2016/04/20

『孤独のススメ』のススメ



昨日は、バイト3連休の中日。天気もいいので、新宿へ。

シネマカリテで『孤独のススメ』(監督・脚本:ディーデリク・エビンゲ/製作国オランダ)を観てきた。(上映開始は1240分。その前に、昔よく待ち合わせで使った喫茶店「タイムス」で軽くランチ。古びた椅子の感触に、成す事もなく友人と駄弁っていた遠い日の記憶が少しだけ蘇った)

映画の舞台はオランダの田舎町(教会を中心にした小さな集落)。主人公は妻に先立たれ、独りで暮らす初老の男フレッド(トン・カス)。
日曜の礼拝以外、周囲との付き合いを避けて静かに生きていた彼だが、ある日「言葉」を持たず「過去」も分からない男テオ(ルネ・ファント・ホフ)がその町に現れ、些細なトラブルの後、なぜかフレッドの家に居ついて奇妙な共同生活が始まる。
テオの特技を生かした「宴会芸」で多少の稼ぎを得る中、二人の間にはいつしか友情のような感情が芽生え、フレッドの単調な日常が徐々に色づいていくが……というお話。

前半の雰囲気はまるでカウリスマキ。交わす言葉もほとんどない中年男ふたりの風変わりな同居生活がシュールな笑いを伴いつつ描かれる。(その間、二人には「同性愛」の噂も立ち、信仰心の篤い保守的な町の人々から嫌悪の目を向けられるが)
だが、それは後半一気に加速する物語のために丹念に織り込まれた伏線……

突然流れる歌『This Is My Life(La vita)』に心を鷲づかみにされ、思いがけず目頭が熱くなった後、その熱を冷ます間もなく、名峰マッターホルンの雄姿に目を奪われる清々しいラストが待っていた。(ちなみに原題は『Matterhorn』……本作に限っては邦題の方がニュアンス的に正解だと思う)

というわけで、特に中高年男性の心の琴線に触れるであろう2016年上半期ベスト1の秀作。
本作が初の長編作品というディーデリク・エビング監督の見事な脚本に大きな拍手を送りたい。(今後の活躍にも大いに期待したい。風貌も若干アキ・カウリスマキに似ている気がするし…)


※今なお余震が続く「熊本地震」……明日は我が身、改めて世界有数の地震国で暮らしていることを思い知らされた。亡くなられた方々のご冥福を祈ると共に、被災地で生きる人たちに一日でも早く平穏な日々が訪れることを願うばかり。
10年ほど前、仕事でお世話になった「あゆみ保育園」(熊本市)、「童心児童館」(大分・中津市)の皆さんはご無事だろうか。そして福岡に住む我が友は元気だろうか。
(仕事で2度ほど訪れたことのある「熊本」。路面電車、熊本城、馬刺し等々……とても魅力的で心に残る美しい街だった)

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