2012/09/29

昨夜のテレビから。


まずBS日テレ夜8時からの『パリで遭いましょう』……この番組はパリ全20区の魅力を1区ずつ紹介していく内容で、昨夜は「5区カルチェラタン界隈」。

「カルチェラタン」と言えば、セーヌ左岸、ソルボンヌ大学を中心に広がるパリ随一の学生街として有名だが、観光スポットというより「パリ五月革命」の象徴的舞台としてその名を思い浮かべる人も多いはず。私自身、この界隈に縁の深いアルチュール・ランボーやサルトル&ボーヴォワール、作家ポール・ニザンらの名前とともに思いを馳せた青春期の“憧れの街”でもある。(カルチェは「地区」、ラタンは「ラテン語」。カルチェラタンは「ラテン語を話す教養ある学生が集まる地区」という意味が語源だそうだ)

そのカルチェラタンと切っても切り離せないのが、「カフェ」と「映画館」。番組では、その両方の文化に惹かれイランからパリに移住してきた映画評論家がナビゲーター役として登場(イランの巨匠アッバス・キアロスタミをフランスに初めて紹介した人らしい)。以前に日本のクルーがキアロスタミのインタビュー取材を行ったという洒落たカフェに陣取り「シャンポリオン通り」に立ち並ぶミニシアターを案内してくれたのだが、この路地裏の映画館街が何とも言えぬ風情と文化の薫りが漂う魅惑的な所……映画大好き、路地裏大好きの私にとっては正に垂涎もの、というより発狂ものの空間に思わず感嘆の溜息。40年の時を超え、「カルチェラタン」は再び憧れの街になってしまった。

で、話は少しずれるが、キアロスタミが国境を越えて監督した2作目『ライク・サムワン・イン・ラブ』は、日本の俳優を使い、日本で撮影し日本語で作られたもの。偶然にも昨日の昼間、渋谷・ユーロスペースで観てきたばかり……その感想は後日書こうと思うが、この「シャンポリオン通り」で観ることができたら、より深く胸に刺さるのでは?と、番組を観ながら勝手に思った次第。日仏合作なので、当然パリでも公開されると思うが、ぜひ、この映画館街の何処かで上映して欲しいものだ。

続いて、10時からはNHKスペシャル「天才芸術家・草間弥生」。
水玉の女王と称される草間さんのドキュメンタリー番組は、何度もBSの特集で観てきたので改めての感想はないのだが、いつ観てもその壮絶な人生と決して枯渇しない創作意欲、そして強烈かつ膨大な作品群に只々感嘆&圧倒されるのみ。番組内で篠山紀信が「草間さんは、日本の国宝ですよ」と言っていたがその通り。本当に凄いアーティストだと思う。

この世から消えてほしくない人がまた一人、増えてしまった。

※今日『梅ちゃん先生』が思いのほかあっさり終了。毎朝ソコソコ楽しませてもらったので、別に文句はないが、途中から「結婚奨励ドラマ」になってしまった感じで、時々背中が痒かった。








2012/09/23

君をのせて


昨夜遅く、デザイナーのウエちゃんから、メールでコンペ仕事のポスター・デザイン案が届いた。

すご~くいい感じ。(もちろん、コピーもワルくない!)

これなら間違いなくイイ勝負ができるんじゃないだろうか……と、俄然テンションは上がっているが、落ちた時のショックが大きいから過剰な期待は禁物。

と、静かな雨の音で高ぶる心を抑えながらYou-Tubeで「君をのせて」映画『天空の城ラピュタ』よりの大合唱を何度も聞いているオレ。

それにしても急に涼しくなった。

明日は墓参りに行こうかな……





2012/09/19

気分は悪いが、熱くならずに。


ここ一週間、10社コンペの案件(ポスター制作)とは言え仕事が忙しいのは結構なことだが、連日、溜息しか出てこないようなニュースばかりで、イヤになる。

「愛国無罪」と叫びながら大暴れする人たちを見ているのも甚だ気分が悪いが、急に勢いづいて「9条改正」「軍備拡充」を叫びだす政治家たちの顔を見るのも同じくらい気分が良くない。

そのせいで、昔、仲畑貴志さんが書いた「JR九州(ポスター広告)」のコピーを思い出してしまった。

地球は、まったく驚いている。
人類には、ホント困ったものだと。
◎みんな仲よくするのです。 
◎いじわるはイケマセン。
◎ズルもだめです。     
◎わがままもやめましょう。
こうして注文を並べてみると、
幼稚園のお約束みたいだね。
週末はひとつ、子供の頃にもどって、日帰りの旅でもいかがです。

というわけで「領土問題は、もうウンザリ。JRに乗って旅に行きたいなあ」という感じだが、今朝の朝日新聞・文化欄に載っていた記事は興味深い視点で書かれていて面白かった。

タイトルは「尖閣・竹島 なぜ熱くなる」……(ホンに、ワタシも疑問です)

進化心理学が専門の明治大学情報コミュニケーション学部長・石川教授によると、「土地をいかに確保するかが生死に直結する自然環境で、生物は長く進化してきた。その環境では自分の領地の内部で侵入者に対して激しく抗議し、しかし領地の外部では平和的に振る舞う『なわばり戦略』が有効だった」そうだ。でも、「なわばり意識が遺伝子に組み込まれているんだから、仕方ない、というのが進化心理学の結論ではない。『過去の環境においては最適解だった』がポイント。今、人間は原始的な自然環境で生きているわけではない。動物的な感情を発動しないでどう理性的に行動するかが最適解ではないか」と説く。

さらに領土問題の経済的利害について、尖閣近辺の学術調査に携わったことのある自称“右派のナショナリスト”の猪間明俊氏(元石油資源開発取締役)は、「実際に掘らないとわからないのが海洋資源。仮にあるのが確実でも、掘れなければそれは資源ではない。膨大な資金を投入するリスクの大きな事業を、国際的に係争している地域であえてする事業者がいると思いますか?」と疑問を投げ、実際問題としては日中共同開発以外に道はないと言う。

では、漁業は? そもそも尖閣周辺の海は日中漁業協定で双方が操業できることになっている。もしこれ以上に実効支配を強めたら、どうなるだろう。中国は軍艦を出すだろうし、対抗上日本も護衛艦を出し、一触即発。漁業どころではなくなる。それ以前に、「日本の漁獲量はこの10年で半減し、中国は倍増。漁業従事者の高齢化など構造上の問題で、尖閣の実効支配を強化しても解決しない。日本がもはや海洋国でなくなったことの方が重大」(軍事ジャーナリスト・田岡俊次氏)……国防上でも、重要なのは制空・制海権で、寄港地も造れない小さな島に軍事上の意味はないらしい。むしろ、米国の出方次第(領土問題には、既に中立・不関与を公言)では「反米」「反中」の気運が国内で盛り上がり日本が孤立しかねないとのこと。

う~ん、なんだかなあ……である。双方が折れずに揉めていてもちっともいい事はなさそうだ。私的にも、いくら「尖閣・竹島」に資源的・国防的・経済的価値があると言われても、戦争で失われるものよりも大きな価値があるとは到底思えないし。

いっそ、仲畑さんのコピーを見習い、尖閣も竹島も、そこで長く暮らしている人がいない以上、「誰のものでもない。地球のものだ!」と言い放ってしまいたくもなる今日この頃。とにかく、あまり熱くならずにいきましょうか。

2012/09/11

最強のふたり!!


先週の月曜(3)に、新宿武蔵野館で観たフランス映画『最強のふたり』。

上映開始は1410分、昼メシの時間も考慮し武蔵野館には1時間前に着いたのだが、チケットと一緒に手渡された整理番号は「84(指定席無し、番号順に10人ずつ入場)。よく利用する130席程度のミニシアターだが、1時間前でこの席順というのは記憶にない。超満員になるかも……と、予想外の人気に驚きながら東口駅ビル内のレストラン街へ向かったが、案の定、食事から戻ったらフロアはすごい人だかり。立ち見も出るほどの盛況だった。

で、その盛況ぶりに応えうる映画であったかと言うと……コレが文句なしの傑作。一週間経った今も、ラストの清々しい余韻が胸に残っている。

映画の舞台はパリ、主人公は二人。脊髄損傷で車椅子生活の大金持ちフィリップ(フランソワ・クリュゼ)が、職安向けの“アリバイ作り”でヘルパー面接に訪れたスラム育ちのアフリカ移民ドリス(オマール・シー)と知り合い、障害者と健常者、雇用主と雇用者の垣根を超えて友情を育み、お互いの心の空洞を埋めあいながら、それぞれが生きざるを得ない場所で、再び生きる気持ちを取り戻していくというハートウォーミングなお話。実話に基づいた「再生の物語」だ。

といって「お涙頂戴」的なエピソードは一切なし。もちろん「身障者介護は斯くあるべき」というような説教がましい声高な主張もない(身障者介護や雇用・移民問題を背景にしているが)。全体を通してストーリーに特別ドラマチックなうねりもなく、屈託のないユーモラスな会話を軸に、心の距離を縮めていく二人の姿を淡淡と描くだけ。その分、日常と近接する「リアル」を感じ、境遇も人格も対照的な二人の会話を楽しみながら、自然にその表情の中に浮き上がる、感情や感覚の揺れを見逃すまいとスクリーンに見入ってしまう。微笑ましい二人の関係が破綻なく続くことを願いながら。そして何度も声を出して笑った後に見せられる「孤独」……その深さにお前ならどう寄り添えるのか、どう折り合いをつけられるのか、と静かに問われている自分の人生に気づく。

失った部分ではなく、残された身体と心で生きているという当たり前の姿を見よう。欲しいのは肉体的な多少の快感と日々の些細な「いい気分」の積み重ね。淋しかろうが、虚しかろうが、それだけで人生は生きるに値するもの。ユーモアこそ最大の思いやり、最良の薬。つらい時こそ笑おう、楽しい話をしよう、身近で生きる人たちと。神などいない、国家など当てにしない。「人を救えるのは、人だけ」なのだから……そんなメッセージを全身で素直に感じ取ることができる珠玉の一作。『最強のふたり』という邦題も見事にハマった。

※主演の二人の演技も感動モノ。特に、ちょっと雰囲気がダスティン・ホフマンに似ているフランスの俳優フランソワ・クリュゼ。サスペンス映画『唇を閉ざせ』を観た時から注目していたが、本当に上手くて独特の存在感のある素晴らしい役者だと思う。


2012/09/07

アレレな、ミュージカル。


《ブロードウェイで大ヒットを記録した、トニー賞受賞の話題作『ミリオンダラー・カルテット』が今秋来日決定! 魂を震わす、炎のロックを聴け!!》

という宣伝コピーにそそられて、チケットを買い求めたのは2ヶ月前。ミュージカルなど滅多に観ない私だが、全米が熱狂したという“炎のロック”に出会う日を心待ちにしていた。
そして昨日、オールド・ロックンロールファンで賑わう渋谷・ヒカリエ11階「東急シアターオーブ」へ足を運んだわけだが……

開演は午後2時。舞台は1856128日・テネシー州メンフィスの小さなレコード会社(サン・レコード)のスタジオ。そこに偶然、エルヴィス・プレスリーやジョニー・キャッシュら、アメリカのポップス史上に欠かせない4人が集結、互いの音楽観の違いやプライドをぶつけ合いながら一夜限りのセッションを行うというお話で、本編は約80(寸劇2割、演奏8)。その後は閉演まで20分程ライブが続く。

で、何なのコレ?ちっとも面白くないじゃん!?……というのが終演後の偽らざる感想。話に洒落たヒネリもなく、一貫して退屈な“小芝居”に付き合わされた感じで眠気さえ覚えたほど時折ダジャレに苦笑するだけ。内容的にセットも小劇場並みで、美術・照明もありきたり。肝心の歌といえば本物にはほど遠く興奮度も低レベル。当然、魂が震えるはずもなし。

なのにラストは、会場のジジババ失礼!総立ちで大騒ぎ……微笑ましいやら、馬鹿らしいやら。

賞賛の指笛を鳴らし、ノリノリで手拍子を打つ寛容な方々には申し訳ないが、これで9,500円とは、日本のミュージカル・ファン&ロックンロール・ファンも見くびられたものだ。と若干ムカつきながら会場を後にしたワタシ。

唯一の収穫は、超ひさしぶりにカントリーの名曲『ゴーストライダーズ・イン・ザ・スカイ』を聴けたこと。

Yi-pi-yi-o, Yi-pi-yi-ay(イーピアアイオー、イーピアアイエイ…懐かしいメロディだけが耳に残った。



2012/09/01

夏の終わりの3曲


今日から9月。

厳しい残暑は続くけど、今年の夏よ、サヨウナラ。


夏の終わりのハーモニー/井上陽水・安全地帯




夏なんです/はっぴいえんど




サマータイム/ジャニス・ジョプリン