◎映画『ホールド・オーバーズ 置いてけぼりのホリディ』
(監督:アレクサンダー・ペイン/製作:2023年、アメリカ)
《1970年12月の、ボストン近郊にある名門バートン校。誰もが家族の待つ家に帰るクリスマス休暇が近づく。しかし、学校に残る者たちがいた。
生真面目で融通が利かず、皆に嫌われている古代史の教師ハナム。彼は冬休み返上で、帰れない生徒の面倒をみることに。学校に残る生徒の一人は反抗的なアンガス。ベトナム戦争で息子を失ったばかりの料理長メアリーも一緒にクリスマスを過ごすことになる。
孤独な彼らにはそれぞれが心を開かぬ理由があった。それでも、反発し合いながらも、彼らの関係は少しずつ変化してゆく――》(『THE HOLDOVERS』パンフレットより)
6月某日鑑賞。孤独な3人が「疑似家族」のように過ごしながら、失望を乗り越える術を互いに教え合うという、皮肉と優しさとユーモアに満ちた珠玉の人間ドラマ。(どこかクリント・イーストウッドの名作『グラントリノ』を想起する人生観あり)
観終わった後の、何とも言えぬ心地よさ(「勝手にコトノハ映画賞2024」暫定ベストワン決定!)……絶妙の語り口で矛盾だらけの人生を生きることの悲しさと可笑しさを等配分して、温かみのある極上の後味を残してくれた名匠アレクサンダー・ペインに感謝。
(心温かき皮肉屋ハナムがピュッとウイスキーを吐き出すラストシーン……台詞は無かったが、私には聞こえた。「そうさ、まだ生きていける」と)
映画評論家・町山智浩氏の話によると映画界には「海女映画」というジャンルがあるそうだ(知らなかった!)。その先がけはソフィア・ローレンが大スターとなるきっかけにもなった『島の女』(1957年、アメリカ)。続いて、浜美枝が海女役で登場する『007は二度死ぬ』(1966年、イギリス)、最近ではジェームズ・キャメロン監督の『アバター2』(2022年、アメリカ)もその一つに数えられるとのこと。で、そんな町山氏のお眼鏡にもかなって大ヒット中の最新「海女映画」が本作『密輸1970』。(舞台は70年代半ば、韓国の漁村クンチョン。海洋汚染の影響で失業の危機に瀕していた海女さんVSチンピラ風ギャングVS密輸王VS税関職員……“四つ巴”の金塊争奪戦。最後に勝利するのは?)
監督は『モガディッシュ 脱出までの14日間』のリュ・スンワン、主演は韓ドラファンなら誰もが一度ならずその演技と目力に魅了された経験を持つ(はずの)名優キム・ヘス。さらに《海を舞台に巨額の金塊を巡って繰り広げられる騙し合いの行方を実話に着想を得て描き、2023年・第44回青龍映画賞で最優秀作品賞など4冠に輝いたクライムアクション》と聞かされれば、私的に「観ずに死ねるか!」となるのは必然。即、公開初日(7月12日)新宿ピカデリーに飛び込んだ。(結果、もちろん大当たり!)
地上でも海の中でもアクションが凄いのは言わずもがなだが、一癖も二癖もあるような登場人物たちが織りなすコンゲームの圧倒的な面白さ!
加えて、70年代のサイケなファッションも楽しめるし、流れる音楽もノリノリ&ソウルフル(70年代の韓国のロックバンド「サヌリム」のアルバムとのこと)。そしてラストは、爽快なシスターフッド(女性同士の連帯)で締めくくる……というエンタメのお手本のような「海女映画」だった。(当然、超オススメ!だが、既に上映終了かも?)
0 件のコメント:
コメントを投稿