2018/08/09

そうか、自分も「バカ」なんだ。




一昨日(7日)の午後3時頃。西武の三省堂で仕入れた本3冊を手に、1~2時間の読書タイムを過ごそうと、少しウキウキしながら池袋・丸善1Fのカフェ「ほんのひととき」に向かった。(6時から、蒲田駅近くの肉バルでポスター制作の打合せ&福島の豚肉を使った料理を味わう会があり、その前の“本とのひととき”)

で、コーヒーを飲みながら、その中の一冊をチョイスし、開いた。

タイトルは『お釈迦さま以外はみんなバカ』(集英社インターナショナル新書)。
カバーには《稀代の読書家である作家だからこそ見つけられた、思わず唸る表現や、クスッと笑えることばの数々。書いた本人さえも気付いていない、秘められた意味を深堀りしていく。本書を開けば、新しい発見があること間違いなし!》と書いてある。
著者は敬愛する作家・高橋源一郎。(「まえがき」によると、本書はNHKラジオ『すっぴん!』金曜日の人気コーナー「源ちゃんのゲンダイ国語」の活字版とのこと)

その第一章《文章自体が「踊り念仏」》(はてさて何のことやら…と思うが、そこは深く考えずにスルー)の初っ端は「31文字のラブレター」。
大学時代の出会いから40年にもわたり、恋文のように愛の歌を交換してきた著名な歌人夫妻「河野裕子・永田和弘」が綴った“空前絶後の本”『たとへば君 四十年の恋歌』に収められた素晴らしい歌の数々に、心を震わされる一節。
2010年、乳癌で逝った妻・河野裕子が闘病生活の最終局面で詠んだ「一日に何度も笑ふ笑ひ声と 笑ひ顏を君に残すために」(夫・永田和弘の返歌は「一日が過ぎれば一日減ってゆく君との時間 もうすぐ夏至だ」)、そして彼女の絶筆となった歌「手をのべてあなたとあなたに触れたきに 息がたりないこの世の息が」に、胸がジーンとなってしまった。

しかし、“泣ける!”のはその「31文字のラブレター」だけ。あとは5分おきぐらいに笑いの波が押し寄せ、吹き出す“ぷぷぷっ”を止められない。

例えば「キラキラネーム(もしくはDQNネーム)についての考察」……今も大学で教鞭をとっている源一郎さんだが、一年生の授業に出て困るのは「名簿で名前を呼ぶとすると、半分以上の学生の名前が読めないこと」らしい。そこで彼は「2013年度ベスト・オブ・キラキラネーム」(リクルーティングスタジオ提供)のリストを見ながら、「なぜ、この国で、異様なほどそのような名前が流行るのかを考えてみよう」と思ったわけだが……

その8「今鹿」

一体全体どれだけの人がこの名前を読めるのだろう。イヤ、読める人などいるのだろうか?
「なうしか」なんて!!

その他、12位「本気」(まじ。コレはピンときた)、3位「姫星」(きてぃ。はぁ~?)、2位「黄熊」(ぷう。イメージで分かるけど…)など。
最も難解だった「姫星」だが、「き」はイイとして、なんで「星」が「てぃ」なんだ!!と、一徹さんなら卓袱台を返すところ。自由すぎるのも程がある。

ちなみに「キラキラネーム」栄えある1位に輝いたのは、「泡姫」

本気(まじ)?!さすがにそれはイカンでしょ!……と、一瞬ギョッとしたが、心配無用。「泡姫」は「ありえる」と読むらしく、「人魚姫」を原作にしたディズニーの「リトル・マーメイド」のヒロイン(の人魚)の名前。特殊な風俗嬢の別名ではありません。

というわけで、この「キラキラネーム(もしくはDQNネーム)についての考察」以外にも、アラサ―「ゾンビアイドル」小明(あかり)さんの自虐エッセイに身体を折り曲げて笑った「なんてったってアイドル……アイドル?」。
《夢をつかみたいなら、今日から君はタートルだ!》他、熱血・松岡修造の笑撃的な名言に唸らされる「実篤さん、みつをさん、そして、いまは修造さん!」など、読んで笑えてタメになる面白文のオンパレード。

基本的には多様なジャンルの本を紹介したエッセイ集という色合いだが、「へえー」と唸らされるトリビア的ネタも豊富。また、村上春樹の比喩表現など日本語の美しさと奥深さを再確認できる一文もあり、心の浅い部分でも深い部分でも楽しめる稀有な一冊。そんな本を出してしまう源一郎さんも、やはり、とても面白い人だと思う。

さて、最後に。「お釈迦さま以外はみんなバカ」……といっているのは、著者・源一郎さんではなく、臨済宗のお坊さんで芥川賞作家の玄侑宗久さん。
玄侑さんの著作『さすらいの仏教語』によると、「バカ」という言葉は、もともと僧侶の隠語で、サンスクリットの『モハー』(moha)に漢字『莫迦』を当てたもので、『モハー』とは『痴』の意味(だそうだ)。「莫」は否定の意味であり、「迦」はもちろん「お釈迦さま」の「迦」……つまり、「バカ」=「お釈迦さまではない」となり、人類はみんな「バカ」ということになる(んだってさ)。

では、私同様「悟り」などという境地から遥か遠いところで生きている「バカ」の皆さまへ一言。

残暑お見舞い申し上げます。


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