2019/03/20

仕事が終わって…再び「映画&エトセトラ」③




6日は中大理工学部・後楽園キャンパスで、とある対談の立会い(&新宿のロック居酒屋でウエちゃんと一杯)。
7日は『府中三億円事件を計画実行したのは私です。』を流し読み。(衝撃的なタイトルにつられて手に取ったが、なにこれ?のひと言。ただの下手くそな青春恋愛小説だった)
8日はTジョイでイーストウッドの『運び屋』を観て英気を養い、9日から16日まで丸々1週間、久しぶりの仕事漬け(テープ起こし2日、編集及びライティング5日)。近所に買い物に出る以外、メシの時間を除いてほとんどパソコンの前にいた。

さすがに疲れたが(仕事の方はまあまあの出来)、ようやく一息……というわけで、前回に続いて映画の話(少し短めにまとめて)。

『バジュランギおじさんと小さな迷子』(監督:カビール・カーン/製作国:インド、2015年/鑑賞日:2月某日、ユナイテッドシネマとしまえん)
インド人の中年男性(正直者の敬虔なヒンドゥー教徒)が、ちょっとしたアクシデントで迷子になったパキスタン人の少女を、親元に送り届けるため旅に出る姿(インドからパキスタンまで700キロの二人旅)を描いた“笑いあり涙あり”のヒューマンドラマ。

インドとパキスタンの複雑な対立の歴史を思えば、そんな風に都合よく事が運ぶはずはないと“分かっちゃいるけどやめられない”のが娯楽の王様・インド映画の面白さ&もの凄さ。その不退転のポジティブパワーに圧倒され、魅了され、“いつの間にやらハシゴ酒”気分。“気がつきゃ”、おじさんと可愛い迷子にへべれけ…という快作。

『デッドエンドの思い出』(監督:チェ・ヒョンヨン/製作国:韓国・日本、2018年/鑑賞日:216日、新宿武蔵野館)
遠距離恋愛中の婚約者を追って名古屋へやってきた韓国女性ユミ。だが彼の住むアパートには見知らぬ女性の姿……婚約者の裏切りに絶望し、あてもなく街を彷徨っていたユミは、ゲストハウスを兼ねた古民家カフェ「エンドポイント」に辿りつく。という展開。

で、失意のユミはそのカフェのオーナーや常連客たちとの交流を通じて、少しずつ自分を取り戻していく……最近お馴染みの“喪失と再生”の物語(日韓合作)だが、少し“辛め”の味付けを期待していた分、物足りなさ(甘ったるさ)が残り満足度はイマイチ。主演のチェ・スヨン(アイドルグループ「少女時代」のリードダンサー)が良かったなあ…と言う以外、特に感想はないが、束の間、名古屋観光気分も味わえるし、「ほっこり癒されたい」と言う人には、悪くない作品だとは思う。(上映終了後、舞台挨拶があり、本作で監督デビューした新鋭、チェ・ヒョンヨン監督登場。31歳という若さ……次回に期待したい)

『誰がための日々』(監督:ウォン・ジョン/製作国:香港、2016年/鑑賞日:218日、新宿K’s cinema
“介護うつ”の果てに母を亡くした青年が、精神病院から退院後、母と自分を残して家を出ていた父親と暮らすことに……という所から始まる社会派・香港映画。周囲の冷たい視線を浴びながらも懸命に生き抜こうとする青年の苦悩と、介護から逃げ出した自分を悔いて息子の人生に寄り添おうとする父の姿を描く。
監督は本作が長編第一作目となる新人監督・黄進(ウォン・ジョン)。(本作により、香港金像奨、台湾金馬奨で最優秀新人監督賞を受賞)

観終った後、ズシッと重い疲れとともに押し寄せてきたのは、「いい映画だったなあ」という満足感と「二人が,ちゃんと寄り添えてよかった」という安堵感……国とか世界とか地球とか、そんな大きな世界に「希望」はない、人の心の中にのみあるもの。
逃げながら懺悔し続ける人生ではなく、辛くても共に前に進むことを選んだ親子の決意に心からエールを送りたくなった。(「人生すべては外注できない」という父親の言葉も印象的。年末恒例「勝手にコトノハ映画賞」入選確実!)
で、このシリアス極まりない作品のメガホンをとったのが、まさか30歳の新人監督とは……本当に世界は広い。このクソみたいな世の中のあちこちに優れた才能と感性が息づいている。(それもまたひとつの希望)

で、映画話の後の“エトセトラ”……
先日(18日)ネットで、映画監督・想田和宏さんのこんな“つぶやき”に遭遇した。

「ホロコーストは捏造だ」というデマを飛ばすAと、Aに対して「デマをやめろ」とたしなめるBがいて、ABが激しく言い合いを始めたとする。すると必ず「どっちもどっちだな」と両方を非難するCが出てくる。この場合、Cは「中立」ではない。明らかにAに加担している。

つまり「報道は中立でなければならない」というのも、権力に加担しているという意味でC……改めてジョージ・オーウェルの言葉を思い起こした。
「ジャーナリズムとは報道されたくないことを報じることだ。それ以外のものは広報にすぎない」

ちなみに「ホロコーストは捏造だ」と悪辣なデマをとばし世界に恥を晒したのは“Yes!高須クリニック”でお馴染みの自称愛国者・高須克弥氏。
で、12日にコカイン使用の疑いで逮捕された「ピエール瀧」(いい俳優が次々に…)を、連日のように取り上げて騒いでいるテレビが、何故この件でダンマリを決め込んでいるかといえば、高須氏が大量の広告を発注してくれる“大スポンサー”だから(普通は、番組で取り上げる前に、ナチスを礼賛しホロコーストを否定するような人との契約は、広告倫理上それが分かった時点で打ち切るものだと思うけど)……さすが我が日本の堕メディア。金に縛られ、権力に操られ、どこまで堕ちていくのだろう。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿