に生じるのは仕方ないが、交渉開始時CSKAがラツィオに要求した額は16億円……CSKAが本田を獲得するためにオランダリーグ・VVVフェンロに支払った移籍金が10億円だから、60%アップ。その当時より本田の市場価値が上がったとはいえ、ヨーロッパが不況に喘ぐ中で、かなり強引な金額ではないだろうか? それでも本田を熱望するラツィオは最初の提示額12億から15億まで譲歩し再交渉(今のイタリアでは破格の金額!)、金額面では一端合意に達したものの、今度は“一括払い”を頑なに要求するCSKAの姿勢にラツィオ側が完全にキレて交渉決裂となった(らしい)……あ~、何ということか。
これで、長友と本田が強豪チームの主軸としてセリエAの舞台で対戦するという、夢のような光景を見ることが叶わなくなってしまった。もう、残念!と言うほかない。(ラツィオ所属のドイツ代表・クローゼと本田の迫力あるワンツーも見たかった!)
私自身、決してロシアリーグのレベルが低いとは思わないし、CSKAも常に欧州CLにコマを進める強豪チームの一つであることは認める。だがセリエAと比べれば世界的な認知度・注目度は雲泥の差。ビッグクラブ移籍を目指す本田にとって、どちらに所属する方が良いかは自明のことだと思う。さらに、右膝の負傷が癒えたばかりの本田にとって、脚に負担のかかる人工芝でのプレーを余儀なくされるロシアリーグは、かなりの不安材料……また再発でもしたら、平和と友好を希求するサッカーファンの私とて、日本サッカー界の至宝に高額移籍金という足かせをはめたCSKA&ロシアリーグに対する“悪感情”を抑えることができないかもしれない。
そういえば、本田の同僚で長年移籍を望んできたFWワグネル・ラヴが、つい最近ようやくCSKAからブラジルリーグ・フラメンゴへの移籍が決定。その号泣の記者会見を見て、まるでサッカー版“シベリア抑留者の帰還”のようではないかと思ったが、有能なサッカー選手の未来を拘束する高額移籍金、その譲歩を拒むCSKAの強情な姿勢……なんとかならないものだろうか。
まあ、本田に関して言えば、膝さえ無事ならラツィオ以上のビッグクラブへの移籍も可能だろうし(今夏の移籍市場で再注目したい)、間違ってもロシアリーグで終わるようなことはないと思うが、今後、本田や香川のようにビッグクラブへの移籍を目指す才能豊かなサッカー選手は、いくら好条件のオファーがあってもロシアのクラブへの移籍は避けた方が賢明のように思う。
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