2015/10/08

本田が雄弁にキレた…(&ザッケローニの助言)



104日、ACミランがホームでナポリに惨敗した(04)。

2試合連続でベンチのまま出番のなかった日本代表FW本田圭佑は、試合後、日本の報道陣にチームの惨状についてコメント……その内容が、各国の言葉に訳され世界中を駆け巡り、あちこちのACミランファン及びサッカーファンの注目を集め、イタリアメディアも大きく取り上げる事態になっている。

本田と報道陣とのやりとりは以下の通り。(Soccer Magazine ZONE webより)

― (ベンチからナポリ戦を観た感想は)

「そうですね。前半は結構いい勝負していて。失点シーンは自分たちのミスから生まれたものだった。その後、どちらかというとナポリの方に勢いがなくなり始めて、同点になるチャンスも何本かあった。そこを決めきれなくて。後半はまったく違った試合になってしまった。個人的にはあんまりというか、問題点が分かりやすくなった。問題点が変わったわけでもないし、問題点が大きくなったというのもないですし。今日の試合でファンや経営陣、選手たちは大きく傷ついて、こういうところで気づく。今日の敗戦、大敗をしっかりと(受け止める)。この敗戦から何かを学ばないと。いつまでたっても再建はほど遠い」

― 次に出られるチャンスは巡ってくると思うか

「というか、なんで出れなくなったか分からない。こういう試合をやっていて出れるチャンスがないのがおかしい。イタリアのメディアの大問題だと思うんですけれど、誰がいい、誰が悪いというのをこういう試合で話すのがナンセンスですよね。ある程度、誰がやってもダメというのは、この3年ぐらいで分かったと思う。そこを今日しっかり学ばないと。(マンチェスター・)シティやパリ・サンジェルマンぐらいお金を使うか、もう少しストラクチャー(構造)の部分で見直していかないといけない。でも、選手が気づいていてもこのチームは変わらない。トップの人間が気づく、経営陣が気づく、監督が気づく。そして、選手たちが気づく。同時にファンたちも気づいていかないと。僕はファンの拍手のタイミングを見ていても、勝つことだけに左右されているファンだなと気づく。内容など見ない。勝てば拍手する」

― 監督は、精神的なものがチームの問題なのではないかと言っている

「それはどういうことなのかな。選手の責任であるという話をしている時点で、ナンセンスだと思う。3年間いろいろな選手を試してきた。その間に(強化に)100億くらい使って、選手たちを今試しているわけでしょ。(世界)トップのプレーヤーではないにしても、少なくとも代表選手が集まっている集団。それでなぜ出ている選手が与えられたポジションで生き生きとプレーできないのか。もう少し構造的なもの、評価基準が重要。評価基準をメディアからファンから監督から経営陣から、全員がもし変えることができれば、大きく再建につながるんじゃないかなと思う」

― 本田選手については、もう少し攻撃的にという声も聞こえるが

「専門的な話になるんで、あれなんですけど、シンプルに言えばヒントは今日のナポリにあると思います。それが分からないようであれば、再建はあと5 10年かかる。ナポリはサポートが速い? 2年間思っている話。逆にイタリア人に聞きたい。ユーベも危ないでしょ。これでユーベが弱くなったらイタリア危ないですよ。だから、イタリアのメディアにこれを伝えておいて下さい。また散々ぱら僕をたたくでしょうから」

という内容……

低迷するミランの10番として、メディアとファンの批判を一身に浴び、スケープゴートにされて叩かれてきた本田が、「勝利至上主義」のセリエAのサポーターと、攻撃面での黒子役、守備面での汚れ役を評価しないメディア、クラブに対して放った痛烈な一撃、といったところだろうか。
(ミラン及びセリエAの華やかな歴史、その栄光にとらわれているサポーターとメディアが今も「ミランの10番」に抱くイメージは、メッシやロナウドに近い存在。そんな意識下、一人でゲームを決めてしまえるような“真のワールドクラス”ではない「10番」が非難の的になるのは致し方ないことかもしれない。だが、現実を直視し、チームへの献身を忘れることなく、汚れ仕事も厭わず、ひたすら再建の足掛かりを築く「10番」こそ、いまのミランには必要ではないのか?それに自分は値しているはず……と、本田は言いたいのだろう)

本田自身「下手なりにも本気でトップを目指している人間として、行動を起こす時には、ただ行動を起こすことはないですから。というのは、目指すところの逆算で行動をとってきているわけですから、それに相応しくない行動は取りたくないというのが自分のフィロソフィーですから。自分の正義をつらぬくことが今後の自分にとっても、自分自身であり続けるためにも必要なことだと思います」と語っているように、相当な覚悟と自負を込めて行った発言だと思う。

熱烈な本田ファンの一人としては、「らしいなあ」と、その発言を支持し、事の推移を見守るのみ。

海外のACミランファンの反応も「よく言ったよ、悲しいが事実だ」「これは本当だ……本田はとても勇敢だ。それ以外の何ものでもない」など概ね好意的。また、ある意味、本田の攻撃を受けたイタリアメディアも、その琴線に触れたようで「普段冷静で思慮深い人物の口からこれらのことを聞くのはインパクトがある」、「この言葉はあまりにも核心を突いている。ミランはこれをどう受け取るだろう?」(ガゼッタ・デロ・スポルト)と、冷静に報じている。

とはいえ、所属選手がメディアにチーム批判をぶちまけるのは、どこの国でもチームでもご法度。クラブの副社長兼CEOのガッリアーニも「最悪」と憤っているようだし、本田にも厳しい処分(多額の罰金?)が科せられるのは必至。加えて早くも、本田の発言を「1月のマーケットでの移籍希望のサイン」と見なし、獲得に動き出すクラブもあるらしく、ミランからプレミアリーグへの移籍話も報じられている。

そんな矢先、7日のクラブ公式番組「ミランチャンネル」内で、ミラン監督を務めた経験もある元日本代表監督、アルベルト・ザッケローニ氏が電話インタビューに応え、外部でクラブ批判を行ったことを諌めつつ、「積極的にクラブを助けようとしたんだ」と本田を擁護した(してくれた!)。

「ケイスケは軽率なことを言う人間ではない。偉大なプロ精神を持っているし、常に自分のことよりチームにとってどうかを考える。ああ言ったということは、きっと誰かに何かをさせたくて、刺激すべきだと考えたのだろう。
しかし、話す場所は考えるべきだというのも事実だ。私は常にこういったことは外部で話すべきでなく、内部で話すべきだと考えている。私もミランにいた3年の間に問題があるときは、常に内部で話し合うようにしていた。
例えばパオロ・マルディーニはキャプテンとして人間的に非常に優れた選手だったが、口を開くときには常に建設的なことだけだった。
選手は外部で批判してはいけない。自分のプレーについてテレビや新聞で自己批判するのはいいが、他人を批判してはならない。内部で話し合ってもいいが、それを外部で批判してはならない。だから彼には賛成できない。
ただ私は彼のことをよく知っている。慣習や文化も異なった国からきた選手だから、我々とは異なったやり方をしたのだと思う。彼は建設的な意味でやったのだろう」

ただの本田ファンである私も、その変わらぬ信頼と正しい助言に「ありがとう。ザック!」と感謝しているくらいだから、本田自身もきっと恩師の言葉を有難く、力強く思っているに違いない。

さて、今夜は、日本代表にとってW杯アジア2次予選1位通過のカギを握る重要なシリア戦。日本の勝利を祈りつつ、いつも以上に、本田のプレーに注目しよう!

 


 

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