2017/01/24

「坂井の鉄ちゃん」、忘るまじ。



ファンというほどではなくても、大好きな映画に出演していた俳優がこの世から消えてしまうのは、やはり淋しいことだ。
その追悼のつもりでシリーズ第1作のDVDを借りてきたが、こうして『仁義なき戦い』を観るのは、何度目になるのだろう……

昨日、松方弘樹が亡くなった。(享年74歳)

女性絡みのネタで週刊誌を何度も騒がせたり、どデカいマグロを釣り上げてニュースになったり、本業以外の話題が多すぎてイメージ的に損をしていた気もするが、昭和映画史に輝く名優の一人であることは疑いなし。彼を抜きに『仁義なき戦い』を語ることはできない。

特に印象的だったのはシリーズ1作目での山守組若頭・坂井鉄也役。そこで組長・山守義男(金子信雄)に放った一言は、“広島弁のシェイクスピア”と評されるほど研ぎ澄まされたセリフあふれる『仁義なき戦い』シリーズの中でも、(私的に)1、2を争う名セリフとして、いまも鮮明に記憶している。

それは、組内で厳禁の覚醒剤密売が行われていることに頭を痛めていた坂井鉄也(松方弘樹)が、没収した覚醒剤を横流しして懐を温めているのは山守組長だと気づいた瞬間、怒り心頭で山守をシメあげた時の言葉……金にせこく老獪な山守が「押さえたポン(ヒロポン)をそこらに積んどくいう訳にもいかんじゃないか。ほいじゃけん、わしゃわざわざ広島へ運んでよ、堅いルートを通じてサツの目に付かんように捌いとったんじゃ」と言い訳を並べた上に、「親のワシがやることにいちいち口出しするな! わしのやることが気に食わんなら、盃返して出て行け!」と開き直った瞬間に勢いよく飛び出した、胸のすくような啖呵だった。

親っさん、言うちょいたるがのう、あんたははじめからわしらが担いどる神輿じゃないの。組がここまでになるのに誰が血ぃ流しとんの。神輿が勝手に歩ける言うんなら、歩いてみいや、おう! 

監督・深作欣二が言うように、映画『仁義なき戦い』は≪古くてズルい大人達にしてやられる若者達のドラマ≫。結局“組運営の正常化”に心血を注いだ「坂井鉄也」も、造反の果てに山守の策略で殺されてしまうのだが、「鉄ちゃん、サイコー!」と私たちを唸らせた、ズルい権力者に対する気合いの一言は、時代が変わった今も、色褪せることなく長く『仁義』ファンの心に残り続けていくはず。

改めて映画の中の「坂井鉄也」と、俳優・松方弘樹に弔意を表したい。

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