ちょうど一週間前の午後5時半過ぎ、私は有楽町の駅前で道行く大勢の人々とともに「なでしこジャパンVS北朝鮮戦」を街頭テレビで見ていた。映画『ゴーストライター』を観て直ぐのことである。
こうして2011年9月8日は、珠玉の映画と熾烈なサッカーの記憶が重なる記念すべき日となった……くだらない人生を彩るには十分すぎる一日ではないだろうか。
と、少しハードボイルド小説風(?)な前置きをしたところで、本題へ。
あの『戦場のピアニスト』から9年……(月日が経つのは早いなあ)。ロマン・ポランスキーの新作は、ヒッチコックの作品とチャンドラーやロス・マクドナルドの探偵小説を足して割ったような雰囲気を感じる社会派サスペンスだ。
とは言え、ストーリー的にはさほど目新しさを感じない政治陰謀モノ(背景はイラク戦争)、ハリウッド的サスペンスの強い刺激や興奮とも無縁だ(派手なアクション・シーンは皆無)。しかも、突っ込みどころに事欠かず、謎解きにも格別の意外性はない……それなのに、あ~、
それなのに、観る者を捉えて離さない映像の魅力・魔力!
静かにじっくりと「不安」を呼び起こすシリアスな空気感、感情を揺さぶりながらスリルへ巻き込む巧妙な「舞台装置」、冒頭からラストまで一切のムダを感じさせない完璧なショット、そして、自らの心象風景を映すように全編を覆う深い寂寥感……
静かにじっくりと「不安」を呼び起こすシリアスな空気感、感情を揺さぶりながらスリルへ巻き込む巧妙な「舞台装置」、冒頭からラストまで一切のムダを感じさせない完璧なショット、そして、自らの心象風景を映すように全編を覆う深い寂寥感……
すべては御年80歳を迎えようとする巨匠の成せる業。
その枯れることのない美意識が醸し出す世界に、どっぷり浸る充足の2時間8分……多くの人に味わっていただきたい至福の時間でありました。
主人公の「ゴースト」を演じるユアン・マクレガーも◎
主人公の「ゴースト」を演じるユアン・マクレガーも◎
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