2019/06/11

「阪急電鉄」と「広島電鉄」の中吊り(「広島」の“圧笑”)


 


と、意気高らかにスタートした阪急電鉄の中吊り広告ジャック車両「ハタコトレイン」が「ブラック丸出しで吐き気がする」「呪いの言葉の羅列」などと批判の嵐に見舞われ、わずか10日で“運行中止”になってしまった。(61日~30日までの予定が、611日で打ち切り)

中でも、特に評判の悪かったのが、この2点。

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50万」より「30万」とか、その半分の給料で働かされている人が多い世の中で、一体、どういう時代感覚なの?!と、広告の企画に携わってきた一人として、その驚くほどの鈍さ・無神経さに唖然とするほかないが、さらに酷い(というか、度し難い)のは、「過労自殺」事件を引き起こしブラック企業の代名詞ともなった「ワタミ」の元会長で自民党の参議院議員・渡邉美樹の“名言”を引用したもう一つの広告。
「たくさんのありがとうを集める」ために、自殺に追い込まれた女子社員をはじめ、どれほどの人が犠牲になったのか……という事に思い至れば、このような企業の「言葉」を堂々と呑気に車内広告として掲出するなどあり得ない事のはず。(「地球上で一番たくさんの“ありがとう”を集めるグループになろう」は、現在も「ワタミ」のスローガンになっている)

「コレはちょっとマズいんじゃないの?」と、注意を促す人はいなかったのだろうか…と、不思議に思うが、それほどに広告クリエイターとクライアントの関係の“タコツボ化”が進んでいるのかも? 双方とも、労働者・消費者としての顧客の姿がまったく見えていない気がする。(もともと見えていないのだから、事前チェックをしても気付くわけがない)
とにかく、こんな広告がまかり通っていては業界の衰退に拍車がかかるのは必然。寡占化が進み全体的にクリエイティブのパワーも落ちているし、広告業に未来はないなあ…と、既に未来のない私も残念に思う。

というわけで、“令和の節目”《新しい時代の出発に、この言葉たちが働く皆さんを応援し、自分の志と出会うきっかけになることを願って》企画された「ハタコトレイン」は、不況にあえぐ中小企業の労働者や一般消費者の実態を無視した、上から目線・成功者目線・人材派遣会社目線のメッセージの数々によって多くの人の反発を買い大失敗に終わったが、その荒々しい余波を軽く受け流すかのように「とりあえず、これを見て落ち着こう」とネット上に紹介されたのが「広島電鉄」の中吊り広告。(思わず大笑い)

 

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このコピー、「広島電鉄が運営する“チンチン電車”こと路面電車の広告を考えよう!」というコンペティション(20151月実施)への応募作品の一つとのこと。
当然ながら、作品評価的には賛否両論あり、入選はしなかったようだが、一般の人には大人気。“短い言葉で大勢の人の心をキャッチした”ことが評価されたのか、無事中吊り広告として採用に至ったようだ。(懐が深いなあ、「広島電鉄」!)

ちなみに1位になったコピーは《「快速」はありません。どの街も、好きだから。》……お見事!市民に愛されるチンチン電車らしい“優しさ・温かさ・愛らしさ”を感じるコピーだ。(若いプランナー、デザイナー、コピーライターは、こういう広告を作らなきゃ!)

「快速」は、ありません。どの街も、好きだから。

P.S,

感想(一口メモ)は、今度改めて書くとして、ここ1ヶ月の間に観た映画のタイトルだけ紹介……
『ブラック・クランズマン』
『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』
『僕たちは希望という名の列車に乗った』
『居眠り磐音』
『希望の灯り』
どれもこれも素晴らしく、とても面白い作品だったが、特に好きなのはドイツ映画2本、『僕たちは希望という名の列車に乗った』と『希望の灯り』。
とにかく今年は、“トランプのお陰”なのかハリウッドに良作が目立つし、映画の当たり年と言っていいほど佳作・傑作が目白押し。観たい映画が多すぎて困るが、とりあえず、明日か明後日『金子文子と朴烈』を観る予定。

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