2018/07/18

吉祥寺で『港町』&映画短評②




この暑さの中、ほぼ3年ぶりに吉祥寺まで出かけたが、その甲斐あり! 

ココマルシアターで上映中のドキュメンタリー映画『港町』(監督の想田和宏氏は「観察映画」と呼んでいますが)、本当に素晴らしかった。島も、海も、猫も、そしてそこで暮らす人々の姿も、その単純な営みも。愛おしくなるほどに素晴らしかった。

生きて、死ぬ。死んで、生きる。……フライヤーに記されたコピーが、ゆっくりと静かに胸に刻まれる珠玉の一本。ぜひ、どこかのシアターで!

というわけで、引き続いて映画の話……

『留学生チュア・スイ・リン』(監督:土本典昭/1965年、51分/16mm
母国・英領マラヤ(現マレーシア連邦)の未来を憂い、日本で暮らすアジアの仲間と共に「イギリスの特殊権益が続く限り本当の独立はない」として抗議の声をあげたことで、文部省から国費留学生としての身分を剥奪され、大学(千葉大)からも除籍処分を受けた留学生チュア・スイ・リン君と、復学を求める彼の闘いを支援する学生たちの姿を追ったドキュメンタリー。(620日、ポレポレ東中野にて鑑賞)

一言で言えば、「日本」という国の冷たさ(&情けなさ)がよく分かる映画ということ。(現在的に問題となっている、東京入管での難民虐待に通じる冷酷さ)
とりわけ当時の千葉大の学長をはじめとする大学上層部の人間たちの陰湿で人を見下した態度は、いまの政権中枢にいる政治家たちと同質のもので、観ているコチラも“怒り心頭”支援する学生たちと一緒に闘っている気分に……
しかし最後は、多くの学生たちの支援を受けた彼の闘いが“半分、勝利”。国費ではなく自費による復学が認められて仲間たちと喜びを分かち合うチュア・スイ・リン君の笑顔にホッと一息。多少“怒り”は残りつつも、悪くない気分でポレポレを後にした。(途中、中国人留学生の音頭により大合唱となるインターナショナルが、何故かとても気持ち良く、新鮮に感じられた)

で、映画の後の帰り道。改めて疑問に思ったのは「(今なお外国人に対して非情な)こんな国で、オリンピックなど開催していいものだろうか?」ということ。しかも酷暑の最中の東京で!?……ボランティアもアスリートも熱中症で倒れる危険性が高いのに、一体どんな「おもてなし」だよ!と、またもや怒りが再燃。

『パンク侍、斬られて候』(監督:石井岳龍/2018年・東映、131分)
原作は町田康(の異色時代小説)、脚本は宮藤官九郎、そして監督が「狂い咲きサンダーロード」の石井岳龍(「聰亙」から「岳龍」に改名したようだ)……当然、凡庸な映画になるはずがない。
で、開始1分、いきなり原作者・町田康が主演の綾野剛にほとんど意味なく斬られる。これはなんの予兆か?と、のっけから“物語崩壊”の不穏な雰囲気が漂うが、そもそも宣伝ポスターのキャッチコピーが「宇宙が砕けますよ」だったではないか。ならば、この程度の不可解さにビビらず、変に構えず、その砕け方を見せてもらおう。存分に楽しませてもらおう。という“謙虚”かつ前向きな姿勢が功を奏し、(多少の中弛みはあったものの)観終った後は気分爽快。この理不尽な世界を覆うすべての既成概念を個人の意思で破壊しようという“パンク”かつアナーキーな思いも、多少は感受しえた気がする。(73日、Tジョイ大泉にて鑑賞)

 

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