「ヴォンフォン(広東語でスズメバチ)」という名の台風19号が東京を去り、妙に蒸し暑くなった今日。あちこちで「スズメバチ」の被害に遭われた方がいるだろうが、我が家は天窓からの雨漏りくらいで特に問題なし……と思って外へ出たら、大きなゴミ箱の蓋が風に飛ばされ(?)なくなっていた。誰かに迷惑をかけてなきゃいいが。
さて、先週の木曜(9日)、渋谷アップリンクで観た映画の話。
数日たった今も、時折、頭の奥で「誰がテロリスト? 俺がテロリスト?」と、鋭くラップを刻む声が聞こえる。
声の主は、イスラエル領内パレスチナ人地区「リッダ」で生まれた史上初のパレスチナ人ヒップポップ・グループ「DAM」。
映画『自由と壁とヒップポップ』は、その「DAM」と壁を隔てたガザ地区の「PR」を中心とするパレスチナのヒップポップ・ムーブメントを追いながら、占領地の検問所や分離壁といった目に見える分断は勿論、ジェンダー差別や世代ギャップまで、さまざまな壁を音楽の力によって乗り越えていこうとする若者たちの姿を描いたドキュメンタリーだ。(監督は、パレスチナにルーツを持つアラブ系アメリカ人の女性アーティスト、ジャッキー・リーム・サッローム)
映画『自由と壁とヒップポップ』は、その「DAM」と壁を隔てたガザ地区の「PR」を中心とするパレスチナのヒップポップ・ムーブメントを追いながら、占領地の検問所や分離壁といった目に見える分断は勿論、ジェンダー差別や世代ギャップまで、さまざまな壁を音楽の力によって乗り越えていこうとする若者たちの姿を描いたドキュメンタリーだ。(監督は、パレスチナにルーツを持つアラブ系アメリカ人の女性アーティスト、ジャッキー・リーム・サッローム)
♪誰がテロリスト? 俺がテロリスト? ここは俺の祖国だぜ
誰がテロリスト? お前だよ お前が横取りしたんだろ
先祖を殺し 俺を殺し 法に聞け? 敵のお前が 弁護士で裁判官
それで俺は? 死刑囚だ 少数派のままでいろってか?
求めているのに 平和が遠のく 平和が俺を はじき返す誰がテロリスト? お前だよ お前が横取りしたんだろ
先祖を殺し 俺を殺し 法に聞け? 敵のお前が 弁護士で裁判官
それで俺は? 死刑囚だ 少数派のままでいろってか?
映画の中で繰り返し流れるこの曲「Who’s the terrorist?」は、2001年にインターネット上に公開するや否や、中東の若者たちを中心に支持を集め、瞬く間に100万を超すダウンロードを記録したという。
ヒップポップにあまり馴染みのない私にも、平和を求めながら不条理な形で拒絶されることへの正当な抗議として、「DAM」のラップはビンビン胸に響く。メンバーの一人ターメルが「俺たちDAMの構成要素は、30%ヒップポップ、30%文学、残りはこれ」と言って、窓の外の現実を指し示すシーンも、攻撃的に煽るだけのラップにはない憤りの深さと思慮を感じさせて印象的だ。(「間違わないでほしいんだ。俺たちは平和に生きたいだけだ。共存でいこう。ただし等分だ。99%も持ってくなんてのはダメ」と彼は語る)
が、「胸に響く」のはDAMのラップや主張だけではない。
「私たちをテロリストだなんて!自分たちはどうなの。この曲が答えてくれる。独創性と勇気がある。他の人もこれを聴けばもっと心を開くし、強くなれると思う」「何かを伝える手段は、暴力より芸術がいい。パワフルだし、一番効果がある。暴力は新たな暴力しか生まない。私は満足だ。息子が音楽を正しく活用しているから」と語る「DAM」と「PR(ガザ地区で活動するラップユニット)」の家族たちの言葉。「ヒップポップは好きだけど(アラブ・ムスリムの娘だから)歌えないなと思っていたら、DAMとかが助けてくれた。男には女の悩みや問題は分かんないでしょ。だから歌うの」「人の言うことを気にしない。私は娘を信じてる。自分自身や自分の信念に誇りを持っていれば問題ない」と話す女性ラッパーとその母の声。「パレスチナ人のラップがあるなんてビックリした。すごいよ、歌詞も覚えた」と目を輝かして話す子供たちの姿……そのすべてが、この素晴らしいドキュメンタリーを輝かせ、観る者の胸を強く打つ(はず)。「DAM」の活動は地域社会にしっかりと根を下ろし、その変化を促しているのだ。(だから、パレスチナの厳しい現実を突きつけられながらも、彼らの強さと優しさの中に、温かい希望の光を感じることができる)
そして、壁を超えてヒップポップの熱い絆が結ばれるラスト……「兄弟よ!」「元気だったかい」と言葉を交わした「DAM」とガザ地区の「PR」が一緒にテーブルを囲む中、こんなナレーションが入る「この世もまだ捨てたもんじゃない」
その一言で、「ク〜ッ!沁みるぜ〜っ!」と、一気に胸が熱くなり、エンドロールで流れる曲「ガリーブ・フィー・ビラーディー(故郷のなかの異邦人)」を聴きながら、静かに涙腺決壊。
というわけで、映画館を出た後「これは、俺が宣伝しなきゃ!」という妙な使命感すら沸いてきた本年度ベストワンのドキュメンタリー。1日1回、こんな小さな小屋で、たった20人程度の観客だけで味わうような映画じゃない!と声を大にして言いたい必見の一本。(「ヤバイぜ!スゴイぜ!サイコーだぜ!」……と、ラップ調でオススメします)
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