2019/02/25

最近気になったニュース②




先月末に亡くなった作家・橋本治の新刊『思いつきで世界は進む』(ちくま新書)を読んでいたら、「簡単に分からないために」と題された一文に突き当たった。書かれたのは201512月……

《安倍政権の最大の問題点は、「政治は、信任を受けた我々がやる。だから、よそから余分なことを言うな」という態度を貫いてしまっていることにあると思う。だから「自分達」以外の声を聞かない。国会に提出する法案が杜撰で相互に矛盾する内容を含んでいても、担当大臣の説明に食い違いがあって不明瞭でも、「これを執行するのは私達なのだから、私達に任せて余分な疑問を持つ必要はない」として突っぱねてしまう。安全保障関連法案の前の、特定秘密保護法の時からそうだった。
「説明不足だ」と言われても、「説明は尽くした」で逃げてしまう。「いずれ国民は理解してくれる」と平気で公言する。国民は何を理解するのだろうか?穴だらけで相互に矛盾するような内容を含んだ法案が丸ごと理解出来るようになるんだろうか?「きちんと説明出来ないような辻褄の合わない法案を提出して平気でいられる大臣のあり方」は、どのような形で容認され、理解出来るのだろうか?》
《「戦争法案だから反対だ」というスローガンは分かりやすい。でもその分かりやすさは、「日本の安全保障をどうするのか?」という問題をたやすく吹っ飛ばしてしまう。反対すべきは、その法案の一歩も二歩も先を読んだ「戦争法案だから」ではなくて、「我々のやることだから余分なことを言わずに受け入れろ」という政府の態度に対してあるべきはずなのに、「戦争法案反対」の声は、そこを素通りする。
「その説明は説明になっていない。説明ではない。ただの押し付けだ」ということが、重大なる徳目違反を指摘するものだという理解がなくなってしまっているから、「余分な口出しをするな」という態度が、国会という「審議の場」で通用してしまう。言論の重要性を無視して、それでも平和でにぎやかで、金儲けだけが第一のこの国をどうするのかということなんかは、簡単に分かるはずがない。とりあえず「簡単に分かる」というイージーな手は捨てるべきだ。》

と、彼が記してから3年以上の時が経ったわけだが、「説明できない・説明するつもりがない」「質問に答えない・質問に答える気がない」相変わらずの安倍政権……(その内閣の支持率を支えている国民のバカさ加減も、NHKをはじめ政権におもねるメディアの状況も相変わらず。不正・隠蔽・改ざんを重ねる政権に厳しい追及の目を向けるどころか、政権批判をかわすマジックワードのように「野党がだらしないから」「他の内閣よりはまし」という言葉を垂れ流すだけ)

「魚は頭から腐る」とはよく言ったもので、「バイトテロ」「あおり運転」「児童虐待死」「2000万円の口利き(片山さつきの公設秘書)」「国会議員による暴行・盗撮疑惑」等々……連日、テレビから流れてくるのは「一体、日本列島の住人たちはどうしちゃったんだろう?」と、酷過ぎて声もでないようなニュースばかりだが、いちいち腹を立てていては自分の身が持たない。ともかく、日常的に気分が悪くならない程度にモロモロ目をそらさずに考えていきたいもの。

というわけで「最近気になったニュース」その一。
「韓国VS日本」
韓国国会の文喜相(ムン・ヒサン)議長がアメリカメディアから従軍慰安婦問題に関してインタビューを受けた際に「日本を代表する首相かあるいは、私としては間もなく退位される天皇が望ましいと思う。その方は戦争犯罪の主犯の息子ではないか。そのような方が一度おばあさんの手を握り、本当に申し訳なかったと言えば、すっかり解消されるだろう」と語ったことに、政府もメディアも猛反発。街頭インタビューでは「日韓断交」を言い出す人まで現れ、日韓関係はにっちもさっちもいかない様相……

先日(16日)、高校の部活仲間との飲み会があったが、その席でもこの件が話題になり、友人の一人は「アレは許せない」と怒り心頭……で、どの部分が特に許せないのかというと、“(今上天皇は)戦争犯罪の主犯の息子”と迂闊に発言しちゃった点にあるようだ。
それに対して「こんなに関係が冷え切っている時に、日本の憲法も知らずに天皇に謝罪を求める国会議長も相当アホだと思うけど、そこは(戦争犯罪の主犯の息子)、別に間違ってないんじゃないの?だって、侵略された側から見れば(昭和天皇は)その戦争の最高責任者だったわけで。ただ、それを今わざわざ言わなくても…とは思うけど」と、友人を宥めたが、イマイチ納得いかない様子。まあ、それだけ今上天皇が「平和主義者」として、彼をはじめ多くの国民に慕われ、崇められているという証かもしれないが、それなら尚更、「断交」などという怒りにまかせた行動や発言は慎むべき。(“怒り”に便乗した「ヘイトデモ」などは論外)。
「徴用工」「竹島」「従軍慰安婦」「歴史認識」など、国同士がぶつかる問題は多々あるが、個人的にはこれ以上の「民族意識」のぶつかり合いだけは勘弁してほしいと思う。(もうすぐ「三・一独立運動」記念日……安倍政権に気配りするメディアが、植民地支配など過去を正当化するような様々な動きにへつらって嫌韓を煽らなきゃいいけど…)

続いて、その二。
「正しい叱られ方?」
「チコちゃんに叱られる!」の大ヒットに浮かれて……というわけでもないだろうが、先週の火曜(19日)、NHKの「おはよう日本」で、「正しい叱られ方」を教える大正大学の取り組みが、チコちゃん的なユーモアも批評性もなく“真面目に(かつ有意義なことをやっているかのように)”紹介されていて、口あんぐり。(そのセミナーで「叱られ方」を学んでいるのは春に就職を控えた学生たち…)

そもそも「正しい叱られ方」って、「叱る側が正しい」という前提に立たなければ成り立たない話。「パワハラ」「ブラック企業」が問題視されるこのご時世、「叱られ方」などという“支配される態度(というか奴隷根性)”を教え込むような大学の姿勢こそ問題じゃないの? それを疑問視せずに「打たれ弱さ(の克服)」とか「叱られることへの“免疫”(をつける)」とか、なんで「叱られる方が悪い」的な方向にもっていくわけ?いよいよ地に堕ちたなNHK……と思っていたら、案の定、番組終了後に「時間の無駄使いにも程がありすぎて日本の終末さえ感じる」「ブラック企業適応講習」「パワハラを正当化するための表面上の『打たれ強い』人材の育成か…」等々、私と同じような感想を抱いた視聴者からのクレームが殺到したらしく、「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と、ちょっとだけ溜飲を下げた気分に。

以上、他にも色々「気になったこと」はあるが、この項は終了(正直、少し疲れた)。次回は溜まりにたまった「映画」の話でも…。

※「沖縄県民投票」の結果が出た。「辺野古新基地建設反対72%」という数字も大きな意味を持つが、それ以上に、県民投票への参加を訴えてハンストを行った元山さんをはじめ若い世代が行動を起こして政治を動かしたということが、明日に繋がる素晴らしい成果のように思う。まずは、沖縄の人たちに敬意を込めてエールを送りたい。

 

 

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