2018/06/27

20日分のメモ③(W杯開幕、『万引き家族』など)




614日(木)
ロシアW杯開幕。

期間中も何度か、遠くボスニア・ヘルツェゴビナから送られてくる(であろう)メッセージ……日本代表と日本のサッカーファンに対するオシムさんの言葉を心に留めながら、715日までの1ヶ月間、4年に一度のサッカーの祭典を存分に楽しみたいと思う。(以下、Number Webから抜粋した元日本代表監督イビチャ・オシム氏の言葉)

《恐らくはワールドカップが、何か素晴らしいものをもたらしてくれる。国同士の交わり、政治体制を越えた交わりがワールドカップだ。最高のサッカーとそれを実践する国を求めている。そして静かな生活を。あらゆる戦争の可能性、アメリカと北朝鮮の間の緊張感も、サッカーが少しは緩和できるかもしれない……。
自分たちが何を求めているかをしっかりと認識すべきだ。人生において、ただ結果を求めているのか、それとももっと別のものなのか。君たちはサッカーに何を求めるのか? その点で日本はちょっと何かに取り憑かれているように見える》

《忘れてならないのは、問題を問われているのはその国のサッカー文化であるということだ。どこに原点があって、どこへ行こうとしているのか――そして誰のためにどんなプレーをするのか。
この世界には様々な問題が存在するが、サッカーの問題は、そういう分かりにくい問題ではない。北朝鮮やイラク、イラン……もう十分だろう。もっとサッカーの話、ポジティブな話を皆でした方がいい。
あなた方日本人は旅が好きだろう? ロシアを旅するのは、それだけですでに何か得るものがある。日本人の多くが、何か大事なものをロシアから得られるはずだ。旅好きはそれだけでポジティブなのだから。
ヨーロッパはすでに知っているわけだから、今度はロシアの人々と親交を深め、彼らの人柄やメンタリティー、国を理解する。どんな文化がそこにあるのか、それを知るいい機会ではないか》

615日(金)
昼は『万引き家族』、夜は『LET IT BE』。

血縁に因らない社会的弱者の共同体としての「家族(の絆)」をテーマに、経済大国・日本の首都「東京」の片隅に横たわる“知られざる現実”(万引き、DV、ネグレクト、ワーキングプア、障害者の風俗通い、売春でお金を稼ぐ高校生、少なすぎる年金で暮らす高齢者等々)を描き出し、カンヌでパルムドールを受賞した映画『万引き家族』。

その「社会性」と世界観、そして映画の出来を思えば、スリランカの内戦とフランスの移民問題を描いた『ディーパンの闘い』、イギリスの地方都市の貧困をテーマにした『わたしは、ダニエル・ブレイク』など、年々「社会派作品」が高い評価を受ける傾向が強くなっている世界的映画祭での最高賞受賞は、快挙であってもそれほど驚かされることでもない。(先進国、途上国に関わらず、それだけ世界が様々かつ共通の問題を抱えてのっぴきならない状況になっていることの証左でもあるし…)

が、自国の歴史的事実や抱え続けている問題と客観的に向き合うことを避け続けているこの国の中で、一人の高潔な映画監督の「内部告発」によって「見えなかった人々(否、見ようとしていなかった人々)」の姿が可視化され、その受賞を契機に“多くの国々が羨望する平和で豊かな国・日本”の貧困と差別と暴力の現実(つまり多くの国々と同じ現実)が世界中に知れ渡ることになったのは、お互いが抱える問題を認識・共有するという意味でパルムドールそのものよりはるかに重く意義深いことだと思う。(もちろん、作品自体が素晴らしいのは言うまでもない。特に、見えない花火を「家族」揃って縁側から見上げるシーンが、とても温かで美しく、いつまでも心に残るものだった)

「権力とは距離を保つ」と言って、文科相の祝意を辞退したことと併せて、是枝監督に心から拍手を送りたい。リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、樹木希林、そして子役の二人……素晴らしすぎる俳優陣にも大拍手。(加えて一言。安藤サクラは天才だ!)

『万引き家族』の後は、別行動で「柚木沙弥郎の染色展」(日本民藝館)を観に行っていたツレと渋谷で合流。マークシティのスペインバルで軽く腹ごしらえして「ヒカリエ」の東急シアターオーブへ。ザ・ビートルズのトリビュートバンドの来日公演『LET IT BE』を鑑賞。

40曲近くの名曲で綴るライブショーは、衣裳やパフォーマンスなど時代を追って当時のビートルズを忠実に再現しており、そのリアルなステージは来場者を魅了し続けています。各時代の関連映像も交えた構成で、1960年代にタイムスリップしている様な気分をご体感頂けます》

という主催者側の触れ込みにのりチケットを獲ったのだが、ステージに4人が並んだ瞬間は「もろ、ニセモノじゃん……あのジョンは誰よ?」という感じで、「ホントに楽しめるのかね?」と先が危ぶまれたが、時が経つにつれ目も耳も慣れ(演奏も歌も寧ろ本物より上手いくらいだし)、ほとんど違和感なく1960年代のビートルズの世界へ。
後半は総立ち状態の中、けっこうノリノリでダル重い体を揺らしてしまった。

0 件のコメント:

コメントを投稿