※「ケンドリック・ラマー」はアメリカの人気ラッパー。「DAMN.」は、ラマーのアルバム・タイトルで「クソがっ!」という意味のスラングとのこと。
もともと保守的で過度な忖度体質。時の政治権力を批判することなどご法度中のご法度の広告業界で、政治的なメッセージ性の強い広告を仕掛けること自体が大きなリスクを伴う“冒険”であり、世間の反応を含めてとても勇気のいること。
その一点だけでも十分、尊敬に値するが、現在の日本の“クソさ加減”の象徴とも言える政治問題に、これほど堂々と素晴らしいアイデアでアプローチしながら、広告主体である「ケンドリック・ラマー」の存在感を高めそのパーソナリティを明確に伝えきったクリエイティブの力に、業界の隅っこで広告制作に携わる一人として「お見事!超クールじゃん!」と、只々感服するのみ。
本来のジャーナリズムがその役割を果たしていない今、このポスターが日本における「ブランド・ジャーナリズム」の進化のエポックとなることを期待するとともに、「DAMN.」を手掛けた若い力、自身もラッパーだという24歳の広告プランナーに心から敬意を表したい。
さて、前回から引き続いて「映画短評」……
●『女と男の観覧車』(監督:ウディ・アレン/2017年、アメリカ、101分)
年1本のアレン映画、今回も冒頭から舞台劇のように“よくしゃべる!”。しかも心にグサッとくるような言葉の応酬。
舞台は1950年代、ニューヨークにある遊園地「コニーアイランド」。ひと夏の恋に溺れていく中年女性の姿を描いた作品(一言で言えば、苦味たっぷりのドタバタ恋愛劇)……劇作家に憧れる若い男に入れあげ、見果てぬ夢と狂おしい嫉妬の狭間でもがく“頭痛持ち”の主人公ジニーをケイト・ウィンスレットが見事に演じている。
というわけで、コニーアイランドの夕日の静かな輝きにそこはかとない黄昏感が漂う、ちょっと悲しく、そこそこ痛い大人の物語。相変わらずアイロニカルで幸薄い展開の“アレン作品”だが、私的には音楽と美術の良さを加えて“星4つ”といったところ。努々ぬるいハッピーエンドなど期待するべからず。(7月12日、「としまえんユナイテッドシネマ」にて鑑賞)
●『選挙』(監督:想田和宏/2006年、日本・アメリカ、120分)
「東大卒」という肩書だけで、明確な政策もなければ、その土地に思い入れも何もない政治の素人が、いわゆる落下傘候補として自民党の推薦を受け、川崎市宮前区の市議会議員補欠選挙で当選を果たすまでの様を追った「観察映画」。
その観察カメラが徐々に浮き彫りにしていくのは、何と戦っているのか、誰に向かって叫んでいるのかも分からないまま“地盤・看板”という根深い政治システムに操られ、地元権力者・有力支援者の子飼いのように政党の思惑の中に飲みこまれていく立候補者・山ちゃん(山内和彦氏)の姿……もう可哀想やら、バカらしいやら、アホらしいやら(もちろん、“バカらしい、アホらしい”のは、日本のというか、自民党の選挙運動の実態!)なのだが、その展開が思いのほかスリリングかつ滑稽で、実に面白かった。
以上。暑い日は家で映画が一番!(しかも、ずっと観たかった映画がテレビで見られる!)。ドキュメンタリーでありながら、極上の「ブラックコメディ」を味あわせてくれた想田監督と、この酷暑の時期に特集を組んでくれた日本映画チャンネルに感謝。(7月某日、録画鑑賞)
※熱風で顔が歪むほどの暑さ! 今日、東京・青梅では40.8度を記録したとか……
皆さん!「熱中症」には、くれぐれもご用心の程。
皆さん!「熱中症」には、くれぐれもご用心の程。
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