昨日(9日)は75回目の長崎「原爆の日」。哲学者の内田樹さんがこんなことを呟いていた。
《どうして日本政府は「核兵器禁止条約」に署名しないのか、いろいろ法制的・外交的な言い訳が語られていますが、一番にべもない理由は「機会が来たら核武装したい」と内心思っている人たちが政権の座にいるからでしょう。自分で自分の手を縛ることはないと思っている》
さて、本題。
新型コロナウイルス感染の流行下、見慣れた世界が一変する中、私の日常もコロナ以前とはかなり様変わり。今まで一度も観たことがなかった「韓国ドラマ」が、生活の一部になってしまった。
きっかけは世界的大ヒットとなった『愛の不時着』……(全16話。時間にすると約22時間。それを2カ月(5月~7月)の間に4回“通しで観た”わけだから、もうマニアと言うよりフリーク…否、“中毒”のレベルかも)
どんなドラマで、その何が凄いかと言うと…まずはタイトルに関わるこんなセリフから(第14話、リ・ジョンヒョクの心の呟き)
兄がいた
彼を亡くしつらい日々を送った そして心に決めた
誰も失わない人生を送ろうと 淡々とした人生を送ろうと
未来を夢見ぬ人生を―― 黙々と送ろうと
それ以来―― ぐっすり眠ることもなく 冗談も言わず
ピアノを弾くこともなかった そして誰も愛さなかった
ある日 僕の世界に不時着した―― 君に会うまでは
というわけで、幕開けは偶然の事故から…《韓国財閥の令嬢で自らも起業家として活躍中のユン・セリ(ソン・イェジン)が、ある日、パラグライダーで飛行中に突然の竜巻に巻き込まれたあげく、非武装地帯(DMZ)の北朝鮮側に落下。木の枝に引っ掛かっていたところを、北朝鮮の特殊部隊中隊長のリ・ジョンヒョク(ヒョンビン)が助けたことから始まる、笑いあり、涙あり、ハラハラドキドキもちろんあり!の波乱万丈・絶対極秘のラブストーリー》
なのだが、映画にしろTVにしろ、“基本、恋愛モノは観ない”自分が、何故ここまでハマってしまったのか……我ながら「どうしちゃったんだろ、オレ?」と、不思議に思うが、とにかく何度観ても飽きないし、面白いし、観ているだけで気分が良くなるのだから止められない。(正に、中毒!)。
で、さらに「観ているだけで気分が良くなる」のは何故か?
ネットの記事で「7回観た」という女性が「ジェンダー的安心感がある」と語っていたが、「なるほど、そういうことか」と思う。やはり二人の間に漂う空気感がとてもイイのだ。
旧いタイプの男と女(の恋愛)ではない「対等な男女の恋愛」……決して自分の考えを押し付けることなく、お互いを心から思いやり、(南北に引き裂かれる状況下)全身全霊、愛する存在を守ろうとする二人の姿そのものが、観る側の“心地よさ”を誘う強烈な磁力となって全編に行き渡り、ドラマの魅力を一層押し上げている気がする。(それ故、私たちの感性と理性もより解放された状態で、二人(の純愛)と向き合うことができ、その壮大なファンタジーに心置きなく酔いしれることができる…というわけだ)
その意味で『愛の不時着』は、「フェミニズムが盛り上がっている」と言われる韓国エンタメ界が目指す方向性がはっきり表されたドラマであり、そこに私たちが見慣れたステレオタイプな男女(の恋愛)など出てくる余地はない。だからこそ「心地よい」し、“基本、恋愛モノは観ない”はずの自分もどっぷりハマったのだと思う。
ということで、今日の〆は、前出の“リ・ジョンヒョクの呟き”と対になる、第5話でのユン・セリの印象的な台詞と、IUが歌う『愛の不時着』のOST『心を差し上げます(Give You My Heart / 마음을 드려요)』
https://www.youtube.com/watch?v=7PjmLRG0UyU
インドではこう言う
“間違って乗った電車が時には目的地に運ぶ”
私もそうだった
私の人生は―― 乗り間違いの連続
だから一度は途中で 全て投げ出したくて
どこにも行きたくなくて―― 飛び降りようとした
でも今の私を見て
とんでもない乗り間違えで、
なんと38度線を越えちゃった
でもね
思いどおりにいかなくても―― 将来を考えてみて
私は 私が去ったあとも―― あなたには幸せでいてほしい
どんな電車に乗っても―― 必ず目的地に着いてほしい
P.S.
その他オススメは、『愛の不時着』の挿入歌を歌った歌手「IU」と、映画『パラサイト』にも出ていた俳優イ・ソンギュンがダブル主演を務める『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』(ソウルの下町を舞台にした、社会派ドラマ。タイトルからして、とても地味に見えるが、出てくる町に、店に、部屋に、仕事場に、人の情けが沁み込んでいるような、実に奥の深い感動作……にしても、韓国の俳優は皆、素晴らしい!と唸りっぱなしの全16話)
そして、もう一つ。イ・ビョンホン主演の『ミスター・サンシャイン』(全24話)。舞台は20世紀初頭、李朝末期の漢城(現ソウル)。自国朝鮮の主権を守るために「日本軍」と戦う義兵たち(その中に、ヒロイン「コ・エシン」も)と、朝鮮に生まれながら身分的迫害により「奴婢」の両親を失い、幼くして国を逃れ、黒髪の米軍将校として母国に舞い戻った「ユジン・チョイ」(イ・ビョンホン)、そして、それぞれのアイデンティを賭けて戦う人々の物語。(言うならば、名もなき者たちの抗日戦争史。その中に、笑いあり、涙あり、LOVEあり……私的には「コ・エシン」役の女優キム・テリの魅力に圧倒&メロメロ。「いい役者は、顔のみならず、声がいい!」と改めて思った)
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