2018/01/29

楽しいことも、寂しいことも。(その②)




22日(月)
雪がちらつく寒い朝。パソコンのメールボックスに先日撮影した写真データが届いていたので、チェック後、クライアントとデザイナーに転送。(雪は昼過ぎから勢いを増し、午後3時頃には一面の銀世界)

買物を早めに済ませ、読みかけの本を読んだり、ネットを覗いたり、「ムービープラス」で『ダーティハリー』を観たり…(最近、昼夜を問わず地上波を見る時間が激減した。政権の御用番組のようなワイドショーをはじめ、つまらない番組が多すぎて)

そんな静かな一日に、飛び込んできたのは西部邁氏「自死」のニュース。丁度、ネットでウーマンラッシュアワー村本氏との対談(「AERA」掲載)を読んでいた矢先の事だったので、尚更、驚いてしまった。(二人気が合うのか、単に西部さんが村本さんのような人間が好きなのか、村本さんの問いに楽しげに答える西部さんの話は的確かつ示唆に富んでいて、とても面白かった)

関係者によると、西部さんは2014年の妻の死などによって自身の死への思索を深め、昨年末ごろから「僕は年明けに死ぬ。自殺する」と親しい友人に打ち明けていたらしく、「覚悟」「決意」の自殺とのこと。(彼と交流のあった小林よしのり氏が自身のブログで「予告通りに自分で自分の人生に決着をつけるとは立派だ」と、その“覚悟の自殺”を称えていたが、バカを言え!と釈然としない気分に…)

今はいざ知らず、元気な頃の西部さんは、「愚者」という言葉を度々用いて保守主義の立場から大衆批判と戦後日本批判を繰り返してきた人だったが(その言葉と姿勢が嫌いで彼の思想に親しむことはなかった)、まるで《知を獲得した賢者だけが、身体をも完全にコントロールした上で生よりも死を選び得る》としたストア倫理学を実践するかのように逝ってしまったのが“らし過ぎて”妙に哀しみをそそる。結局、良い意味でも悪い意味でも、最後までエリート意識の抜けない人だったんだなあ……と思う。

夜は牡蠣・鱈・白菜・ネギ・舞茸・シメジ・豆腐等をぶち込んで海鮮チゲ。寒さのなか仕事に出かけたツレは、雪の影響により帰りの電車が途中駅で止まってしまい、夜9時過ぎ、震えながら帰ってきた。

23日(火)
午前中、雪掻きを終えて部屋に戻ると、スマホに福岡在住のHIRANO君からの着信履歴あり。直ぐにかけると「明日、東京に行くんだけど、夜、どこかで会えるか?」とのこと。即「おう、大丈夫だよ」と返し、新宿・鼎で会うことに。

 午後、デザイナーのUEちゃんから写真を入れこんだ修正デザイン・レイアウトが届いた。完成まで、もう一息。

24日(水)
上京した旧友とのサシ飲みは18時半からだが、少し早目に家を出て新宿・武蔵野館へ。『ピンカートンに会いにいく』(監督・坂下雄一郎)を鑑賞。
20年の時を隔てた5人組のアイドルグループの今昔と再結成を描いたコメディだが、ストーリー云々より、再結成に奔走する元リーダー・優子(内田慈)の毒舌とイタイ女っぷりを味わう(?)映画。特に「オススメ!」と持ち上げる気にはなれないが、こういう“てんやわんや”は嫌いじゃない。異彩を放つ演技で作品を牽引した主演・内田慈の今後の活躍にも注目したい。

映画の後は「鼎」で一杯。遠方からの友は話す声が少し細くなった感じ(もしかして、私の耳が遠くなったのかも?)。でも、“肥後もっこす”の血を引く頑固な九州男児っぷりは相変わらず。
「早く仲直りしろよ」と、関係が断絶しているらしい長男J太郎くんとの早期和解を勧めたところ、「俺からすり寄ることは断じてない」の一言。(他に酒席での話題は、西部邁、安倍政権、立憲民主党、神社本庁、ヤマギシ会、俳人・西東三鬼などなど)
2時間ほどで「鼎」から「海老忠」に移り、旨い焼き鳥をつまみながら軽く飲んだ後「お前も、福岡に来いよ!」「うん、そのうちな!」と声を交わしながら別れた。

25日(木)
朝、長兄から電話あり。「昨日(24日)16時半、次兄が息を引き取った」とのこと。亡くなった兄の一人娘MIHOさんから連絡があったらしい。
末期の膵臓がんで余命2ヶ月とは伝えられていたが、つい2週間前に見舞ったばかり。あまりのあっけなさに呆然として言葉を失い、涙も出なかった。

そのすぐ後、長兄から、残された家族二人の宗教上の理由から葬儀は執り行わず、遺体は直ぐに荼毘に付され、骨は故人の遺志で「散骨する」と聞かされた。

実の兄弟とはいえ、それぞれに家庭を持つ身。長きに渡り兄と過ごしてきた家族の「二人だけで送らせてほしい」という気持ちは最優先に尊重するほかなく、私(たち)は家で線香を焚いて少し気弱で優しかった兄の冥福を祈るのみ……(亡き母にも「少し早すぎるけど、もうすぐ、T兄がそっちに行くよ」と知らせた)

死ねば死にきり。自然は極めて明快だが、人生はなんと儚ないことか。

 

 

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