公開を楽しみにしていた映画『麻雀放浪記2020』(監督:白石和彌/2019年)を、隣駅のTジョイで観賞。
原作は阿佐田哲也のベストセラー小説『麻雀放浪記』だが、その映画化は既に和田誠が果たしており、本作は監督自身が「設定を変えるなら、とことんぐちゃぐちゃにしてやろうとは思っていました。和田誠監督の『麻雀放浪記』(1984年)という傑作が既にあるので、原作そのものの設定だと、アレを超えるものはもう作れないから」と語っているように、主人公「坊や哲」はじめ登場人物の設定は同じでも、そのキャラクターは大胆にアレンジされていて、私たちがイメージできる「麻雀放浪記」の世界とは全くの別物。素直に再映画化を望んだ人たちには期待外れの作品だったかもしれない。(でも、私的にはある意味ウルトラC級の作品。奇抜なキャスティングも含め十分に楽しめた)
で、どんな映画かというと(人に勧める気はないのでネタバレ込)……舞台は、東京オリンピックが戦争で中止になり、国民がマイナンバーで厳しく監視され、共謀罪を盾にした言論統制が進む2020年の東京。そこに1945年からタイムスリップしてやってきたギャンブラー・坊や哲(斎藤工)が見たものは、労働がAIにとってかわられ、失業者と老人があふれかえる“75年後の東京”。
変貌した首都の姿にとまどいながらも、偶然に出会った地下アイドル「ドテ子」の助けを得て、ゲーム麻雀の世界に……そこで学ランにフンドシの雀士「昭和哲」として人気を博した彼は、折しも東京五輪の代わりに開催されることになった麻雀五輪に招かれる。舞台は新国立競技場、最大の敵はAI搭載のアンドロイド。そこで繰り広げられる“死闘”の結末や如何に。というかなりブラックなコメディ仕立てになっている。
主演の斎藤工をはじめ、出てくる役者も濃い目。竹中直人、小松政夫、的場浩二、そして東京オリンピック組織委員長「杜」役にピエール瀧(杜=森喜朗?)。AIロボット・ユキ役にベッキー、都知事役で何と元都知事・舛添要一(麻雀五輪の解説役まで務めていて笑った)……といった具合。
要するにピエール瀧が出演しようがしまいが、もともとスキャンダラスなキャスティングなわけで、社会の「同調圧力」に屈せず、公開に踏み切ったのも当たり前の話。エンドロール後、ちょっとした解放感を感じるのは、そういう製作姿勢にもあるのだと思う。
というわけで、バカバカしくて、面白い。安倍政権への皮肉たっぷりの痛快エンタメ『麻雀放浪記2020』。個人的な一番のツボは、「ドテ子」の“おっかけ”で、彼女を助けるために電磁パルスを仕掛けるオタクテロリスト役のミュージシャン・岡崎体育。もう出色の存在感&オタク感。(ところで、以前「桜を見る会」に招待された斎藤工だが、今回は招かれなかったそうで……ハハハ)
4月18日(木)
ネットの海で見つけた一枚。
「労働福祉センター」が閉鎖となった大阪・釜ヶ崎(あいりん地区)から「令和」に浮かれる日本に浴びせられた痛切な冷や水。
夜7時のNHKニュース「両陛下は、午後には、皇室の祖先の「天照大神」がまつられる伊勢神宮の内宮にそれぞれ参拝されました。」
こりゃ、驚いた!アマテラスオオミカミが皇室の祖先とは?!……いっそNHKもニュース番組から撤退して、放送業界の神話になってしまえばいいと思う。
4月22日(月)
シアター・イメージフォーラム(渋谷)で、いま話題のドキュメンタリー映画『主戦場』(監督:ミキ・デザキ/アメリカ、2018年)を鑑賞。(単館上映ということもあり、館内は満席)
「慰安婦はフェイク」と喧伝する人たち(歴史修正主義者)と、慰安婦問題に取り組む学者や運動家らがスクリーンの中で、文字通り“激突”するドキュンタリー。
「論点を並べて“どっちもどっちだ”というやり方は、実のところ政治的なスタンスの表明に他なりません。慰安婦問題に関しては、いま日本では右派の主張がメインストリームになっている。そこに挑戦を示さないことは、彼らの言いなりになるということであり、その現状を容認することに他なりませんから。日本のメディアの多くは両論併記を落としどころにしていますが、それは、客観主義を装うことで、語るべきことにライトを当てていないということ。単に並べるだけでなく、比較することで生まれる結論があります」
と、監督自らが述べているように「両論併記」に逃げ込まず、真のジャーナリズムの姿を堕メディアに慣れきった私たち日本人に知らしめてくれる。
「日本軍がこんなことをするはずがないということは、すぐに直観しました」(櫻井よしこ)、「どんなに頑張っても中国や韓国は日本より優れた技術が持てないからプロパガンダで日本を貶めている」(杉田水脈)、「(慰安婦は)性奴隷ではなく、売春婦でした」(ケント・ギルバート)、「フェニミズムを始めたのはブサイクな人たちなんですよ。ようするに誰にも相手されないような女性。心も汚い、見た目も汚い」(藤井俊一)等々……日本スゴイ!幻想を拠り所に「信じたくないものは信じない。信じたいものだけを信じる」という歴史修正主義者及びレイシストの見本のような人たちを見ながら(一人“標本”みたいな人もいたが)、そんな連中の好き勝手に牛耳られている日本の政治&ぶち壊されていく日本の民主主義……そんなあれやこれやを思いながら、怒りと笑いが込み上げる今年一番のドキュメンタリー。とにかく、必見!
以上、令和に持ち越しになった「4月のメモ」はこれにて終了。(「令和」初日に風邪を引き、今日もいくらか熱っぽい。今夜は薬を飲んで早目に寝ます!)
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