2013/02/25

泣きのギター



昨夜のNHK『SONGS』はラテン・ロックのスター「サンタナ」。

私がその名を初めて耳にし、代表作「ブラック・マジック・ウーマン」を聴いたのは40年以上も前。当時、新宿の街で偶然知り合ったラジカルな年上の関西人に「シカゴとかツェッペリンとかタダのブラスバンドやんか……えっ、サンタナ知らんの? ごっつええよ~、革命的で、泣けるで~」みたいな感じで仕切りに薦められたのがきっかけだった。

今では名前も顔も忘れた“関西男子”の熱い口調&束の間の刺激的な出会いを思い出しながら30分、ウッドストックや来日映像を楽しんだのだが、『SONGS』の前にテレ東『美の巨人たちパリSP』(ナビゲーター小林薫)を見ていたこともあって、やはり胸に残ったのはナベサダとのセッションで聴かせた「哀愁のヨーロッパ」(まあ、元々大好きな曲だし)……で、この曲、カルロス・サンタナがプロコル・ハルムの曲に触発されて作ったものらしいが(恐らく「青い影」か?)、初めて聴いたときは、邦題どおりの漂う哀愁に心が捉われ、何とも言えぬ儚さと寂しさに包まれたものだった。

その狂おしい響きが“泣きのギター”と呼ばれ、情感的で湿っぽい演歌の世界に近いということで、日本でも大ヒットしたわけだが、改めて「哀愁のヨーロッパ」を聴いてみると、壮大な無常感と言うか、青春期の安っぽい感傷や演歌的な涙とは異質のスケール……何世紀にも渡る長い歴史の中で繰り返されてきた人間の営為、その膨大な光と影に真っ直ぐ添う純粋で潔い残響のように感じられるのは、単に私が年を取ったせいだろうか。






2013/02/18

気になる「オスカー」の行方。


先週の土曜(9日)、「新宿バルト9」で観た映画『ゼロ・ダーク・サーティ』。(午後2時上映開始、ほぼ満席)

アカデミー賞の有力候補ということもあり、以前から注目していた作品だが、感想を一言でいえば「オスカーが不似合いな力作」……「面白い!」と単純に賞賛できるようなエンターテインメント性もなければ、熱い感動や共感とも無縁。観終った後も重苦しい余韻が残るだけで爽快感はナッシング。でも、徹底した取材をもとに描かれた事実の重さと見事な表現力に目は釘づけ、胸は混沌、という映画の域を超えた強烈な呪縛力と漲る緊張感が、すべての不満を凌駕する。

で、その内容だが、20115月に実行された、米海軍特殊部隊(ネイビーシールズ)によるオサマ・ビンラディンの捕獲・殺害ミッションの裏側を、主人公であるCIAの女性分析官「マヤ」の視点を通して描いたもの。物語は9.11の同時多発テロから始まる。

真っ黒の画面に、当時の警察無線だろうか、ワールド・トレード・センター内に残された人々の悲痛な声だけが響き渡る冒頭……否応なしに高まる緊張感の中、さらなる緊張を強いるように明転した映像はパキスタンに飛び、CIAによるテロ容疑者に対する苛烈な「拷問シーン」を執拗なまでに描き出す。
もちろん、観ていて気分が良いはずはないが、「これは、正当な行為だろうか?」と、その是非の判断を観客に迫る映像の力に捉われ目を背けることはできない。

その後、「マヤ」の執念により(と言ってもその心情を理解するのは難しい)ビンラディンの潜伏先が判明し、特殊部隊の急襲作戦によって殺害に至るまで、秘密のベールに覆われたCIAの超法規的な活動がドキュメンタリータッチで描かれ、「この事実の告発を、あなたは、どう考えるのか?」という一貫した問いだけを観客の胸に残したまま、2時間半の「映像によるジャーナリズム」は幕を閉じるのだが、映画館を出た後、さらに湧き出す大きな疑問……「米海軍特殊部隊によって殺害された男は、オサマ・ビンラディン本人なのだろうか?」(いやそもそも、9.11の首謀者は、本当に彼なのか?)

というわけで、制作者の明確な意図と強い意志を感じる刺激的な作品であることは間違いないし、個人的にも文句なしの一本だが、世界的に大きな注目を集めるアカデミー賞受賞作として相応しいかどうかは別問題。いくら「中立的な立場で隠された真実を炙り出した作品」であっても、徹底的に人間の尊厳を侵しつづける拷問シーンに象徴されるCIAの超法規的活動の実態を暴くリアルな映像は、その対象である人々(イスラム圏の反米的な層及び世論)から見れば許しがたいビジュアルであり、燃え盛る憎悪に油を注ぐようなものではないだろうか。その意味で「これがオスカーをとったら、マズイでしょ!?」と、政治状況的に少し危惧しているが、さて?

ちなみに、タイトルの意味は軍事用語で「午前030分」、米海軍特殊部隊がオサマ・ビンラディンの潜伏先に突入した時刻を指すそうだ。




 

2013/02/10

ぶっ飛びアート鑑賞。


昨日は、いま話題のアート展「会田誠 天才でごめんなさい」を観に六本木・森美術館へ。

駅から美術館に行くまでの道のり、至る所にその展覧会のポスターが貼られているのだが、どんなものかと言うと、美しい自然に囲まれた滝の上から下まで、水と戯れるスクール水着の女子高生が埋め尽くしている絵……事前に見知っていたとはいえ、改めて街中で見るとその怪しさに“何じゃ、こりゃ~!?”と、驚くばかり。

ところが、いざ会場に入って色々な作品を見た後に、もう一度この『滝の絵』に出あうと、かなりマトモで健全に思えてくるのだから、不思議。さほどに、他の作品が刺激的でぶっ飛んでいるというわけだが……

先ず、最初に目にした作品『切腹女子高生』、のっけから「すげーや」と声が出ちゃいました。タイトル通りたくさんの女子高生が刀で自分を自分で切り刻んでいる絵だが、真ん中で刀を構えすっくと立っている娘だけは無傷。思うに、リストカットや援助交際などで自分を傷つけず、本当に切るべきものに立ち向かうべし、と言っているような痛々しくも勇ましい感じ。

その隣の『鶯谷図』は、大量のピンクチラシ(女の子の写真付)をコラージュして桜の樹に模したもの。欲望うごめく都の闇に咲く桜(=女)、否、どこで咲こうが桜は桜、汚くないさ、とてもキレイだ!みたいな(笑)……で、『日本語』と題された立派な“絵巻”の文字を真面目に読んでいると小バカにするように「氏ねゴミカス」とか書いてあり(ネットの掲示板のつもり?)、思わず「やられた!」と一本取られた気分に……

と、イチイチ作品を観た時の感想(反応)を述べているときりがないほど、ナンセンス&グロテスク、でも面白くてドキドキ(?)するような作品が目白押し。(あるフェミニスト団体からの抗議に配慮したらしく、18禁の展示場もある)

中でも特に気に入ったのは(と言うか笑いっぱなし)、『日本に潜伏中のビン・ラディンと名乗る男からのビデオ』(2005年)。
会田誠自身がビン・ラディンに扮し(友人に「お前の顔、ちょっとビン・ラディンに似てるよな」と言われたのが発想の発端らしい)、「ワタシ、引退します。日本に来てから毎日ダルくて、やる気がなくなった……日本、ぬるま湯ね」とか「昔の日本は好きだけど、今は嫌い。バカの国になった……コイズミ、バカ。バカが首相をやっている国、バカね」などと炬燵に入って酒を飲みながらくだを巻いているだけのビデオだが、緊迫した中東と平穏な日本の距離感・温度差が伝わるオモシロ作品。

その他『一人デモマシーン』、『ジューサーミキサー』、『灰色の山』、戦争画RETURNSと題された作品群など、社会の様々な事象を素直に捉え、痛烈な皮肉で表現し返すという、一種爽快な離れ業に触れながら心湧き立つ時を過ごしたわけだが、そのファイヤー状態のままに、滅多に買わない図録とポストカード3枚を購入。

それでも脳ミソの火は収まらず、帰りがけに池袋リブロで、高村薫『冷血』、村上龍『55歳からのハローライフ』、そして友人から薦められた早川義夫『たましいの場所』など、いつ読めるかも分からない本を買いだめ。

で、今日もなんだか、気分爽快……誠に、凡才でごめんなさい。

2013/02/07

酒三昧


1月中旬に受けた「特定健康診査」も大した問題がなく無事終了(来週、循環器系の検査が控えているけど)。ホッと一息といった感じで、2週連続の新年会。

先週(30日)はPOG仲間9人と浅草橋「ちゃんこ成山」で、旨い鍋を囲んで“どんちゃか”。今週(6日)は依頼された仕事の打合せを兼ね、池袋「酒菜家(さかなや)」で友人と“差し飲み”。

で、初めて行った「酒菜家」という店(場所は池袋駅西口から2、3分、演芸場の少し先)、入口が変わっているくらいで(茶室のにじり口のような感じ。腰を屈めないと入れない)内装も雰囲気もあまり“お洒落感”のない昔ながらの気楽な居酒屋だが、日本酒好きの友が手配してくれた店らしく、その品揃いが半端じゃない。(160種類以上あるそうだ。まさに日本酒天国)

ならばと、青森「田酒」を皮切りに、岩手「あさ開」、福島「飛露喜」、青森「じょっぱり」……と、馴染みある東北の酒を味わいつつ徐々に西下。途中、店長らしき人のウンチクに耳を傾けながら、銘柄も味も忘れるほど飲み続けてしまった。(酒に合わせる料理も豊富で特に魚が旨い。刺身は厚切り、干物は目の前の七輪であぶり焼き)

さて、そんなに飲んで、たらふく食べて、勘定は?……と、薄い財布を出しかけたら、心優しき友が「仕事の打合せだから俺が払う」と太っ腹の一言(さほど打合せもしてないけどなあ)。少し気が引けたが、持たざる者は、素直に甘えて、即「ご馳走さま」。

まっ、美味い酒の借りは、巧い仕事で返すということで、いいでしょうかね~。

 

 

 

2013/02/02

耳鳴りが……


2週間ほど前から続いていて、一向に消えない。

 
肩や首が凝っているせいかとも思ったが、頭を振っても、軽く運動しても「キ~ン」「ササ~」とヤな感じ。

 
耳の問題ならまだしも、脳神経にでも支障をきたしているのか?と、さすがに気になって今日の午前中に耳鼻科で検査をしたところ、高音域の聴力が低下しているとのこと。耳鳴りはその影響らしい。要するに「加齢現象」というわけ。

 
な~んだ、それじゃあ仕方ないじゃん。と、あっさり観念し気分的には楽になったのだが、「耳鳴り」を消す治療方法はないとのこと……やれやれ。飛蚊症(目)、花粉症に続いて「耳鳴り」とも長い付き合いになりそうだ。(なんでヤな症状が顔面に集中するわけ?)


でも、仕事中やテレビ・映画を観ている時、酒を飲んでいる時、人と話している時などは全く気にならないので、さほど気に病む必要はない。
 
 
まあ、原因もわかったことだし、今日は焼酎を傍らにテレ朝の『最も遠い銀河』を見て(以前読んだ小説のドラマ化)、明日は、トム・クルーズの映画『アウトロー』でも観に行こうかな……

 
同輩の皆さまも、ご自愛のほど。