2016/12/25

勝手にコトノハ映画賞(2016)


《外国映画部門》
●最優秀作品賞
『アスファルト』(製作国:フランス/監督:サミュエル・ベンシェトリ)
※この詩的で温かい世界に乾杯!

●優秀作品賞
『帰ってきたヒトラー』(製作国:ドイツ/監督:デヴィッド・ヴェンド)
『孤独のススメ』(製作国:オランダ/監督:ディーデリク・エビンゲ)
『手紙は憶えていた』(製作国:カナダ、ドイツ/監督:アトム・エゴヤン)
※アウシュヴィッツで家族をナチスの兵士に殺された過去をもつ90歳の老人(初期の認知症を患っている)が、1通の手紙を手掛かりに「ルディ・コランダー」の名を持つ4人の容疑者を追う70年越しの復讐劇。眠りから覚めるたびに記憶がリセットされる主人公の混乱が、シンプルな筋立てに異様な屈折を描き、そこにホロコーストという歴史的な悲劇が絡んで……という至極のサスペンス・ミステリーにして歴史の重みを感じさせる作品。重層的かつ予測不能な複雑な展開、小物を駆使した細部の研ぎ方、そして程よいユーモアなど、まるでヒチコック映画を観ているような気分で堪能させてもらった。
●監督賞
サミュエル・ベンシェトリ(『アスファルト』)
●脚本賞
ベンジャミン・オーガスト(『手紙は憶えていた』)
※巧みな伏線・暗示。そして驚愕のラスト…お見事!の一言。

●主演男優賞
オリヴァー・マスッチ(『帰ってきたヒトラー』)
※その皮肉さに背筋が寒くなったコメディー映画の主役。
レオナルド・ディカプリオ(『レヴェナント』)
※その過酷さに全身が強張った伝記映画の主役。
●主演女優賞
ルゥルゥ・チェン(『若葉のころ』)
※台湾青春映画のヒロイン。おかっぱ頭に澄んだ瞳……50年前の日本によくいたような。

●助演男優賞
ジュール・ベンシェトリ(『アスファルト』)
※「大女優」の孤独を包み込む、その柔らかな存在感。フランス映画界の次世代スター誕生か?

●助演女優賞
タサディット・マンディ(『アスファルト』)
※アラブ系女性の慈悲深いまなざし。彼女の作る「クスクス」を食べたくなった。
●特別賞
『若葉のころ』(製作国:台湾/監督:ジョウ・グータイ)

 
《邦画部門》
●最優秀作品賞 
TOO YOUNG TOO DIE 若くして死ぬ』(監督:宮藤官九郎)
※今年一番楽しめた日本映画…ということで。

●優秀作品賞 
『永い言い訳』(監督:西川美和)
※この監督だからこそ描ける心情のリアリズム。

●監督賞
宮藤官九郎(『TOO YOUNG TOO DIE』)

●主演男優賞
本木雅弘(『永い言い訳』)※人間は複雑。モックンは上手。
森田剛(『ヒメアノ~ル』)※剛くん、リアルに怖かった!
●主演女優賞
該当者なし

●助演男優賞
柄本明(『モヒカン故郷に帰る』)※柄本明の独り舞台といってもいい映画。

●助演女優賞
深津絵里(『永い言い訳』)※僅かな時間で確かな存在感。ますますキレイな、深津ちゃん。
キムラ緑子(『続・深夜食堂』)※息子(池松壮亮)への思いあふれる「まずい!」の一言。
●長編ドキュメンタリー映画賞
『大地を受け継ぐ』(監督:井上淳一)

●特別賞
『君の名は。』※何と言っても、アニメーションの素晴らしさ。
『続・深夜食堂』※人情“薫る”ドラマ定食1100円(シニア料金)

2016/12/24

夢の欠片集めて



空を眺め佇む/羽のない鳥がいる/水のない川を行く/櫓のない船を漕ぐ

キミはいつも/冷たい雨に打たれ/傘もささずに/旅をする

波音に消えた恋/悔やむことも人生さ/立ち止まることもいい/振り向けば道がある

だからボクが/夢の欠片集めて/キミに捧げる/歌がある


その優しく綴られるメロディを聴いているうちに、じわっと涙腺が緩んだ。

この年の瀬、しかも、クリスマス間際に、こんなに素晴らしい曲に出会えるなんて、まだまだ人生も捨てたもんじゃない。

というわけで、一夜にして、数ある桑田クンの曲の中でも、私にとって1、2を争う名曲となった『君への手紙』……還暦を迎えた天才からの“最高のプレゼント”に、ただただ感謝したい。

 

2016/12/18

年の瀬に…



これほど仕事に追われるのは何年ぶりだろうか。(“最後の一花”かもしれないけれど)

厳しい状況下にある中小広告代理店や制作会社も多いご時世、フリーランスの身分で「仕事が忙しくて…」などとほざけるのは甚だ幸せなことなのだが、この1カ月、他の事にほとんど意識を向けず突っ走ってきたせいか、さすがに少し息が切れてきた。

で、とりあえずコピー制作的に落ち着いたこともあり、気分転換と脳リフレッシュを兼ねて『続・下流老人』(藤田孝典著/朝日新書)を読みはじめたのだが、ほどなく、「明日は我が身」という厳しい現実を突きつけられ暗澹たる気分に……

この本によれば「一億総活躍社会」という一見明るげなスローガンも、「生涯現役社会の実現」という耳触りの良い政策も、裏を返せば年金・介護など社会保障制度の脆弱さに手をつけられない(つけたくない)政府の無策さを体よく表しただけのこと。“総活躍”どころか「高齢者が死ぬまで働き続けなければ社会を維持できない“総疲弊”社会」が間近に迫っていることを改めて思い知らされてしまった。

つまり、退職金もなければ、貯蓄もさほどない下流老人予備軍である私(たち)に余生はない(言い換えれば「働かなくてもいい自由」がない)ということ。私もアナタも病気で働けなくなったら、即、貧老にまっしぐら。のんびり趣味に生きるセカンドライフなど、まぼろし~!…というわけだ。

ああ無情。

ちなみに、「社会保障が整備されていない国ほど、高齢者の就業率が上昇する傾向にある」そうで、OECD(経済協力開発機構)の「高齢者の就業率の国際比較」(2013年調べ)によれば、高齢者の就業率はフランス2.2%、ドイツ5.4%、イギリス9.5%、アメリカ17.7%、そして日本は20.1%で実にフランスの9倍以上。いまの日本では「高齢期になっても働くのが普通になりつつある」が、どうも世界的に見ると“普通”ではないらしい。

そんな国で暮らしていながら、減らされる年金に文句も言わず「こんな年でも働ける場所があるだけ、幸せじゃないか」などと、時給1000円にも満たない安い賃金で働く自分を納得させている日本の高齢者は、なんと健気なことだろう。
(賃金についても、20135月に国連の社会権規約委員会から「日本の最低賃金の平均水準は、最低生存水準および生活保護水準を下回っている」懸念が表明され、最低賃金の再検討を求められたとのこと)

というわけで、今さらながら「ったく、どうなってんだ、この国は!」と、腹も立ってきたが、おかげで数年後の自分のテーマが見えてきた感じ。早速、旧知の仲間が集まる忘年会あたりで「下流老人の抵抗・反乱はどうあるべきか」を一緒に考えてみたい気がする。(まあ、楽しい酒の席。何を話し合おうが、酔いが回ってすぐに忘れるだろうけど)


2016/12/07

少しだけ近況報告



いよいよというか、ようやくというか……年明けにスタイリストとして独立するという愚息が、師匠との最後の?仕事を終えて、イギリス・ロンドンから帰ってきた。

おみやげは、紅茶、チョコレート、そしてキューバ生まれの画家ウィフレド・ラム(Wifredo Lam)のシュールな絵(ポスター)。

雑誌用のロケ撮影だったらしいが、ロンドンは至極面白かったようで、矢継ぎ早に質問を浴びせる母親を相手に、いつにも増して饒舌に1週間の旅の様子を話していた。

父親としては、ロンドンより“独立”の中身が気になるが、まずは「やれやれ」……といったところ。

さて、その親も「明石」での取材・撮影から帰って、はや一週間。その間、取材テープ起こし、コピー制作に忙殺され、ようやく昨日、デザインを含めてその分をクライアントに提出したところ。

普通ならこれで一段落となるはずだが、今回はちょっと勝手が違う。明石に行く度にやることが増えていく感じで、終わりの時期が見えてこない。ひょっとしたら、年内にもう一度、明石に行かなくてはいけないかもなあ……と、この仕事での年越しを覚悟している。

そんな中、1ヶ月半休んでいた駐輪場にも今日から復帰。

というわけで、とりわけ時間のやりくりが大変な師走になりそうな予感……あっ、そろそろバイトに行かなきゃ!