◎再会
7月3日……「(遠方に住む齢70を越えた男同士)4人で会うのは恐らくこれで最後だと思う」という北海道に住む友人(SINYA)の誘いで20代前半の労働運動時代から長きに渡り付き合いがある仲間4人が神保町の居酒屋「とり瑛」に集まった。
(17時待ち合わせの予定だったが、私は2時間ほど前に神保町に到着し古本街を散策……神保町のランドマークになるべくリニューアルされた「三省堂」で、エントランスに山積みされた村上春樹の新作を少しだけ立ち読み。「まあ、買わなくてもイイか…」とスルーした後、古本コーナーで歌人・道浦母都子の『四十代、今の私がいちばん好き』を購入。新刊本高騰のご時世、何と税込600円……他にも何点か欲しい本があり、この古本コーナーに寄るだけでもキレイになった新しい「三省堂」に入る価値アリ!と実感)
で、飲み会だが、俳句の達人になった感のある調布在住T君に刺激をウケたらしいSINYAが自作の俳句を披露しT君に指導を受ける場面があったり、「高市鬱」で悩む仙台の友M君に同調して現政権への憤りをぶちまけたり…4者4様、政治・文学・お互いの家族・組合時代の仲間の消息等、20代の頃とさほど変わらない話題で盛り上がった。(飲み会の後は喫茶店「ラドリオ」でコーヒータイム。午後9時過ぎ散会)
翌日、グループラインで「こんなバカな世の中で、笑って死ねるワケもなし。簡単にくたばれないぜ、お互いに」と発破をかけつつ暗に「再会」を促したが、お互い高齢、また会える日は来るのだろうか?
私たちの日常は、感覚を鈍麻させることによってしか、とうてい耐えられないような騒音に満ちているが、一対一の関係性は不変。同時代を共に生き、価値観を共有できる仲間がいることを改めて有難く嬉しく思った。
◎映画(7月・8月)
『急に具合が悪くなる』(監督・濱口竜介/2026年製作、フランス・日本・ドイツ・ベルギー合作)8/4池袋シネマ・ロサにて。
《「ドライブ・マイ・カー」「悪は存在しない」の濱口竜介監督が、パリを舞台に同じ名前の響きを持つ女性2人の魂の邂逅を描いたドラマ。がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者・宮野真生子と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者・磯野真穂が交わした20通の往復書簡「急に具合が悪くなる」を原作に、偶然出会った2人の女性の交流と世界に対峙する姿を描き出す。
パリ郊外の介護施設「自由の庭」で施設長を務めるマリー=ルー・フォンテーヌは、入居者を人間らしくケアすることを理想としながらも、人手不足やスタッフの無理解に悩まされていた。そんな中、日本人の舞台演出家・森崎真理と出会ったマリー=ルーは、がん闘病中の彼女が描く演劇に勇気をもらう。同じ名前の響きを持つ偶然に導かれて交流を始める真理とマリー=ルーだったが、あるとき真理は急に具合が悪くなる。真理の病の進行とともに2人の関係は深まり、互いの魂を通わせ合うようになっていく。(映画.comより)》
一個人が資本主義という収奪的システムの中で、如何に「個」としての自分を守っていけるのか?という大きなテーマを、主演二人の関係性を通してとても分かりやすく身近に感じさせてくれる。という意味で、そこはかとなく良い映画。スクリーンから漂う心地良い空気感込みで、今年のベスト1ではないだろうか?(主演二人に加え、場を豊かに鎮める長塚京三の類まれな存在感…やはり名優!)
『トロフィー』(監督・孫明雅/2026年製作、日本)7月某日、テアトル新宿にて。
《在日コリアンの少女を主人公に、家族・友人との関係や、自らのルーツと向き合う日常を丁寧につむいだドラマ。是枝裕和監督率いる映像制作集団「分福」のメンバーとして是枝監督や西川美和監督の監督助手を務めてきた孫明雅が長編初メガホンをとり、在日コリアン3世である自身の経験や葛藤の記憶を出発点にオリジナルストーリーで描き出す。(映画.comより)》
在日コリアン社会ならではの「葛藤」と「人情味」が合わせ技のように嚙み合い、全編に渡って感じられる心地良い一本。井浦新(父サンジュ役)、市川実和子(母ミリョン役)もさすがの演技力だったが、思春期を生きる中学生ソヒを演じた「恒那(ハンナ)」の瑞々しく自然な演技・存在感が強く印象に残った(私的に「パッチギ」の沢尻エリカの姿がオーバーラップ……高い将来性を感じる)。
『左利きの少女』(監督・ツォウ・シーチン/2026年製作、台湾・フランス・アメリカ・イギリス合作)8月某日、アップリンク吉祥寺にて
《「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」などショーン・ベイカー監督作のプロデュースやベイカー監督との共同監督作「テイクアウト」で知られるツォウ・シーチンの単独監督デビュー作。ツォウ監督の故郷・台湾を舞台に、厳しい現実と向き合う母娘とその祖父の多世代家族が織りなす物語を、幼い少女の視点からエネルギッシュかつ繊細に描き出す。
台北、夜市の麺屋台。5歳の少女イージンは、借金を背負ったシングルマザーのシューフェンとハイティーンの姉イーアンと共に、生活を立て直すため田舎町から戻ってくる。イージンは昔気質の祖父に、利き手である左手を「悪魔の手」と咎められ、罪悪感を抱くようになる。その悪魔の手は図らずも、家族それぞれが胸に秘めてきた罪をあぶり出していく(映画.comより)》
誰にでも勧めたい映画ではないが、個人的に大好きな作品。生身で生きる人間たちが、その息遣いによって醸し出す街の喧騒……インバウンドで溢れる今の東京にそんな場所はあるのだろうか?と、舞台になった台湾の「夜市」を、どこか懐かしい風景のように眺めながら、まだ食べたことのない「臭豆腐」を味わっているような気分で印象的なラストを迎えた。



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