2014/07/19

最近のあれこれ④TV



久しぶりにTVドラマの話でも……

年が明けてから今まで、朝ドラ以外のTVドラマとはご無沙汰していたが、このところ急に見る頻度が増してきた。(ドラマ以外では、NHK『ダーウィンが行く』、『プロフェッショナル』、BSプレミアム『世界ふれあい街歩き』、テレ東『YOUは何しに日本へ』、テレ朝『世界で発見!こんなところに日本人』などが定番……1ヶ月近く前の『プロフェッショナル』には、去年、とある仕事のロケ取材でお世話になった「胎児治療」のエキスパート、産科医・川鰭市郎さんが出演していた。お笑い番組は総じて見ないが、「寿司屋」ネタでハマった漫才コンビ「千鳥」だけは気になる)

きっかけは、先週終わったNHKの土曜ドラマ『55歳からのハローライフ』(614日スタート。5話連続)……村上龍の原作を読んだ時から、「これは、映画化(orドラマ化)されても良いモノになるだろうなあ」と、勝手にキャストを想像しながら楽しみにしていたが、そのキャスティングを含め、脚本・演出のデキも素晴らしく、期待以上の面白さ。原作と異なり、5話の登場人物・情景が何気に重なる場面&ストーリー構成も効果的で、主人公たちの同世代性がより印象的に伝わり、とても見応えがあった。
リリー・フランキー、風吹ジュン、戸田恵子、松尾スズキ、原田美枝子、小林薫、イッセー尾形などなど、原作の人物イメージを見事に表現している個性的な役者さんたちを観ていると、日本の映画界・演劇界も捨てたもんじゃないと思う。個人的に、これは、久々の大当たり!特に最終回の「空を飛ぶ夢をもう一度」は、原作にも増して胸に沁みた。(母校の先輩、イッセー尾形の演技にも拍手!)

続いて、74日スタートの金曜ドラマ『家族狩り』(TBS)。これも、原作は天童荒太の小説「家族狩り」だが(家族幻想に覆われた世界の闇を撃ちぬく不朽の名作)、内容が重すぎて(&ツラすぎて)、さすがにTVドラマ化されることはないだろう……と思っていたが、やってくれましたTBS! というわけで、TBSの番組紹介ページを覗いたら、原作者のコメントが載っていた。

《素晴らしい演技力を持たれているキャストの皆さんに出演していただき、信頼する植田プロデューサー(拙著『包帯クラブ』の映画化でもお世話になりました)をはじめとした熱意あふれるスタッフが集まってくださり、光栄に思っています。台本を拝見しましたが、ホームドラマとハードなサスペンスが共存している、近年まれな、すぐれたドラマになるに違いないと、ぞくぞくしました》

《自分が小説として表現したものが、映像化される際には、"違うものになるだろう"と覚悟しているのですが、今回はとても原作を大事にしてくれていると感じました。その上で、今という時代に向けて、また視聴者に向けて、新しい形でテーマを深く強く訴えようとしていることが伝わってきて、本当に嬉しく思いました。まったく違和感がないどころか、ドラマ『家族狩り』の一視聴者として、心から楽しみにしています》

天童荒太さんがこう言うのだから、最終回までドラマのデキは保証済み。演技派女優として不動の地位を固めつつある松雪泰子をはじめ、重いドラマの緩衝材的役割を担う(?)高校教師・巣藤凌介役の伊藤淳史、その演技に凄味さえ覚える浅田美代子(あの美代ちゃんが、こんなオバチャンに!)、目力強すぎ、存在感ありすぎの遠藤憲一など……視聴率目当てのアイドルタレント抜き、硬軟取り混ぜた絶妙なキャスティングも魅力的だ。
私的には、若干意志薄弱な「巣藤凌介」を演じる伊藤淳史が一押し。そのコミカルな風情&ナイーブな心情に肩入れしつつ、複雑な関係&感情が交差する迫真のサスペンスを「これは、かなりの傑作じゃないの?!」と思って見ている。

そして、79日スタートの『若者たち2014』……1966年(昭和41年)に放送され大ヒットした「若者たち」のリメイク、あの懐かしいテーマ曲を歌うのは森山直太郎。
キャストは、妻夫木聡、瑛太、満島ひかり、柄本佑、吉岡秀隆、蒼井優など、錚々たる若手演技派俳優陣を揃え、制作側の相当な気合を感じる。
『家族狩り』が、家族幻想の闇に鋭く迫るハードな人間ドラマだとすれば、こちらは家族という集団が持つエネルギーの在処を、圧倒的な情念で掘り起こして見せてくれる古典的な青春群像劇とでも言おうか。しょっぱなから、お互いの生活と心の内側への徹底した関与をベースに、昔の「若者たち」のような強烈かつ強引な熱気が画面一杯に溢れる。
で、妊娠、結婚、不倫、詐欺犯罪など、それぞれが抱える現在的な問題と心の葛藤が描かれ、毎度起こるプロレス的展開(兄弟げんか)……その目まぐるしい日常と凄まじい熱量のせいで、かなり暑苦しく付き合いにくさを感じる人もいるだろうが、嘘っぽさを排除したセリフの生身感と濃密なストーリーは、昨今あまり見られなかった良質ドラマの証。肝心の「若者たち」にウケるかどうかは疑問だが、それすら意に介さないような一途な脚本・演出の姿勢にも好感が持てる。
……案の定、2回目にして視聴率が初回の12.7%から7.8%に急降下したが、視聴率やスポンサーの意向に怯まず、日本の暑い夏をこの熱量のまま突っ走ってほしいものだ。もちろん私は、最後まで5兄弟の心の軌跡に付き合うつもり。

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