2016/10/31

魂の弾丸。


昨夜、錦織圭VSチリッチのスイス・インドア決勝を観ようと、地デジからBSに切り替えた途端、予期せず目と耳に飛び込んできた髭面の歌手の声に心を奪われ、リモコンを持つ手が止まった。

そのしびれる歌と詞の主は「竹原ピストル」(番組はNHK BSプレミアム「ネクストブレイカー」)……名前だけは、映画『海炭市叙景』を通じて知っていたが、迂闊にも俳優業が本職で、これほど魂のこもった歌を聴かせる歌い手だとは思わなかった。

それから40分ほど、ロック、フォーク、ブルース全てを感じさせる迫力の弾語りにすっかり心酔。無性に彼のライブが見たくなり、ツレにスマホで調べてもらったりもした。

そんなわけで、今日の午後はYou Tubeで彼の歌を聴きまくり。(午前中は、年に一度の「特定健診」)

以下、その中から、特に気に入った4曲をご紹介。

RAIN』『カウント10



『お前、もういい大人だろ?』


『シーグラス』(「野狐禅」時代の歌。“やこぜん”は、彼と濱埜宏哉が結成したフォークバンド。2009年に解散)






2016/10/30

小休止(&歌便り)



現在取り掛かっている仕事(コーポレートサイトのリニューアル)の企画&コピーを概ね終え、ちょっと中休みといった感じの昨日……
(今日はUEちゃんが上げてくれたデザインをチェックしながら、miyukiさんを含めた3人でランチミーティング。来月は出張プレゼン&ロケ撮影・インタビュー取材が控えており、まだまだ続く忙しさ……でも、久しぶりに気合いが入っているせいか、なんだか楽しく、頭シャッキリ。なので、バイトは暫くお休み)

3、4日ほど前に届いていた、福岡の友人HIRANO君からの「歌便り」に、ようやく目を通した。タイトルは「八月の蝉」。

若き日のふりしぼるかに鳴き盛る蝉の大群いずこに消えし

蝉しぐる美術館の坂迫りくる「マムシに注意」という看板

鳴くほどに存在示しふと飛びて捕まえがたしもこの夏静か

夕暮に寂しく鳴くは法師ゼミ世界の終り見たかのように

石庭にじっと座る人しゃべる人外人までもが無我をまねるか

福岡の夏も、京都の夏も、統べてひと夏「蝉の声」か……とりわけ今年の蝉は、残暑のしつこさに戸惑ったかのように死に時を忘れ、いつもの年よりずっと長く鳴いていたような気がする。

そういえば、暑い夏に入る前も「歌便り」があった。その際、同封の手紙で、彼が参加している歌誌「はな」の代表である歌人・角宮悦子さんが亡くなられたということを知った。
その惜別の想いが込もった歌に触れ、朝の喫茶店の片隅で胸が熱くなったことを思いだす。

生きているからこそさくら目に染みる大きな川のほとりにあれば

桜の季花冷えの空むなさわぎ悩みはいつも他人のことか

ひめやかに転生などと歌いたり夢のゆめかもしれずの思い

彼の話によると、角宮さん亡きあと、精神的かつ物理的な支柱を失った歌誌「はな」は廃刊になるらしい。
(「ダメだよ、発表する場は誰かが引き継ぎ維持し続けないと…」と私は存続を強く勧めたが)
たとえその場を失くしても、彼にはずっと歌を書き続けて欲しいと思う。その便りを楽しみに待つ「友」もいるのだから。

※先日、「写真集」を送らせてもらった友人たちから、心温まるハガキ、手紙、メールや電話を頂いた。この場を借りて心からの感謝の意を伝えたい。
みんなありがとう。本当に嬉しかった。

2016/10/14

『時代は変る』


「えっ、ボブ・ディラン?……って、ボブ・ディランなの?!!」と、一瞬わが目、わが耳を疑うくらい驚いた昨夜のニュース速報「2016年ノーベル文学賞 ボブ・ディラン氏に授与」。

正直、ノーベル文学賞にあまり関心はなかったが、「ボブ・ディランに授与」となれば話は別。スウェーデン・アカデミーも随分粋なこと(&革命的なこと)をするじゃないかと、「時代の変化」を感じて嬉しくもなった。

授与理由は「偉大な米国の歌の伝統に新たな詩的表現を作りだした」というもの。その詩の高い文学性と共に思想性も評価されたのだろう。

既成の権威に抗い続けてきたディランが、この世界的権威のある賞の授与を喜ぶかどうかは分からないが、彼のファンの一人としてはノーベル文学賞の方向性の変化と併せて素直に喜びたい。

そしてまた、この授与が多くの人、とりわけ若い世代の人たちがボブ・ディランの詩と音楽に触れるきっかけになれば……とも思う。

というわけで『時代は変る』






ここかしこにちらばっているひとよ
あつまって
まわりの水かさが
増しているのをごらん
まもなく骨までずぶぬれになってしまうのが
おわかりだろう。
あんたの時間が
貴重だとおもったら
およぎはじめたほうがよい
さもなくば 石のようにしずんでしまう
とにかく時代はかわりつつあるんだから

ペンでもって予言する
作家や批評家のみなさん
目を大きくあけなさい
チャンスは二度とこないのだから
そしてせっかちにきめつけないことだ
ルーレットはまだまわっているのだし
わかるはずもないだろう
だれのところでとまるのか。
いまの敗者は
つぎの勝者だ
とにかく時代はかわりつつあるんだから

国会議員のみなさん
気をつけて
戸口に立ったら
入口をふさいだりしないでください
傷つくのは
じゃまする側だ
たたかいが そとで
あれくるっているから
まもなくお宅の窓もふるえ
壁もゆさぶられるだろう
とにかく時代はかわりつつあるんだから

国中の
おとうさん おかあさんよ
わからないことは
批評しなさんな
むすこや むすめたちは
あんたの手にはおえないんだ
むかしのやりかたは
急速に消えつつある
あたらしいものをじゃましないでほしい
たすけることができなくてもいい
とにかく時代はかわりつつあるんだから

線はひかれ
コースはきめられ
おそい者が
つぎには早くなる
いまが
過去になるように
秩序は
早速にうすれつつある
いまの第一位は
あとでびりっかすになる
とにかく時代はかわりつつあるんだから

『ボブ・ディラン全詩集』より 片桐ユズル 中山容 訳 晶文社


2016/10/08

10日間のあれこれ②(映画&LIVE)



101日(土)
午前中は池袋へ。西武のロフトで封筒、ノートなどをまとめ買い。その後、地下の三省堂で本を物色、ジンバブエ出身の作家ノヴァイオレット・ブラワヨの長編『あたらしい名前』(早川書房)を購入。午後は、大泉学園のTジョイでクリント・イーストウッドの新作『ハドソン川の奇跡』を鑑賞……

2009年、ニューヨークで起きた「USエアウェイズ1549便不時着水事故」(奇跡的な生還劇として世界に広く報道された)を、当事者であるチェズレイ・サレンバーガー機長の手記をもとに映画化した作品で、イーストウッドにとっては『J・エドガー』『ジャージー・ボーイズ』『アメリカン・スナイパー』に続く、ここ数年の“実録もの”の一作。
2010年公開の『ヒア・アフター』以来、純然たるフィクションを撮っていないのは大ファンの一人として少し淋しい気もするが、私も大好きな名作『グラン・トリノ』(2008年製作)で“撮るべきものは撮りきった”という思いがあるのかもしれない。
それ故、今のイーストウッドは自身のキャリアを深めることより、愛する母国アメリカの理想と希望を見つめ探ることを使命として、映画を撮り続けているように見える。
国家・国民への信頼と、アメリカの夢と誇りを取り戻す作業とでも言おうか……96分の濃密な物語にも、イーストウッドが描き続ける社会の現実、その光と闇が色濃く映し出されていた。
(トム・ハンクスもさすがの名演)

ちなみに間近に迫ったアメリカ大統領選……彼は、トランプもヒラリーも支持しないとした上で、
トランプに投票すると表明したらしい。御年86歳の名匠が見つめるその心の闇も深そうだ。

103日(月)
「吉田拓郎LIVE 2016」を観に東京国際フォーラムへ。

長きに渡る拓郎ファンのツレのお供という感じだが、そこは同世代、私にも拓郎を好んで聴いていた時期はある。

十九、二十歳の頃、街中で頻繁に流れていた音楽と言えば、ビートルズと吉田拓郎……特に目的もなく吉祥寺の街を徘徊していた私は、レコード店やパチンコ屋から聴こえてくる拓郎の歌に、ちょっと物悲しい青春を重ねていたものだ。
当時好きだったのは『青春の詩』(♪ああそれが青春)、『ペニーレインでバーボンを』、そしてモップスも歌っていた『たどり着いたらいつも雨降り』などだが、20代半ばを過ぎたあたりから、たまに『シンシア』を口ずさむくらいで、拓郎の歌を聴くことも歌うことも、ほとんどなくなってしまった。

そんな昔を思い出しながらの「LIVE 2016」……開演は18時半。「春だったね」の熱唱から始まり、『落陽』まで一気に4曲。拓郎の若々しい張りのある声が、会場に響き渡った。
(既に70歳……こんなに声が若いとは思わなかったので、正直、驚いた)

その後、15曲目の『全部抱きしめて』まで、比較的新しい曲(かつ流行歌っぽい曲)が流れたが、あまり好みではないのでノリ切れず個人的に中弛み。(特に『朝陽がサン』というタイトルからして能天気な歌がダメ)
途中で入るMCも、ウケ狙いだろうが、モロ年寄りじみていてちっとも面白くなかった。

でも、ラスト7曲目『海を泳ぐ男』から最後のアンコール曲『人生を語らず』まで、かつて好きだった拓郎節が復活し、気分回復&集中力アップ。
20時半、すべてを歌い終わり観客に向かって深々と頭を下げる吉田拓郎に、大きな拍手を送って会場を後にした。

以下、当日のセットリスト。

01.春だったね/02.やせっぽちのブルース/03.マークⅡ/04.落陽
05.アゲイン/06.朝陽がサン/07.消えていくもの/08.唇をかみしめて
09.ジャスト・ア・RONIN10.ぼくのあたらしい歌/11.いつでも/12.君のスピードで
13.白夜/14.旅の宿/15.全部だきしめて/16.いくつになっても happy birthday
17.海を泳ぐ男/18.僕たちはそうして生きてきた/19.流星
アンコール
20.ある雨の日の情景/21.Woo Baby22.悲しいのは/23.人生を語らず


4日~6日はバイト&仕事。友人がホームページ制作絡みの仕事を紹介してくれたお陰で、本業の方も俄かに慌ただしくなってきた。とりあえず16日~17日は久しぶりの出張打合せ。来週はそのための資料収集及び検討・分析等で身動き取れない感じ……(本当はバイトも休みたいのだが、シフト勤務だけに簡単に休めないのが困る)

2016/10/07

10日間のあれこれ①(呑み会)


長雨の終息とともに、長引いた風邪もようやく治まり、いよいよ秋本番……と思いきや、残暑がしつこい!(昨日の東京は30℃。直射日光の当たる駐輪場は39℃もあった)

まさか、10月に入ってTシャツ一枚で過ごすことになるとは思わなかったが、今日は朝から涼しい風が吹いている。

このまま台風の発生も収まり、スッキリ秋に入ってくれるといいのだが……

さて、10日ぶりの更新。まずはこの間の近況をサクッと。

930日(金)
17時半から、バイト仲間(Nさん、Oさん)との呑み会あり。

私は早番で16時上がり。時間潰しがてら、コミュニティバスで約5分の所にある銭湯へ。

「ボディマッサージ」「ジェットエステ」「絹の湯」「薬湯」など7つのテーマ浴槽に加え、「露天風呂」までついているスーパー銭湯並みの館内設備に驚きながら、軽く仕事の疲れを癒した。(料金は460円+バスタオル代200円。平日の夕方、)

で、入浴を終え、再びバスで駅にUターン。呑み会の場所は、駅近くの古い居酒屋。昭和の薫り漂う店内には懐メロが流れていた。そんな雰囲気につられて、陽水、拓郎、遠藤賢司、ビートルズ、C.C.Rなど6070年代のフォークや洋楽の話で暫し盛り上がったが、話題の中心はやはり共通の職場である“駐輪場(の人々)”……
格好といい(常にジーンズ&サンダル。頭には赤系のバンダナ)、風貌といい(イメージ的には、毒気の抜けたキース・リチャーズ)、多くの高齢者の中でひときわ異彩を放つ存在として前から気になっていたSさんの話になった。(Sさんは一人暮らしで、日にビール10本以上は飲むという大の酒好き。いつも昼頃に自転車を止め、隣接するショッピングモール内のスーパーでビールと弁当を買って帰るのが日課。その後は夜まで、部屋でひたすら酒を飲みつづけるそうだ)

「酒で命をつないでいるような感じだけど、大丈夫かなあ。体もふらついているし……」と私が話し出したところ、頷きながら聞いていたNさんが「初めて会った時、“もうオレ死にたいんだよ”と言われてビックリしましたよ」と、聞き捨てならないことを言う。

駐輪場で働く人間に、しかも初対面でそんな心情を吐露するのは、真に孤独な人だけ。

「えっ、いきなりそんなこと言われたの?!……参るなあ、それは」「でも、本当に死にたいんだろうね…」と呟いて暫く、無言の時が流れた。
その後、職場の問題や仕事(本業)、転職(転バイト?)のことなど話したが、あまり盛り上がらないまま、午後8時過ぎお開き。それでも最後は明るく、ハイタッチで別れた。

※今日はこれから、少し遅めの墓参り。今年も辺り一面、秋桜が咲いているはず。