2023/10/30

手術・入院の10日間②


103日(火・手術)

早朝4時頃に目が覚めたが、その後またウトウト…6時少し前に起床。7時、宿直の看護師さんによる検温・血圧測定など体調チェック(毎朝、退院するまで同じサイクル)。この日は手術のため朝・昼食は無く、8時過ぎ「浣腸(座薬)」。その2、3時間後、点滴2本を投与されそのままベッド上で待機。午後2時頃、看護師さんに付き添われて手術室のある2階へ。

入室前、「有線放送で聴きたい番組を選んで下さい」と言われ、60局ほどのリストの中から「ボブ・ティラン」をセレクト(他に「ビートルズ」「エルヴィス・プレスリー」「ローリング・ストーンズ」などもあった)、手術中に流れる音楽が決まった。

で、いよいよ入室。手術台に上がり「腰椎麻酔」後、手術開始……体勢はうつ伏せ、麻酔が効いている下半身は自分で動かすことができないので、どういう具合になっているのかよく分からないが、お尻は若干上向きの状態。両脚は大きく広げられガムテープ(のようなもの)で固定されている感じだった。

俯瞰から眺めたら、とても見ていられないような姿だろうが、自分で見ることはできないし、抗いようもないので恥ずかしさは皆無。「俎板の鯉」状態でゴッド・ハンドの異名をとる医師の手に身をゆだね、手術の成功を祈るのみだった。

20分後、無事に手術終了。(先生は「かなりギリギリまでとりましたよ」と言いながら、ビーカーに入った我が「瘻管(ろうかん)」を見せてくれた)

ボブ・ディラン聴きつつ伏せば吾もまた唯の肉塊どうぞよしなに

「人体は記憶の器」か?今まさに 亡き人、脳裏かすめて去りぬ

自力で動かせない下半身を医師と看護師に抱えられて車椅子に乗り、病室へ。

(病室のベッドに横たわる際にも二人の補助あり。手術室を出る直前には、看護師さんとこんなやり取りもあった。

「手術のご感想は?」「いやあ、うれし恥ずかし初体験…という感じですかね」「えっ!?恥ずかしだけじゃなく、うれし…も、ですか?」「だって、何人もの方にお世話になって、こんな有難いことはないじゃないですか」「まあ~~!!そう言って頂けると、私たちも嬉しいです」……みんな笑顔で一件落着。リクエストしたディランも「とてもいい曲ですね、誰が歌っているんですか?」と聞かれるほど評判が良かった。但し、比較的新しいバラードのようで曲名は分からず)

麻酔の影響が懸念されるこの日は、転倒等のリスクがあるので「自力歩行は厳禁」、尿も出にくくなるらしく(人によってはかなり辛い思いをするそうだ)、「麻酔が効いているうちに…」と、手術前に看護師さんと打ち合わせしていた「尿道カテーテル」を挿入(膀胱に直接入っているのに、何故か残尿感がある微妙な感触)。夕食時を除き、朝までその状態でベッドに臥していた。

104日(水)

検温時、傷口に当てたガーゼの取り換え及び尿道カテーテル抜去(体がキュッと委縮するような感じ。「あっ、うっ…」と小さく声が出た)。術後の痛み・出血はほとんど無し。足元もふらつかず自力で歩けるようになった。

午後4時診察、「話を聞きたい」というツレも同行し、先生に手術内容及び今後の注意点などを伺う。 

[手術名:痔瘻根治術、手術内容:出口~入口まで切開。瘻管(炎症または組織の損傷によってできた通路。トンネル)切除、頭側への瘻管はできる範囲でくりぬく]

先生がかなり早口で話すためはっきり聞き取れない所もあり、十分に内容を理解できたとはいいがたいが……とにかく、手術は成功、再発の心配はほとんど無し。普段の注意点としては、なるべく「激辛系」は食べないように。(痔瘻のきっかけになる)下痢を防ぐためにビオフェルミンを常用するのも良いかも。ということ……アルコール類は傷が治ればOK

105日(木)

朝、ジャックの写真付きでツレからメールあり。

退院までの日々、食事・トイレ・シャワー・診察の繰り返し。他にやることもなく、読書が進む。『シブミ』上巻(トレヴェニアン著/ハヤカワ文庫)読了。(極上のサスペンスだが、ちょっと哲学的な雰囲気も漂うタイトル通りの“シブさ”。そして特筆すべきは「訳」の素晴らしさ!)

106日(金)

まだ若干の痛みと出血があり少し気になるが、病院生活にも慣れ、心に余裕が出来た感じ。

院内の「談話室」で、入院前に読み終えていたJR上野駅公園口』(著者・柳美里/河出文庫)の感想がわりに歌を詠んでいた。(「JR上野駅公園口」は、上野駅にホームレスとして暮らす男性を描いた小説)

闇降りず光も射さぬ人生の出口はありや「恩賜公園」

居場所すら失くした者はどう生きる?「ステイホーム」の声の冷たさ

絶望はとなりにいるよ最期まで 血を吐くように陽が昇るまで

ピンボケの空しか見えぬ眼の中で「希望のレンズ」割れて久しき

天皇が思う「民」には含まれず ねぐら追われる山狩りの朝

 

0 件のコメント:

コメントを投稿