先週の日曜、映画に関してはあまり自己主張しない家人が、珍しく「あの映画が観たい」と言うので、用事ついでに渋谷まで足を延ばしBunkamura「ル・シネマ」へ。(昼メシは、道玄坂小路にある台湾料理の老舗「麗郷」で麻婆豆腐、小松菜炒め、炒飯、焼きそば)
映画のタイトルは『ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート』……《ニューヨーク五番街の超高級デパート「バーグドルフ・グッドマン」は100年以上に及ぶ伝統と革新性を併せ持つ老舗……ファッション界はもちろん、モデルやセレブなど訪れた全ての人をとりこにする同デパートの裏側にカメラが潜入する》という“デパートのドキュメンタリー”。販売のプロフェッショナルが「観たい!」と言うのも無理はない。と、私自身もある種のアメリカンドリームの象徴である貴重な文化財に触れるような気分で楽しみにしていた。
だが、上映開始から20分も経たないうちに期待は落胆へと一気に転換……アップテンポな音楽とスタイリッシュな映像で内容の希薄さをカモフラージュする「ありふれたファッション映画」といった風情に加え、登場人物たちが(アルマーニ、カール・ラガーフェルド、マーク・ジェイコブスなどの有名ファッション・デザイナーや名だたるセレブリティ及びデパート関係者)、狂信的なまでに「バーグドルフ・グッドマン」を褒めちぎるという、宗教かマルチ商法のプロモーションビデオのような展開に「何、コレ?」とすっかり興醒め。(ファッション大好き、ブランド大大好きという人は、それだけで楽しめるかもしれないけど)
それでも「魔法のデパート」と言うくらいだから、多少はその伝統と文化に関する深~い話でも聞けるのだろうと堪えて観続けていたが、関係者が語るエピソードの数々は、外商担当者が一日で40万ドル売り上げるとか、ジョンと暮らしていた頃のヨーコ・オノが一晩で250万ドル分の毛皮を買ったとか、販売員の年収が50万ドルだとか、お金に関わるぶっ飛んだ話ばかりで、洗練された文化の薫りなど微塵も感じさせてくれない。
結局これは、ビジネスの勝利者とセレブとして社会の頂点に立つ者だけがおだをあげている“資本主義万歳”みたいな話。どこにでもあるブランドストーリーをわざわざ1時間半の映画にしなくても、30分くらいにまとめて「カンブリア宮殿」のような番組でやればいいのに……と、ひたすら続く自画自賛に飽き飽きして隣の席を覗くと、あれほど「観たい!」と言っていた人もギリギリ眠気に耐えている様子。(いっそ寝ちゃった方が正解だったかも)
で、エンドロールが流れた途端にきっぱり席を立ち、劇場を出た所でのツレの第一声は「あ~、つまらなかった!」……
というわけで本作は、早くも今年の私的ワースト1に決定!です。(ドキュメンタリー映画の当たり年だったのに…)
それにしても、今日は寒いなあ。
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