2024/12/28

読書メモ③+近況


『太宰治との奇跡の4日間』(著者・櫻井秀勲/きずな出版)

現在93歳の著者が、14歳の時に湯治場で見知ったある男……それは「太宰」ではなかったか?という話。(14歳の少年が体験した戦時下らしい“秘話”を興味深げに聞く人物。確かに太宰っぽいなあ、と私も思った)

松本清張、三島由紀夫、川端康成との交流や、故・坂本龍一のお父上(坂本一亀)が『文藝』の辣腕編集長だった(「出版界の鬼才」と言われていたらしい)など、長く出版業界に身を置いていた人なればこその裏話もあり、“昭和文壇史余談”的に気軽に楽しめる一冊。


『ただ生きるアナキズム』(著者・森 元斎/青弓社)

こんなに元気で尖がった学者(長崎大学教員、専攻は哲学、思想史)がまだ日本にいたんだね~、と感心しつつ驚き、少し嬉しくさせられた本。《国家や資本主義が私たちの欲望をさまざまに制限する現代にあって、「ただ生きる」とはどういうことか。「ただ生きる」ために、私たちは何をすべきなのか》を、解きつつ問う…といった内容だが、とりわけ《地を這う精神「はだしのゲン」》と題された章が印象に残った。
《私たちはゲンである。むろん原爆の惨状を経験していない世代だとしても、私たちはゲンの生きざまに見習うべきである。少年漫画としての『はだしのゲン』は、子どもの成長劇、青年のロマンが描かれている。身体的な生育だけではなく、精神の涵養を私たちは見て取ることができる。その精神の涵養にうってつけの反骨精神が色濃く描き出される。思春期の成長にうってつけの素晴らしいマグナム・オパスなのだ。反対せずにどう生きろというのだろうか。それ以外に正しい答えなどどこにもない。放射性物質がまき散らされている現在にあって、そしていまだ終わりを告げることがないアメリカによる日本支配の現在にあって、反核以外の、そして反米以外の道筋など私たちに存在しないのではないか。放射能と放射脳がこの世界をつくる。民衆が天皇という最高責任者によって戦争を強いられたという、そして民衆が大量に(友軍・皇軍からさえも)虐殺されたという「頑固な事実(matter of fact)」(ホワイトヘッド)は、阿呆くさい(天皇は利用されただけなどという)「歴史事実」(笑)とは異なるからこそ、反天皇以外の、そして反政府以外の道筋など私たちには存在しないのではないか。「頑固な事実」がこの世界を作る。民衆がいかに愚劣であっても、私たちは民衆であり、そして「頑固な事実」を経験するのは民衆なのである。そして、その一人がゲンである。》

改めて読み直すと「こんなこと言っちゃって、大学での立場は大丈夫なの?(しかも国立の大学だし)」と、少し心配にもなるが。別に間違っていることを言っているわけでもないしね~……まあ、兎に角、そういう忖度無しの“熱さ”も含めて今後も注目したいアナキスト・森元斎。次作を楽しみに待ちたい。


『書いてはいけない 日本経済墜落の真相』(著者・森永卓郎/フォレスト出版)

末期の膵臓がんを患いながら、ジャニーズの性加害問題に端を発し、財務省の利権問題、そして日航機墜落事故の真相等、日本のタブーに切り込んだ渾身の一冊(本人曰く「これは私の遺書である」)。私的に「ザイム真理教」信者が減り、「森永真理教」信者が増えれば、日本も少しは良くなるのでは?……と思えた“希望の書”。強大な権力に立ち向かう一人のアナリストの“命がけの戦い”に心からのエールを送りたい。

 

[ちょっとした近況報告]

9月から連れ合いと共に、地域の小学校で週1回「日本語ボランティア」として、海外にルーツを持つ子どもたちの学習支援(漢字の読み書き、算数など)を行っている。

ボランティア未経験の私が、その重い腰を上げたきっかけは4月に配られた市の広報誌。「日本語ボランティア入門講座 受講生募集」の記事を見たツレの「行ってみない?」という誘いに、「(自分自身の“学び直し”にもなるだろうし)外国から来た子どもたちの手助けになれるのなら…」と、割とすんなり応じた次第。(で、5月末から7月末まで12時間・全8回の講座に参加、7月末の日本語教室見学を経て、夫婦共々その教室の一員として加わることに決めた)

毎週火曜の午後3時~5時まで、学習支援のみならず、教室に集う生徒たちと一緒に「坊主めくり」や「UNO(ウノ)」「あやとり」等をして遊ぶことも多い。

(まさか、この歳になって、ミャンマーの小1女子と一緒に「あやとり」をやることになるとは……しかも、全然上手く出来ず、「そうじゃなくて、こうするの」と、手を取って教えてもらうハメになるとは…)

   ジャック日和







 

 

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