2014/02/12

マンチェスター&ハート・ブレイク・ホテル



昨夜の『世界ふれあい街歩き』(NHK BSプレミアム)は、19世紀の産業革命で中心的な役割を果たしたイギリス有数の商工業都市「マンチェスター」。(サッカー日本代表・香川真司が所属する「マンチェスター・ユナイテッド」のホームタウン)

街には、綿工業が栄えていた時代に造られたレンガ造りの綿紡績工場(ミル)や倉庫(ウエアハウス)の跡、産業革命期に整備された運河や製粉所のネットワークが今も残されており、カメラは、その運河の船着き場や若者の街へと変貌を遂げたオシャレな倉庫街を歩きながら、様々な人との“ふれあい”を映し出す。

サッカー好きの私としては、マンUの本拠地オールド・トラッフォード周辺も多少紹介してほしかったが、昔好きだった曲「マンチェスター&リバプール」の雰囲気が感じられる渋い町並み&雨の多い町での暮らしを楽しみながら生きる人々の姿も十分に魅力的。
中でも特に印象に残ったのは、ショッピングビルの壁面に描かれた様々な人物のモザイク画……マンチェスターゆかりの人々が描かれているというのだが、伝説のパンクバンド「セックス・ピストルズ」の画の下に、何と「マルクス」と「エンゲルス」の顔が並んでいた。
「雨の多い町だから、マンチェスターの人はあまり外に出ない。その分、部屋で自分と向き合う中で、芸術や哲学に親しむ時間が多くなり、様々なカルチャーが生まれた」と語ってくれた制作者(モザイク・アーティスト)に聞くと、二人は産業革命の時代に“研究旅行”でこの町に滞在していたらしい。
まあ、「産業革命」という言葉自体、エンゲルスによって広められたのだから、ゆかりの人々として描かれているのは驚くことじゃないが、アナーキーなバンドと社会主義思想家の時を超えた壁面の“共演”が実に絶妙で面白く、「センスいいわ~」と唸りつつニヤニヤ。

で、もうひとつ心惹かれたのは、運河で魚釣りをしていた初老の男性との“ふれあい”の中での会話……(大体、こんな感じ)
「魚、釣れるんですか?」
「もちろん。先週なんか80cmの大物が釣れたよ」「えーっ!スゴイ」
「毎日、ココに来るんですか?」「まあ、そうだね……」
「ご家族は?いつも来て文句言われないの?」
「家族はいないよ。カミさんに、逃げられちゃったんだ……ハート・ブレイク・ホテルさ」
「えっ、エルヴィスの?」「ん?一人暮らしっていう意味だよ、知らなかった?」

傷心の住処……一人暮らし。そうか、「ハート・ブレイク・ホテル」は、日常会話でこんな風に使うのかと、孤独な暮らしを自嘲気味に茶化すオジサンの言葉に感心しながら、やはり男に必要なのは多少のユーモアとやせ我慢。いい歳になったら、普通にこういうシャレたセリフが吐けないと、いけないなあと思った。

というわけで、今夜の〆は「マンチェスターとリバプール」「ハート・ブレイク・ホテル」の2曲。歌詞の一部を添えて(訳詩者不明)。



「マンチェスター&リバプール」(ピンキー&フェラス)

♪マンチェスターとリバプール
 どう見てもロマンチックなお馬鹿さん向けの街ではない。
 せかせかした足取り、埃だらけの通り。
 日々のため生きている人たち。

 でも煙と石炭片の後ろに
 大都市の鼓動を見つけるはず。
 どこをさまよっても 故郷は故郷。
 どんなに遠くに旅しても



「ハート・ブレイク・ホテル」(エルヴィス・プレスリー)

♪あいつにふられたあとで
 やっとみつけられたよ
 新しい住処の名前は
 ハート・ブレイク・ホテル
 さびしかったよ
 ひとりじゃいやだよ
 死ぬほどさびしいよ





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