2014/08/27

香川が心配、本田は安心。



先々週のプレミアリーグ、リーガ・エスパニョーラに続いて、先週はブンデスリーガが開幕。そして今週はセリエAが開幕し、欧州4大リーグの熱い戦いのシーズンがまた始まる。

私も、16日のマンチェスター・ユナイテッドの開幕戦(VSスウォンジー)、23日のブンデス「ヘルタVSブレーメン」をJ SPORTSでテレビ生観戦。一人、眠い目を擦りながら、ささやかに開幕気分を味わった。(ヘルタの原口元気、2得点に絡む活躍。素晴らしいスタート!)

で、マンUだが……ホームゲームで痛い敗戦(12)。監督がモイーズからファン・ハールに代わって昨シーズンとは全く違う試合運びを見せてくれるのかと期待したが、アイデアに乏しく連動性も流動性もないぎこちない攻撃&脆弱な守備は相変わらずで、開幕2試合を終えて勝ち点124日のサンダーランド戦も1:1の引分け)。まだ始まったばかりとはいえ、今や、どの相手も「格下」とは言えなくなったビッグクラブの凋落ぶりを、まざまざと見せつけられた思いがする。(ゲーム自体もほとんど見所がなく、観ていて余計に眠くなってしまった)
おまけにベンチの香川に出番なし……移籍の噂も飛び交う中、本人は一貫してマンUでのチャレンジに意欲的なようだが、「マタの控え」という立場は変わらず、今季も限られた出場機会で目に見える結果を出さなければいけないという厳しい状況。(アルゼンチン代表ディ・マリアの加入で、さらに出番は減るはず)その僅かなチャンスに賭ける気持ちも尊重したいが、どうもファン・ハールの意図と香川のプレースタイルが合っていない気がする(言い換えると、香川が必要とされている気がしない)。また、如何に環境・待遇面で恵まれていても、今のマンUが香川の意欲に見合う魅力的なチームのようにも思えない。
とにかく、香川のスピードと想像力あふれるプレーは日本代表にとっても大きな財産。「マンUで戦い続ける」という選択が、そのスピードと想像力を枯渇させ、あのドルトムントでの輝かしい2年間に見せた本来のスキルを失うことにならなければいいのだが……と老婆心ながら危惧している。

一方、ACミランの本田圭佑は、プレシーズンマッチで3試合連続ゴール。しかも先日のTIMカップ(セリエA王者ユベントス、サッスオーロ、そしてミランの3チームで争う、変則的カップ戦)では、1ゴール1アシスト(ダイレクトボレー&絶妙スルーパス)の活躍で大会MVPに輝き、831日の開幕戦に向けて準備万端の様子。
W杯ではゴールを決めたもののコンディション不良(?)で、動きに精彩を欠いていた本田だが、TIMカップでのパフォーマンスを「高い質のプレー、まるで人生がかかっているかのようなハードワーク」とミランサポーターが絶賛したように、W杯後のトレーニングでベストに近い状態までコンディションを戻してきたようだ。体調さえ万全なら、彼に対して余計な心配は無用。
指揮官インザーギからも「グランデ(偉大)」「常に素晴らしいスピリット」と、絶大な信頼を置かれているようだし、不慣れな環境での不本意な昨シーズンとは全く別次元の本田圭佑を見せてくれるはず。常に高い目標を掲げ、新たな課題に向かって突き進む「ミランの10番」を、大きな期待を持って見守りたい。

2014/08/20

2週間のご無沙汰(&反戦映画の名作)



名古屋ロケから戻って早2週間。
(86日は、14時撮影スタート、20時半インタビュー取材終了。21時半からホテル近くの居酒屋「風来坊」でNさん他2名と夕食を兼ねた飲み会。翌7日は一人、世界最大のプラネタリウムがある「名古屋市科学館」へ。朝9時半に着いたのだが、既に長蛇の列……「3時間後の観覧になる」とのことで断念し、同じ地下鉄沿線にある「東山動物園」見学に方針転換。夏バテ気味の動物たちを眺めながら、炎天下、2時間近く歩き回っていたら、コチラもバテバテ状態に。汗だくのシャツを駅のトイレで着替えて帰路に就く)

テープ起こしに手間取り、思うように仕事のピッチが上がらず困ったが、やっと先週木曜にコピーを書き上げ、デザイナーのH君にメール送り。(昨日、クライアントにデザイン・レイアウトを送って、今はチェック待ち)

と、仕事が一段落したところで、金曜(15日)は映画鑑賞。(その後、新宿『鼎』にて飲み会)

池袋の新文芸坐で、反戦映画の名作『軍旗はためく下に』(1972年東宝作品/監督・深作欣二)を観てきた。(新文芸坐では、810日~19日まで「815 終戦の日によせて 反戦・社会派映画特集」を開催していた)
丁度、終戦(敗戦)記念日と重なったせいだろうか、上映30分前にも関わらずフロアは凄い人だかり(新文芸坐の常連らしき人も驚くほどの大盛況)。入場待ちの列が伸びすぎ3人一列に並び直しての入場となったが、混雑は収まらない。あっと言う間に席が埋まる中、何とか前から3列目の端を確保し、腰を下ろした。(観客は中高年7割、20303割という感じ)

そして10分後の午後240分。館内の平和な熱気を戦争の狂気で覆い尽くすように、悲惨な真実を迫真の描写力で伝え切る衝撃のストーリーが始まった。

冒頭のシーンは1971年の戦没者追悼式典、昭和天皇の慰霊の言葉が重なる。その1時間40分後、ロック風にアレンジされた「君が代」が流れるラスト、主人公・富樫サキエ(左幸子)の痛切な独白を最後に映画は終わる。「父ちゃん、あんたやっぱり、天皇陛下に花あげてもらうわけにはいかねえだね」……

原作は直木賞作家・結城昌治の同名小説。あのマイケル・ムーアも絶賛した異色ドキュメンタリー『ゆきゆきて、神軍』(監督・原一男)でも取り上げられたパプアニューギニアでの「敵前逃亡処刑事件」を題材に、残された未亡人が夫の死の真相を探る過程を通じて軍隊の非人間性と戦争の不条理を暴き出す……という作品だが、15歳で終戦を迎えた「元軍国少年」深作欣二は、国家の冷酷と天皇の存在に対しても鋭い批判の刃を真っ直ぐに突きつける。(脚本には、新藤兼人も加わっている)

というわけで、青春期に惜しくも見逃してしまった反戦映画は、お涙頂戴の感動美談で描かれる昨今のエンタメ風・戦争映画とは、質はもとより、その戦争観・国家観に於いて対極にある作品。それ故に、とても現在では作り得ない映画だろうが、例え、悲惨な歴史の真実から目を逸らそうとする人々に「日本を貶める映画」などとバッシングを受けようとも、「愛国」の調べにのって遠く軍靴の音が聞こえる今の時代にこそ観られるべき圧巻の傑作だと思う。(深作作品としても、『仁義なき戦い(広島死闘篇)』『仁義の墓場』に並ぶ傑作!)

2014/08/05

斬られ役の人生(『太秦ライムライト』を観て)



連日続く厳しい暑さの所為で、外へ出るのも気が引ける。お陰で、ここ1ヶ月の間に劇場で観た映画は、たった2本という寂しい有り様。(その分、『家族狩り』、『若者たち2014』に加え、録画して観ている『アオイホノオ』、『孤独のグルメ』など、TVドラマは充実一途……特にオススメは『家族狩り』と、柳樂くん主演の深夜ドラマ『アオイホノオ』)

でも、その2本が、大当たり。

まず、2週間程前に隣駅のTジョイで観た『太秦ライムライト』……「5万回斬られた男」の異名を持つ大部屋俳優・福本清三、71歳にして初の主演作だ。

物語のモチーフは、チャップリン晩年の名作「ライムライト」。年老いた道化師と才能豊かな若きバレリーナの出会いと別れ――師弟愛を超えた同志的思慕を描いた、切なく美しいラブストーリーである。(舞台で脚光を浴びる「テリー」の姿を見ながら、「カルヴェロ」が一人静かに死んでゆくラストは、名曲「テリーのテーマ」の美しい旋律と共に忘れられない名シーン)
その昔、「月曜ロードショー」の解説者だった今は亡き映画評論家・荻昌弘氏が、この映画の放映後、「私は、今日は何も言うことがありません」と前置きし、チャップリン自身の「美しさの中には、必ず哀しみがある」という言葉だけを紹介したそうだ。

そんなエピソードと「ライムライト」の中の名セリフ「人生に必要なもの、それは勇気と想像力、少しのお金だ」「死と同じように避けられないものがある。それは、生きること」などを頭に浮かべながら、舞台を100年前のロンドンから時代劇のメッカ・東映京都撮影所「太秦」に移して繰り広げられる、悲恋なき現代のライムライト、斬られ役人生50年の老優と女優志望の少女の“芸の継承”の物語に見入った。

フィルムの雰囲気は、昭和の時代劇風。勧善懲悪ものの時代劇が飽きられ、プロフェッショナルな殺陣の技もCGにとって代わられる中、一人、少ない出番に備え、木刀を振い稽古に励む寡黙な主人公「香美山」の姿が美しい。結局、映像現場に自分の居場所はなく、映画村のショーで刀を振るうだけなのだが……
そんな折、香美山は、時代劇に憧れ、彼の技と生き方に心酔する少女「さつき」と出会う。「殺陣を教えてほしい」と懇願する彼女を軽くいなし、すぐには受け入れなかった香美山だが、いつしかその直向きな思いにほだされ、自分の技と時代劇への想いを伝えるために稽古をつけ始める。そして、端役の座から、一気にスターダムへと駆け上がる「さつき」の姿を見届けて、静かに「太秦」から身を引いていく……という「ライムライト」的展開になるのだが、そこからが「太秦にはエキストラは一人もいない。いるのは表現者だけだ」という名セリフに通ずる「太秦魂」を感じさせる一ひねり。
嘗て「木枯し紋次郎」「鉄砲玉の美学」など、数々の時代劇や任侠映画を世に送り出した東映京都の重鎮、中島貞夫監督(本人)がメガホンをとる劇中劇『江戸桜風雲録』の最強の「敵役」として香美山はカムバック。その大立ち回りがそのまま映画のクライマックスとなる。

桜吹雪の中で見事に斬られ、天を仰いで崩れ落ちる「香美山」の姿、その画の美しさ。殺陣一筋に生きた老優の人生と技が体現する時代劇の歴史に対するリスペクトが込められた、この鮮やかなラストカットを観るためだけでも、暑さの中、映画館に足を運ぶ価値があるというもの。
廃れゆく「時代劇」への郷愁に身を委ねながら、「太秦」の熱い映画魂に胸を焦がされる104分。表現者「福本清三」の無垢で静かな眼差しと顔に刻まれた深い皺、その一途な生き様と際立つ存在感に拍手を送りたい。

で、もう1本の大当たり『グランド・ブダペスト・ホテル』(監督・脚本:ウェス・アンダーソン)については、いずれまた……


明日は、仕事で6年ぶりに名古屋へ(1泊)。撮影は午後2時スタート、取材は午後6時から。夜は、気心の知れた仕事仲間のNさん(クライアント)とサシ飲みになるはず。


2014/08/02

老舗の鰻と東京タワー



今週の木曜(21日)は久しぶりの遠出(都内ですが…)。夏バテ気味の体に「喝」を入れようと、以前から行ってみたかった東麻布にある老舗うなぎ料理店『野田岩』へ。

早めに家を出て11時半前に着いたのだが、土用の丑の日の週ということもあり、店の前は予想以上の人だかり。順番表に名前を記入して1時間後、ようやく名前が呼ばれ1階奥のテーブル席に案内された。

目当ての「うな重」は、値段の安い順(鰻の目方の軽い順)に、菊・梅・萩・山吹・桂とあり、私とツレは、やや奮発して真ん中の「萩」を注文。待つこと5、6分、肝吸いとお新香、そして箸休めの大根おろしがテーブルに置かれ、その数分後に、真打登場……食欲をそそる見事な色合いに焼き上がった天然うなぎは箸でサクッとほぐれる柔らかさ。甘さを抑えたタレとの絡みも絶妙で、シャキッとした江戸前らしい芳醇な味わいに「並んで待つだけの価値あり」と大満足の舌鼓。さすが敬愛する池波正太郎が愛した「うなぎ屋」、品格が違うわ!と唸りながら店を出た。

その足で次に向かった先は、目の前の桜田通り沿いの坂上に聳え立つ「東京タワー」……長年、東京に住んではいるものの、タワーの中に入るのは、これが人生2度目(50数年ぶりなので、1度目の記憶は朧)。それでも、駐車場を横切り2階の入り口のドアを開けた途端に、遠い昔、足繁く通っていたような懐かしさを感じるのは何故だろう?と、不思議な気分でフロアを見渡すと、「今どき、こんな土産、誰が買うの?」と首を傾げる品々が並ぶ「東京おみやげたうん」やチープな雰囲気の飲食店に目を奪われ、何とも言えない緩さの中で昭和の匂いに包まれた。
決して「昭和モダン」などという洒落た言葉では形容できない、その垢抜けなさが「懐かしさ」の正体なのだろうか。3階のフロアには映画「三丁目の夕日」の舞台となった「夕日町三丁目」のジオラマも展示されていた。

で、「東京タワー」の見所と言えば、ぐるり東京を見渡す「展望台」……大展望台へ向かうエレベータは1階にあり、見学料は大展望台+特別展望台のセットで1,600円(大展望台は地上150m、特別展望台は250m)。
数十年前ならいざ知らず、今は高さ世界一の「東京スカイツリー」を筆頭に、「ミッドタウン・タワー」「虎ノ門ヒルズ」など、特別展望台並みの高さを誇る超高層ビルや、150m以上のビルがアチコチに立ち並ぶ大都会・東京。そのせいか「東京名所」的に外国人観光客の多さは目を引くものの、眺めとしての希少性とインパクトに欠け興奮度はイマイチ。もちろん、エレベータを降りた途端に大歓声といった光景も見られない。

とは言え、その旧さ故に、現在の都会的な「刺激」や「興奮」とは無縁の長閑さとレトロ感を保ち、愚直なまでに何十年も4本脚で屹立し続けてきた姿こそが「東京タワー」の不変の魅力。
私にとっても、林立する高層ビル群を眺めながら、まだビルが低かった時代の街の残像を俯瞰しているような気分にさせてくれる「懐かしい場所」だった。