2022/01/24

2021面白本ベスト5


三体』『三体Ⅱ 黒暗森林』『三体Ⅲ 死神永生』(劉慈欣)

文化大革命から始まり、異星文明との戦いを経て宇宙の興亡へと突き進む……という、中国の歴史と天体学、物理学を組み合わせることで生まれた壮大なスケールのSF超大作&大傑作(総頁数2000超)。そのボリュームと耳慣れない科学・物理用語のオンパレードにたじろぎ、何度か挫折しかけたが、「黒暗森林」半ばぐらいから一気に引き込まれ、ほぼ半年かけて読了。(にしても、驚くべき想像力&構想力。この作家の頭の中はどうなってるんだろう?)


他者の靴を履く アナ―キック・エンパシーのすすめ』(ブレイディみかこ)

内面から湧いてくるシンパシーではなく、認知的なエンパシー(意見の異なる他者を理解する知的能力)を掘り下げた良書。エンパシーには相手の気持ちを感じすぎてしまう負の側面もあり、アナーキーな独立した自己とエンパシーはセットで必要なもの、と説く。

 「たった一つでなければならず、たった一つであることが素晴らしいのだという思い込みから外れること。そうすれば人は一足の自分の靴に拘泥せず、他者の靴を履くために脱ぐことができるようになるのかもしれない。言葉はそのきっかけになる。既成概念を溶かして人を自由にするアナーキーな力が言葉には宿っているのだ」…(理解は易し「身につける」は難し)


岸恵子自伝』(岸恵子)

副題の「卵を割らなければ、オムレツは食べられない」とは、「居心地のよい生活を壊してでも、未知の世界に踏み入ってみろ」というフランスの諺(ことわざ)。人生で3回「慣れ親しんだ卵を《えいっ》とばかりに割った」と言う著者が求め続けた心の自由とは?……その人生の「潔さ」と「豊穣な孤独」に魅了される自伝本。(御年89歳。「国際ジャーナリスト」としても活躍…とは、ちょっとびっくり)


死をポケットに入れて』(チャールズ・ブコウスキー/訳・中川五郎)

1994年に73歳で亡くなったアメリカの作家&詩人ブコウスキーが、その死の3年前から前年まで書き留めた日記風エッセイ。競馬場を日々の居場所にしながら、死と人間存在、長編小説や詩へのこだわり、大好きな酒と女とクラシック音楽&大嫌いなハリウッド映画など、独特の視点で見つめ、語り、魂の果てへと思考の羽根を広げて飛んでいく彼の言葉に魅了され、幾度となく寝際に読んでいた一冊。厭世感満載なのに実に痛快で頗る心地よい読後感は何故?と思う。この日記を書いた頃のブコウスキーの年齢に近づいたせいだろうか…(時折入る、ロバート・クラムの挿絵も味わい深く、心惹かれる)


同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬)

アガサ・クリスティー賞受賞作。《第二次世界大戦時、最前線の極限状態に抛りこまれたソ連の女性狙撃手セラフィマの怒り、逡巡、悲しみ、慟哭、愛が手に取るように描かれ、戦争のリアルを戦慄とともに感じさせる傑作》(ロシア文学者・沼野恭子)、《復讐心に始まった物語は、隊員同士のシスターフッドも描きつつ、壮大な展開を見せる。胸アツ》(翻訳家・鴻巣友季子)という帯に書かれた二人の言葉に惹かれて購入。  その期待通り、読み出したら止まらない超ド級の戦争冒険小説。(彼女たちの戦いは、私たちの戦いと地続き…という意味で、とりわけ若い人たちに読んで欲しい一冊)

 

0 件のコメント:

コメントを投稿