フランキー・ヴァリ(「ザ・フォー・シーズンズ」のリードボーカル)が歌い、ボーイズ・タウン・ギャングをはじめ多くのアーティストがカバーしている名曲「君の瞳に恋してる(Can't Take My Eyes Off You)」を初めて聴いたのは、映画『ディア・ハンター』を観たとき……もう、40年近くも前のことだ。(「君の瞳に恋してる」がヒットしたのは1967年。ベトナム戦争が泥沼化していく頃)
人生で最も輝かしい時間の描写(親しい仲間が集う結婚パーティー)と、次に続く悲惨な戦争描写とのコントラストをより強く印象付ける、華やかな開放感に満ちた曲として、テーマ音楽「カヴァティーナ」の美しくも哀しい旋律と共に今も深く心に残っている。(個人的に、この2つの名曲が映画『ディア・ハンター』を忘れがたい作品にしていると思う)
その思い出深いメロウな曲が再びスクリーンで脚光を浴び、大好きな俳優が脇を固め、敬愛する監督がメガホンを取った映画……と言えば、いま話題の『ジャージー・ボーイズ』。
ブロードウェイの大ヒットミュージカルを基に、1960年代に絶大な人気を誇ったアメリカのポップスグループ「ザ・フォー・シーズンズ」の栄光と挫折、そして再生の実話を描いた作品だ。
監督は、御年84歳の名匠クリント・イーストウッド。主役の4人のうち3人はミュージカル出身、彼らのタニマチ役(ギャングのボス)には、『ディア・ハンター』の熱演が忘れられない名優クリストファー・ウォーケン……作品の舞台は「そこから抜け出すには、軍隊に入るか、ギャングになるか、スターになるしかなかった」ニュージャージーの貧しい町。金も、コネもない4人の若者にあったのは、天性の歌声と、曲を作る才能、そして完璧なハーモニー。ストーリーは、1951年というロックンロール黎明期から始まる。
……シネコン(Tジョイ)という大きな小屋にも関わらず、エンドロールが流れても帰る人がいない映画を、初めて観たような気がする。
2時間超という長尺ながら、中弛み一切なし。映画の神様に魔法をかけられたように、胸が躍り、熱くなり、あっと言う間の130分。そして、圧巻のラスト15分!
出演者揃ってのラストダンスの華やかさ&心地よさ。特にクリストファー・ウォーケンの小粋なステップが溜まらない!(私はふと、映画『ディア・ハンター』の中で、ベトナム出征前の“ニック”が、酒場で「君の瞳に恋してる」を大声で歌うシーンを思い出してしまった)
これぞ、映画! これぞ、クリント・イーストウッド!!
以上、どんな挫折を味わおうと前を向いて生きていく人生にこそ本当の価値があるという、アメリカの栄光と挫折、そして苦悩と希望を見つめ撮り続ける“映画の生き神様”クリント・イーストウッドの変わらぬ眼差しを感じながら、胸一杯に青空を吸いこんだような極上のカタルシスを味わえる一本。超オススメです。
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