諸々の仕事もようやく一段落。先週の木曜(12日)は久しぶりに旧友たちとの飲み会で新宿へ(恒例の中年男子会)。
で、いつも通り“飲食前・映画”……テアトル新宿で『KOTOKO』を観た。監督は鬼才・塚本晋也、主演はシンガーソングライターのCocco。若い女性を中心に映画ファンの熱い支持を集め、社会学者・宮台真司が「ここには確かな福音がある。涙なくして観ることができない」と絶賛した作品だ。
と言って、塚本作品にもCoccoの歌にも、あまり馴染みのない私が、宮台氏のように深く感情移入できるだろうか……と多少懐疑的だったのだが、あにはからんや、最初から最後までほぼ金縛り状態で画面に釘付け。スクリーンを通して胸に突き刺さってくる“痛み”に何度も息を呑んで見入ってしまった。
とにかく、Cocooの存在感が際立っている。
平和な日常に忍び寄る恐ろしい影(暴力、放射能、震災、戦争……)を全身で感じ取り、人も社会も二重に見える世界で生きる主人公・琴子。その世界で人を愛すること、愛する者を守ることの難しさに耐え切れず、恐怖と苦悶の中で精神のバランスを崩していく一児の母をCoccoは激しく、鋭く、柔らかく、見事に演じきっていた。特に、ラスト近く、生きる意志を天に告げるように、激しい雨に濡れながら歌い踊る姿は、その透明感のある声の響きと相俟って神々しい天女のよう……ベネチア国際映画祭・オリゾンティ部門(斬新さと先鋭性の作品を集めて競われる部門)に於いて、日本映画初の《グランプリ》を獲得したというのも、納得の作品だった。(「日本アカデミー賞」も、こういう映画を作品賞にノミネートできると全体の質も格も上がると思うんだけど……)
しかし、飲む前にえらい映画を観てしまった。気が置けない仲間の集まりとはいえ、今は誰とも話したくないし、困ったなあ……と思いつつ映画館を出たが、なぜかとても静かに見える新宿の街を歩いているうちに、今度は無性に人と話したくなった。腹も減ってきた。もちろん酒も飲みたくなった。
10分遅れで、いざ、『鼎』へ。そこには既に、酒を飲んで料理をパクついている友二人(男四人の集まりだったが、“あっ、忘れてた!”と一人ドタキャン)。当然、その夜も盛り上がり、多彩な話題と旨い酒&肴で腹いっぱいでありました。
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